僕は音楽に興味がある方ではありませんし、特に、クラッシック、オーケストラ、などと聞くと、ちょっと構えてしまいます。
そんな僕ですが、65年の歴史を持つ大阪フィルハーモニー交響楽団への補助金削減の新聞記事を読み、ちょっと興味を持ちました。
報道でもよく目にするように、昨年12月に橋下氏が大阪市長に就任すると、特定の芸術団体への補助金削減案が浮上し、大阪フィルへの補助金は10%削減になりました。
橋下氏は府知事時代の2008年にも6,300万円あった楽団への補助金を翌年度に全廃した経緯もあったそうです。
このような経緯の中、大阪フィルは自立に向けて様々なファン拡大策を打ち出し、活動を始めたそうです。
演奏会前に聴衆の質問に答える時間を設けたり、吉本興業とのコラボ企画を打ち出したりしているそうです。
演奏会の30分前に、『プレトーク・サロン』と言う名称で、簡単な曲目間接を行い、その後、質疑応答コーナーを設けているそうです。
指揮者や有識者による曲目解説は多いが、楽団の事務方がらいじょうしゃの質問に答える取組はまれだそうです。
これは、一方的な解説ではなく、コミュニケーションをとって、クラッシックの敷居を下げるのが目的、だそうです。
また、地元のサッカーチームの試合で金管楽器演奏者がファンファーレを演奏するサービス実施したり、吉本興業とタイアップし、若手漫才師の音楽を題材にした出し物と、大阪フィル8人の演奏を披露したり、という取り込みも行ったそうです。
先に記載した補助金削減の話も、大阪市に対して、7,700万円の増収策を盛り込んだ経営計画などをまとめ、補助金継続をアピールし、平行して小口の寄付制度を新設したり、演奏会PRのためにゲリラライブなどの新施策を次々と実施し、数年以内に自立(補助金が無くても継続できる状態になる)するまでの投資として、助成金継続を大阪市が認めたそうです。
2011年度の大阪フィルの収入の内訳は、演奏収入が5億5,973万円、民間からの支援2億772万円、文化庁からの補助金1億110万円、大阪市からの補助金1億1,000万円、その他、4,887万円だったそうです。
さらに、大阪フィルの3ヵ年の経営計画では、増収策として、公演回数を現在の110回程度から130公演に増やす(1,600万円の増収効果)、客席数の多いホール活用で、入場者数を増やす(5,000万円の増収効果)、などを検討しているそうです。
さらに、基盤整備として、音楽監督や常任指揮者、コンサートマスターを現在の70名から80名に増員する、施策を実施するそうです。
社会貢献活動としても、インターンシップでプロを目指す学生を受け入れたり、また、リハーサルなどの公開で市民との接点を増やす、なども検討しているそうです。
当初は補助金削減、凍結、などの話ばかりで縮み志向になっていたそうですが、大阪市とのやりとりの中で、楽団の強みが何かを改めて考え、強みを活かした攻めの名栄に売って出る覚悟が出来た、という楽団理事の方のコメントを紹介しています。
地道な活動を進め増収を狙う一方、楽団としてもクオリティーアップし、市民に愛される楽団を目指して頑張っている様子が良く分かります。
応援したくなりますよね。
僕がこの記事を拝見して考えたのは、自社の強みというのは、自分達では当たり前に考えている事が多く、なかなか自覚しにくいという事。
でも、強みを自覚するという事は、当たり前ですが、非常に大切な事だと思います。
強みを自覚しないと、強みを魅力に感じたお客様の期待を裏切る事も起きてしまうかもしれません。
また、競合関係を考えたときにも、弱点を補強するより、強みを伸ばすほうが成果が出やすいと思います。
強みを自覚する事は、非常に重要な事ですが、それを評価する視点はお客様の視点です。
お客様からの厳しいご意見を積極的に伺ったり、また、お客様とのコミュニケーションを大事にしなければいけない理由も、このようなことも大きな理由の一つと思います。
きっと、大阪フィルの方も、営業的なことなど、全く慣れていなかったと思います。
強みを特定し、強みを訴求する方法に頭を絞り、地道な取り組みを継続する、そんな商売の基本を見たような気がしました。
〇 参考 日本経済新聞 2012年8月16日