もう2年くらい経って、自分の中でも整理がついたのですが、学習塾に通っている生徒の中で、不治の病で通えなくなった男の子がいました。

 

教室までの長い階段を登ると、息があがってしまって、一度休憩しないと教室まで歩けない、授業時間も疲れてしまって1時間も持たない、そんな日々が続いていました。精密検査したところ、筋ジストロフィーという病気でした。

 

筋肉が徐々に働かなくてなっていき、最後は寝たきりになってしまいます。高校に入学したとしても、みんなと同じような高校生活を送ることはできないだろうということで、結局塾は辞めて、限られた時間、できることをやる、ということになりました。

 

私は、人生の先輩として、塾の先生として、母親の相談役として、何もできなかったわけです。最後に何を伝えたのかも覚えていません。

 

ただ、この経緯を通じて「選べるということは、なんて幸せなことなんだろう」と思うようになりました。勉強頑張ってもいいし、しなくてもいい、高校行っていいし、行かなくてもいい、働いてもいいし、働かなくてもいい。。。

 

勉強したくてもできないかもしれない、高校行きたくても行けないかもしれない、働きたくても働けないかもしれない、そんなこと考えたこともなかったので、選べることのありがたさ、幸せというものを本当に実感するようになりました。

以来、テクノロジーの進化に興味を持つようになりました。

 

AIでもビックデータでもロボットでも何でもいいから、筋肉が動かないくらい何とでもなる世の中になってほしい、間に合ってほしい、と願う今日この頃です。