改革(4) | 読書セラピー(幸せのページ)

読書セラピー(幸せのページ)

木に吹いた風が緑色になるように
花に吹いた風が芳香を運ぶように
風に言葉を託して届けます。

経営者として
人を使いこなし
事業を拡大してきた清。

松戸株式会社の
社長(市長)となった以上
社員(=職員)の適性に
あう仕事を用意し
給料を改革するのは
自然の流れでした。

―適材適所と能力主義ですね。

はい。

まず、市役所の大卒初任給を
国家公務員より
大幅に引き上げました。

―市長が報酬を返上する分
 彼らの給料を上げたわけですね。

ええ。

次に人事制度の改革。
これも初日のあいさつで
職員の働きに応じ
給料の上げ下げを決めると
言った通りです。

―でも、役人の世界でしょ。
 簡単にできますか?

もちろん、簡単ではありません。
懲戒処分ないしは
分限処分などの
はっきりした根拠がなければ
地方公務員法によって
勝手に改定できないことに
なっているからです。

案の定、人事課長が
強固に抵抗しました。

―じゃあ、どうしたの?

二人が膝を突き合わせ
検討した結果
薬局マツモトキヨシで
採用している
自己評定に基づき
職員を査定することに。

職員は以下の3つの
設問に答えます。

1.現在の仕事に満足しているか
2.自分の長所や能力が
  活かされているか
3.現在の職務を代わりたいか。
  代わるとすれば
  やりたい仕事は何か
  具体的に表明する。

自己評価の項目は
協調性・創造性
言語表現力など14あり
それぞれ、通知表のように
5段階で評価。

―部下からすれば
 自分の意見を
 聞いてもらえるので
 有難いかも。

 でも、自己判定だと
 甘くならないですか?

はい。
そこで、本人だけでなく
直属の上司にも
同じ評定をしてもらい
2つを突き合わせ
客観的に検討します。

―本人と上司の評価に
 差があったら?

どちらかに問題が
あると見ます。

あまりに差がある場合は
管理職に問題があると
みなされるので
管理職の逆評価にも。

新人事制度は概ね
好評を持って終了。

現状のまま
その職場にいたい
職員8割を残したことで
新市長は話せるという
評価につながったのです。

組合サイドも
「職員が自己について
発言できるのはいいことだ」
と概ね受け入れの
姿勢を示しました。

―そうですよね。
 部下は職場や上司に
 不満があっても
 なかなか言いづらいですから。

この人事制度が
忖度なし
コンプライアンス
自分軸が
大合唱される今より
55年も前であることに
驚きを隠せません。

つづく

出典:『マツモトキヨシ伝 すぐやる課をつくった男』(樹林ゆう子、小学館、pp.101-104)