結婚相手の決め手(1) | 読書セラピー(幸せのページ)

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木に吹いた風が緑色になるように
花に吹いた風が芳香を運ぶように
風に言葉を託して届けます。

松本清(原著に基づき敬称略)が
全国チェーン
「マツモトキヨシ」の前身である
「松本薬舗」を開業したのは
23歳のとき。

ライバル店のいない場所を
選んだのは的確だったものの
まだ店も小さく資金が足りません。

「アイデアはやりくりであり
才覚である」とは
清語録にある金言のひとつ。

お金がないなら
その分知恵を絞り
埋め合わせするというのが
長年の貧乏暮らしで
身に付けた清の生活術でした。

―確かに、無い・無いって
 言っていても、空からお金が
 降ってくるわけじゃ
 ないですもんね。

はい。
彼はまず元本の
かからない方法で
繁盛店を演出しました。

―どんな?

たとえば、読書好きな
お客さんには本の話を
映画好きなお客さんには
映画の話をもちかけ
長く滞在してもらえるように。

長居してもらえば
傍目にはいつもお店に
お客さんがいて
「混雑している繁盛店」に
見えるからです。

―なるほど。
 これなら、お金がかからない。

ただ、客足は好調でも
資金不足ゆえ
品物が豊富に揃えられず
ショーケースが貧弱に
見える悩みがありました。

―これはどうやって
 解決したの?

まず、商品が
詰められていた
業務用の箱を
仕入れの後も
捨てずにとっておきます。

さらに、お客さんがクスリを
買っていくとき
空き箱を譲ってくれるよう
頼んで回収。

そうして集めた空き箱を
ガラスケースにずらりと
景気よく陳列するわけ。

―ああ・・・商品が
 豊富にあるように
  ショーアップするのね。

はい。

『ないふりをしてはいけない。
あるふりをしろ。
そうすれば人は集まる』(松本清語録)

―でも、空き箱じゃ
 実際、中身は無いですよね。

いいえ。
無いところから有るようにする。
この前向きな生き方で
清は伴侶を得ました。

つづく

出典:『マツモトキヨシ伝 すぐやる課をつくった男』(樹林ゆう子、小学館、pp.40-42)