誠実 | 読書セラピー(幸せのページ)

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木に吹いた風が緑色になるように
花に吹いた風が芳香を運ぶように
風に言葉を託して届けます。

先日、行った
美術館の一文が
心に響きました。

・・・・・・

明治13年に
生まれた
熊谷守一は
他の真似をせず
時流に流されず
独自の絵を
探求し続けました。

いい絵を描いて
褒められたい
有名になりたい
偉くなりたい
という世俗的な
欲望はまったく
なかったようです。

守一の絵に対する
誠実さは生涯
変わりません。

(はじめ)
描き上げた絵は
ほとんど売れず
友人らの援助で
生きながらえました。

1945年に
太平洋戦争が
終わるまで
生活は困窮し
5人の子どものうち
3人まで失います。

絵のことだけ
考えれる状態では
ありませんでした。

戦後は、良き理解者や
コレクターに恵まれ
暮らしも安定し
絵もコンスタントに
仕上がるようになります。

1960年代
以降の油絵は
描く対象をはっきりと
した線で表し
色面は筆目を
揃えた平塗りに。

70歳を過ぎてようやく
独自の画風に
辿りつきました。

守一は、いのちを
大切にしていたので
生きとし生けるもの
何気ない
身のまわりのものに
眼差しがいったのでしょう。

文化勲章の内示を
断りましたが
それはもともと勲章に
象徴されるような
権威主義を嫌って
いたからです。

なるべく
目立たないように
自分の思うまま
描きたい時だけ描いて
そっと生きた人でした。

絵を見て
いただきたいのは
もちろんですが
絵を通して
守一のものの見方や
生き方を感じて
いただけたらと
思います。

出典:『豊島区立 熊谷守一美術館』(熊谷榧)