6月11日の誕生花と花言葉は、貝母[ばいも](編笠百合)(威厳・人を喜ばせる)、アガパンサス(紫君子蘭[むらさきくんしらん])(誠実な愛,誠実な心)、ラベンダー(期待)、ヒゲナデシコ(器用・義侠・細やかな思い)、ユリ[リーガルリリー](威厳)等々があります。今回は、紅花[べニバナ]を取り上げます。花言葉は、「装い・化粧」です。

キク科ベニバナ属の植物です。茎の末の方から咲き始める花を摘み取る事から、雅称を末摘花(すえつむはな)とも呼ばれています。紅色染料や食用油の原料として栽培されます。原産地はエチオピアといわれ、エジプトでは紀元前2500年ころから栽培され始め、紀元前にインドに伝わり、ヨーロッパに普及したのは中世(16世紀)以降で、アメリカ大陸へはスペイン人がメキシコへと伝えられながら世界各地で栽培されてきました。
日本へはシルクロードを経由し、推古天皇の時代に僧「曇徴」が高麗から持ち帰り、紅や黄の染料を取るために栽培されました。古くは、和名を中国からの染料の意味で「呉藍(くれのあい)」と呼ばれ、のちに紅(くれない)と変化していったようです。
花を 摘んで発酵・乾燥させたものが、紅色の染料や着色料(食品添加物、化粧品の口紅)の材料として使用されています。また、漢方薬の原料である乾燥した紅花は、「こうか」と呼ばれ、血行促進作用がある生薬として日本薬局方に収録されています。
また、生薬をツボ等の部位に塗る紅灸(べにきゅう)という灸の一種として使われたり、葛根紅花湯、滋血潤腸湯、通導散等々の漢方方剤に利用されています。この生薬は、養命酒などにも含まれています。
紅花油(サフラワー油)は、紅花の種子を搾った油でコレステロールを取り除くリノール酸を含む良質の油として、サラダ油として用いられたり、マーガリンの原料になったりしています。
江戸時代には紅用として山形県が特産地であったことで山形県 の県花とされています。現在、日本での栽培は少なくなり染料としてよりも、主に生花 やドライ・フラワー用になっています。油料としては、主にアメリカからの輸入に頼っています。
エジプトのミイラの布は、ベニバナでも染められ、アメンヘテプ1世のミイラにはベニバナの花が添えられていたようです。古代ギリシアでは、ベニバナの種子をつぶして油をとり、菓子や便秘の薬に使っていたようです。奈良県生駒郡斑鳩町の藤ノ木古墳の有機質の分析の結果、紅花の花粉が発見され、課題となっています。 
文献では、『播磨国風土記(はりまのくにふどき)』揖保(いぼ)郡で登場し、『万葉集』や『古今集』等々にも記載があります。
『源氏物語』で、鼻の赤い常陸宮(ひたちのみや)の姫君の事を、紅花にしゃれて末摘花(すえつむはな)と名づけられた事はよく知られています。
松尾芭蕉は「眉掃(まゆは)きを俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花」と詠んでいます。