『あと数日で点滴を終了します』

術後2週間くらいで、田部先生が言った。

私『生きていられますか?』

田部先生『点滴でお腹が空かないのかもしれません。

少しずつで良いので頑張りましょう』

私『点滴が終わるのは、心配です』

田部先生『ずっと点滴というわけにはいきませんから』

また困らせてしまった。


お腹が空かないわけではない。

時々、お腹は空いていた。

食事の時間になって、病院食を前にすると、食べたくなくなる。

どんな食事が出ているか、先生は知っているのだろうか。


このままではダメだ。

食べられないのに、点滴は終了。

生きていられるのか。

危機を感じた。

どうしよう、どうしよう。

しばらく、混乱した。


木田先生が来たので少し愚痴った。

私『田部先生、スパルタです』

木田先生『無理しないでくださいね。

少しずつで良いですよ。

藤井さんのペースで大丈夫です』

優しいので、ありがたかった。


落ち着いて、ちゃんと考えた。

何で食べたくないのか。


緊急手術前の痛みを思い出して、食べるのが怖い。

食べたものがお腹の中に広がらないか心配。

お腹の中で何か起きても、気が付いてもらえないかもしれないから不安。

毎日、ストーマの排出物を凝視されるのが嫌。


大丈夫だから。

心配ないから。

頭の片隅では理解している。


飲み物は何でも飲める。

だから、食事もできるだけ液体に近い状態まで噛めば、飲み込めるのではないか。

試してみることにした。


初めての1口は恐怖だったが、だんだんと飲み込めるようになった。

数日で、食事の2割くらいは摂れるようになった。