足もとの宇宙 | 読書セラピー(幸せのページ)

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木に吹いた風が緑色になるように
花に吹いた風が芳香を運ぶように
風に言葉を託して届けます。

徳富蘆花は
『みみずのたわごと』の中で
移ろいゆく、つゆ草について
語っています。

・・・・・

つゆ草は小さな小さな
碧色の蝶のただ、かりそめに
草にとまったかと思われる。

寿命も短くて
本当に露の間である。

しかも、金粉を浮かべた
花ずいの黄色に触発して
惜しげもなく咲き出た
花の透き通るような
鮮やかな純碧色は
比ぶべきものが
ないかと思うまでに美しい。

つゆ草を花と思うのは
誤りである。

花ではない
あれは、色に出た
露の精である。

姿もろく命色
美しいその面影は
人の地に見る刹那の天の
消息でなければならぬ。

出典:『森へ行く日』(高田宏、マインドカルチャーセンター、pp.130-131)