49日(1) | 読書セラピー(幸せのページ)

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木に吹いた風が緑色になるように
花に吹いた風が芳香を運ぶように
風に言葉を託して届けます。

「亡くなってから
49日くらいで
天にあがるのは
本当だと思う」
と語る、吉本ばななさん。

―どうして?

吉本さんが
仮眠しているとき
お母さんの夢を
見たからです。

―どんな夢?

彼女が寝ている部屋の
すぐ外の廊下を
お母さんが歩いている夢。

―亡くなったお母さんが?

はい。

お母さんは生前より
少しだけ若くなっていて
すたすた廊下を
歩いています。

そして娘を見て
そっけなく
「こういうところに
住んでいたのね」と
言ったそう。

そのとき
(この物言いは
お母さんに違いない)
と確信した吉本さん。

お母さんは
「上も見てくるわ」
と言って階段を
上っていきます。

階段の上は
真っ白に光っていて
お母さんは
その光の中に
消えていきました。

―光の中に・・・・。

吉本さんは泣きながら
「お母さん、行かないで!」
と叫びますが
お母さんは大きな声で
「またね!」とー。

つづく

出典:『おとなになるってどんなこと?』(吉本ばなな、筑摩書房、pp.79-81)