幼いころ見た絵本が
心を癒してくれるのはなぜだろう?
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私が、力がなくて無力なとき(いつもそうなのだろうけれど)、
人の心の温かさに本当に涙ぐみたくなる。
この全く勇ましくも雄々しくもない
私のもって生まれた仕事は、絵を描くことなのだ。
たくましい、人をふるいたたせるような油絵ではなく、
ささやかな絵本の絵描きなのである。
そのやさしい絵本を見て子どもが、
大きくなっても忘れずに
心のどこかに留めておいてくれて、
何か人生の悲しいときや、絶望的になったときに、
その絵本のやさしい世界をちょっとでも思い出して
心を和ませてくれたらと思う。
それが私のいろんな方々へのお礼であり、
生きがいだと思っている。
出典:『ラブレター』(いわさきちひろ、講談社、pp.196-197)
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絵本のなかに込められた愛の種が
知らないうちに発芽し、大人になったとき、
心のふるさとになってくれるのかもしれません。