ある物語
『ある物語』(仮)
~第一章~
4月。
天気は快晴。
心地よい気温と心地よい風。
桜が美しいはずだった。
「花が全然ついていないわ」サラは思った。
昨日の雨風にやられたのだろう。
花びらは悲しいほど落ち、それでも必死に残っているわずかな花びらたちには哀愁があった。
サラは黒が好きだった。
今日も黒い服に身をまとっていた。
そしてある場所に向かっていた。
そこに着いてドアをあける。
まっすぐに伸びた道の先には男の人が写った写真がたててある。
サラは躊躇することなく進み写真の前に立った。
「ジュナ。私はあなたを愛していました。愛してしまった…」そこまでの言葉を口にし、一礼した。
部屋を出て振り返り、「ごめんなさい」とサラは言った。
すぐに振り返り歩き始めた。
サラは静かに冷静だった。
しかし頭の中はとんでもなく働いていた。
すべてのことが同時に起きてるようだった。
オペラにピアノ、救急車のサイレン、目覚まし時計のアラーム、黒電話の鳴る音、誰かの叫び声、泣き声、英語にロシア語にフランス語の朗読…
とにかく統一感のない音と映像がサラの頭に流れていた。
下を向き早歩きになるサラは1度も止まることなくさっきの桜の木の下を目指した。
そこはまあまあ大きな開けた公園であった。
平日午前中からかあまり人はいなかった。
サラは桜を見つめていた。残っている花びらを数えようとしたが諦めた。
ふと視線に気付き見ると、ベンチに座っているスーツの男だ。
その男は異様な雰囲気があった。
なぜならマジシャンが被るような縦長なハットを被りそれは明らかにおしゃれの域のものではなく、なにか正装のような、衣装のようなものだったからだ。
その男はひたすらサラを見つめうっすら微笑んでいた。
サラはその男の隣に座って言った。
「あなたには私のことが私以上に分かるのね」
男は言った。「サラ。きみはとても魅力的だよ。しかしきみの願いが叶うのはいつになることやら」
サラは言った。「あなたは私に名前を言うべきよ。そして2人で暮らして一緒に朝を迎えて私が入れたコーヒーを飲むのよ。あなたはミルクや砂糖をいれる?」
男は言った。「私はアオ。私はブラックが好きなんだ。」
「ブラックって色で言う黒も好き?」
「私は好きだよ」
初対面の2人はなんでもない話をし、また会う約束をした。
サラが今日知った男のことは、名前はアオ、コーヒーはブラック、近くの病院に入院しているということだった。
あのハットはなぜ被っていたのかは聞かなかった。
今度会った時に聞こう。
他人とどこか違う空気を持つアオは自分に共通するものがあると、サラは思った。
「またあした」
2人は別れサラは家に帰った。
~第一章~
4月。
天気は快晴。
心地よい気温と心地よい風。
桜が美しいはずだった。
「花が全然ついていないわ」サラは思った。
昨日の雨風にやられたのだろう。
花びらは悲しいほど落ち、それでも必死に残っているわずかな花びらたちには哀愁があった。
サラは黒が好きだった。
今日も黒い服に身をまとっていた。
そしてある場所に向かっていた。
そこに着いてドアをあける。
まっすぐに伸びた道の先には男の人が写った写真がたててある。
サラは躊躇することなく進み写真の前に立った。
「ジュナ。私はあなたを愛していました。愛してしまった…」そこまでの言葉を口にし、一礼した。
部屋を出て振り返り、「ごめんなさい」とサラは言った。
すぐに振り返り歩き始めた。
サラは静かに冷静だった。
しかし頭の中はとんでもなく働いていた。
すべてのことが同時に起きてるようだった。
オペラにピアノ、救急車のサイレン、目覚まし時計のアラーム、黒電話の鳴る音、誰かの叫び声、泣き声、英語にロシア語にフランス語の朗読…
とにかく統一感のない音と映像がサラの頭に流れていた。
下を向き早歩きになるサラは1度も止まることなくさっきの桜の木の下を目指した。
そこはまあまあ大きな開けた公園であった。
平日午前中からかあまり人はいなかった。
サラは桜を見つめていた。残っている花びらを数えようとしたが諦めた。
ふと視線に気付き見ると、ベンチに座っているスーツの男だ。
その男は異様な雰囲気があった。
なぜならマジシャンが被るような縦長なハットを被りそれは明らかにおしゃれの域のものではなく、なにか正装のような、衣装のようなものだったからだ。
その男はひたすらサラを見つめうっすら微笑んでいた。
サラはその男の隣に座って言った。
「あなたには私のことが私以上に分かるのね」
男は言った。「サラ。きみはとても魅力的だよ。しかしきみの願いが叶うのはいつになることやら」
サラは言った。「あなたは私に名前を言うべきよ。そして2人で暮らして一緒に朝を迎えて私が入れたコーヒーを飲むのよ。あなたはミルクや砂糖をいれる?」
男は言った。「私はアオ。私はブラックが好きなんだ。」
「ブラックって色で言う黒も好き?」
「私は好きだよ」
初対面の2人はなんでもない話をし、また会う約束をした。
サラが今日知った男のことは、名前はアオ、コーヒーはブラック、近くの病院に入院しているということだった。
あのハットはなぜ被っていたのかは聞かなかった。
今度会った時に聞こう。
他人とどこか違う空気を持つアオは自分に共通するものがあると、サラは思った。
「またあした」
2人は別れサラは家に帰った。
親愛なるあなたへ
親愛なるあなたへ。
今思うと、あなたは幻だったのではないかと思います。
あるいは砂漠を放浪する私の前に現れたオアシスのようだと。
あなたに初めて出会った時思いました。
きみは かっこいい
優しい目をしていましたね。
本当に本当に別れというものはいつ、何時、訪れるか予期できないものです。
しかし思ってしまう。
神様は不公平だと。
何度、何度その言葉を飲み込んだことか。
私が哀しみに暮れ、嘆き苦しむ姿をそんなにも見たいのか。
私はそれに応じるべきなのか。
大粒の涙を止めどなく流し、嗚咽し、この腕を切ってしまえばいいのか。
トイレに崩れ落ちた私はそんなことを考えていた。
腕を切り、トイレの水と血が一体化しようと流れる。
マーブルになる。
のだろうな。
もう自分を傷つけることはしたくない。
してはいけない。
どんなに私に不公平で理不尽なことが起こったとしても。
全部受け止めよう。
なんで?
どうして?
なんて愚かな問いかけはしません。
あなたが言わないのなら私も守ります。
あなたの秘密は私の秘密です。
親愛なるあなたへ。
あなたはいない。
もう二度と会うこともない。
受け止めよう。
私はただただ祈ります。
あなたの目の前に幸せな世界が広がるように。
ありがとうございました。
さようなら。
今思うと、あなたは幻だったのではないかと思います。
あるいは砂漠を放浪する私の前に現れたオアシスのようだと。
あなたに初めて出会った時思いました。
きみは かっこいい
優しい目をしていましたね。
本当に本当に別れというものはいつ、何時、訪れるか予期できないものです。
しかし思ってしまう。
神様は不公平だと。
何度、何度その言葉を飲み込んだことか。
私が哀しみに暮れ、嘆き苦しむ姿をそんなにも見たいのか。
私はそれに応じるべきなのか。
大粒の涙を止めどなく流し、嗚咽し、この腕を切ってしまえばいいのか。
トイレに崩れ落ちた私はそんなことを考えていた。
腕を切り、トイレの水と血が一体化しようと流れる。
マーブルになる。
のだろうな。
もう自分を傷つけることはしたくない。
してはいけない。
どんなに私に不公平で理不尽なことが起こったとしても。
全部受け止めよう。
なんで?
どうして?
なんて愚かな問いかけはしません。
あなたが言わないのなら私も守ります。
あなたの秘密は私の秘密です。
親愛なるあなたへ。
あなたはいない。
もう二度と会うこともない。
受け止めよう。
私はただただ祈ります。
あなたの目の前に幸せな世界が広がるように。
ありがとうございました。
さようなら。