銀色の自動ドアが開き、手術室の中へ入った。
はじめての手術室に少し感激した。
ドラマで見たことある光景。
数日前に手術の説明をしてくれた、麻酔科の横山先生。
笑顔で迎えてくれた。
他に数名のスタッフがいたが、まだ執刀医である田部先生と木田先生の姿はなかった。
ベッドに横になった。
硬くて狭い。
緊張で体がガチガチだった。
名前と生年月日の確認。
手首のバーコードをスキャン。
ルートの確保。
自分の心臓の音が聞こえる。
だんだん怖くなった。
このまま死んだらどうしよう。
家族への感謝を頭の中で繰り返した。
全身麻酔。
口にマスクを押し当てられた。
息苦しい。
『眠くなるお薬が入ります』
苦しい。
死んじゃう。
手術前の記憶はここまでだ。
外科、田部先生による慢性虫垂炎切除術
産婦人科、木田先生による両側卵巣嚢腫摘出術
と子宮附属器癒着剥離術
『藤井さん、わかりますか?木田です。
藤井さん、手術終わりましたよ。
藤井さん、わかりますか?』
体をポンポンポンと触られた。
視界は悪いが、声が聞こえてきた。
気管挿管していたので、おそらくこのタイミングで抜管されたのだろう。
意識朦朧としていて、自覚はない。
『気持ち悪いです。
苦しいです。
吐きそうです』
辛くて辛くて、繰り返していた。
次に気が付いた時は病室のベッドだった。
無事だ。
遺書は必要なかった。
外は少し暗かった。
朝一で手術、もう夕方。
長く眠っていたのだろう。
痛みで起きた。
お腹が痛い。
激痛。
ナースコールを押した。