お疲れ様です。
お疲れのときに、見たら力が抜けるかもしれないものを見つけました。
NHKのドラマ『大富豪同心 3』のエンディング。
画面向かって左から尾上松也、中村隼人、松本幸四郎、って並んで踊ってるところ。
同じ振り付けなのだけど、踊り方が、現代風ダンスのしら〜っとした松也、品よく日舞ふうの隼人、いかつい歌舞伎舞踊の幸四郎。
幸四郎、踊りがそうとう力入ってる上に、表情が完全に振り切れている。
見てて噴き出しました…。
さてさて。
『阿修羅城の瞳』。
Huluで見かけたので懐かしくて、つい再生してしまった。
配信で見なくても、実はDVDを持っている。
公開の頃にスクリーンで見たわけではない。たぶんCS放送で見て、気に入って、中古で見つけてDVDを買ったのだろう。
昔のことすぎて、よく覚えてない。
DVDを買ったときの記憶は曖昧だが、内容は我ながら呆れるほどよく憶えていた。
何度も見ていた模様。
主演は宮沢りえ、市川染五郎(七代目。いまは十代目 松本幸四郎)。
江戸。人に紛れて鬼が暮らす時代。
鬼狩りだった過去をもつ病葉出雲(市川染五郎)は、いまは鶴屋南北の弟子で、中村座の看板役者だ。
ある夜、舟で川を進んでいた出雲は、このごろ江戸の夜を騒がせる盗賊のひとりが、追手をまいて橋脚に忍んでいるのを見かける。
盗賊の顔を覆う頭巾が外れると、美しい女性(宮沢りえ)。
慌てる彼女の髪から抜け落ちたかんざしを、出雲は舟からキャッチする。
それから、不思議な縁で出雲と、つばき(宮沢りえ)は幾度も出会い、互いに惹かれていく。
けれど、つばきには彼女自身にも分からない、ただならぬ能力がある様子。
出雲は、つばきの能力を狙う魔物たちとの闘いに巻き込まれていく、といったお話。
魔界転生みたいな、かなり奇想天外なストーリー。
芝居のリアルさよりも、それぞれの役者の持ち味でグイグイ引っ張る映画だ。
鶴屋南北が小日向文世。
役者や裏方に大倉孝二、皆川猿時、螢雪次朗。螢雪次朗、すごーく良い。
出雲の元同僚で野心のある邪空に渡部篤郎。
鬼の世界の最強神、「阿修羅」の復活を狙う美惨(びざん)に樋口可南子。
歌舞伎役者が歌舞伎役者を演じるので、お得感がすごい。
天竺徳兵衛とか四谷怪談といった芝居の一幕が出てきたり、着替えたり化粧を直したり。
つばきがどうなるんだろう、とストーリーを追いながら、歌舞伎の裏側的なところも見られるのは楽しい。
染五郎の芝居は、画面からはみ出るくらいにスケールが大きい。
高麗屋らしい、笑いの間合いを持ちつつ、この人の面白さは、父上とも違う、嘘か誠か分からない奇妙な明るさ、伝統芸能のイメージと違うライトさ。
言葉の選び方が難しいが、良い意味での軽薄さ、が出せることだと思う。
病葉出雲は、5年前に自分の中の化け物を見てしまった男だ。
それで鬱々とするのではなく、芝居という虚構を生業にして、さまざまなことを笑いにまぎらせて生きている。
そういう出雲と、染五郎の不可思議な魅力が重なって、どきっとするほど色っぽい瞬間が随所に現れる。
宮沢りえのつばきは、とにかく全編が、宮沢りえ。
噛み合うような、そうでないような、隙だらけか、計算なのか。これが結局、華というやつなのか。
細かく考えたら楽しめない。
これぐらいの我が道をいく感じがないと、染五郎の出雲とバランスがとれないのは間違いない。
殺陣というのかアクションのときの音楽がやや単調だが、たぶん、ワタシが何度も見すぎているせいだ。
樋口可南子が圧巻の美しさ。金色の口紅がこんなに似合う人を見たことがない。
渡部篤郎の悪役感が、期待どおり。年齢を重ねて、『ルパンの娘』のパパみたいな明るい役も増えたけど、本領はこういう、やばい役だよね、って思う。
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