星空と音楽 | 読書セラピー(幸せのページ)

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木に吹いた風が緑色になるように
花に吹いた風が芳香を運ぶように
風に言葉を託して届けます。

「人間の欲望のなかに潜む
攻撃性を制御できるのは
芸術を含めた文化力である」
  
    (フロイト)

長野県にある川上村は
この言葉を彷彿させます。

―なぜですか?

ここはレタス
生産量日本一で
農家の収入が
増えれば増えるほど
欲望も肥大化し
精神的悪化が
懸念されました。

そこで、村長が
芸術や福祉重視へ
政策転換した結果
素晴らしい環境が
整ったからです。

―どんな?

まず、公共施設の殆どが
地元のカラマツ産。

なかでも目立つのが
川上中学校。

校長室の扉には
「悩みごと相談
(兼)癒し所」の表示
廊下の先には
ドーム天井の音楽室
正面にはドイツの教会で
使っていたという
パイプオルガンがあり
美しい音色を奏でます。

また、川上村文化センターの
エントランスには
1907年製の
ニューヨーク・スタインウェイが置かれ
響板には英国・スペインなど
12ヵ国の国王の名前と
紋章が描かれ
高級家具さながらの
グランドピアノです。

村営の24時間CATVによる
リアルタイムでの情報共有
24時間無人図書館や
介護デイサービスの運用
ピアノ・オルガンの
開放などを通して
お互いに響き
育て合う“響育”も
根づいています。

―確かに「もっと・もっと」
 という欠乏欲求は
 自分優先で攻撃的。
 分断や競争のもとかも
 しれません。

はい。
川上村は野辺山
宇宙電波観測所から
10Km北に行った
場所にあります。

―星空がきれいに
 見えるところですね。

ええ。

私たちも全人類の
ふるさとである星空から
万人に久しく
降り注ぐ星明りの下
人々と響き合える音楽と
出合うことができたら
やさしくなれるでしょう。
     
      (佐治晴夫)

出典:『SALUS  2024年4月号』(東急、p28)