こういうコメントをもらいました。
| いつもペタありがとうございます。そのポピュリズムにのって扇動される大衆がいるのも問題と思います。他の国がこうして政治を混乱させている間に何か事を起こそうとしているようで仕方がありません。 |
ポピュリズムは、どこの国でも利用されることがあります。
世界で最もこれに乗りやすい国の一つは、アメリカだと思っています。
ベトナム戦争に介入するきっかけを作ったのは、当時の北ベトナムの領海にプエブロ号という船を侵入させて、これが撃沈された事件でした。この船は実は、スパイ船だったことが後に明らかになっていますが、沈められたのを機に、北爆(北ベトナムの無差別爆撃)開始に至ったのは「同胞が攻撃された」の一点で米国世論を煽ったからでした。ベトナム北爆やキューバ危機(これもアメリカ側からの挑発でした)など、歴代のアメリカ大統領の中でも最も好戦的な一人だったJ.F.ケネディが大統領の時代でした。
イラクやアフガニスタンの侵略も「テロとの戦い」とか「大量破壊兵器疑惑」など、根拠もなく人の国土を戦場にしてしまって政権を叩き潰すのを正義だと思い込んでいます。戦争を始めた時のブッシュの煽動も、アメリカ人たちは、呆れるほど純朴に支持していました。
あとになって厭戦気分とか反戦気分とか、果ては、「イラクに大量破壊兵器は見つからなかった」などブッシュ政権の責任論まで出てきましたけれど、20世紀後半以来のアメリカは、いつも、こうして、他の国に対して「何か事を起こそうとして」きたばかりでなく、やっちゃってきました。第二次世界大戦以降の世界では、最も多くの他国民を殺害しているのがアメリカ政府のCIAと軍隊でしょう。
さて、今の日本の政治的混乱に乗じて、「他の国」が「何か事を起こそうとしている」という議論は、とくに、保守政界が好んで使う煽動の一つだと思います。
日本の保守政界は、大日本帝国時代を総括するどころか美化するのを常としている勢力で、この帝国主義時代のイデオロギーが大和魂であり、八紘一宇、五族共和でした。つまり、近隣諸国を大和魂で染め抜いて、人々の意識と生活全般を日本化=皇民化させることで、優越的な国家として繁栄しようと願っていました。
その帝国主義日本の軍隊が常に仕掛けてきたのが謀略事件でした。「敵が先に手を出した」とウソにウソを積み重ねて大陸侵略を続けたのでした。戦後のアメリカでも同じことですが、他国に対して戦争を仕掛ける時は、いつも、敵が攻めてきた、と、ウソをつくことです。それで大衆は煽動されるのですから。
誰かが何かをしかけてくる、という脅しは、実は、自分たちから仕掛けていくための厚かましいウソであることがほとんどです。ですから、「何か事を起こそうとしている」と、恐怖心を煽り立てようとする者こそ、最も警戒すべき相手だと思っています。
だからこそ、国同士の挑発はおこなわない、挑発には乗らない、という外交努力が必要なのだと思っています。
管直人の「許しがたい暴挙」という対ロシア発言などは、いとも簡単に挑発に乗った軽率のそしりを免れないでしょう。
ロシアに対しては、ソ連時代から65年間も平和条約が締結できずにいる二国間関係の原因についてスジを通す議論を提起するだけでも、ロシアを黙らせることもできれば、交渉のテーブルにつかせることもできるはずですが、歴代自民党も今の民主党も「千島放棄条項」を含んだサンフランシスコ体制を前提にしているために、この条約に参加していないにもかかわらず、ソ連=ロシアも居座っているのです。
スターリン当時のソ連は、アメリカ、イギリスとのヤルタ会談の密約によって日本の千島を手に入れることとなり、アメリカ、イギリスは、サンフランシスコ条約という形で、日本に千島を放棄させることとなりました。日本とソ連とはなんの条約も締結していないにもかかわらず、ソ連が実効支配することとなってしまったわけです。
だからこそ、ソ連にしても、日本との正式な平和条約が結べず、領土問題を含めた協議を拒否できなかったわけです。
第二次大戦の戦勝国が領土不拡大を原則にしていたことに反してスターリンは領土を広げました。
その戦後の総括に基づいて、ポーランドでは、一時、ソ連が不当支配した領土の返還に至りました。日本にしても、このスジ論を通すことで、ポーランドと同じ結果を勝ち取るのは可能なはずです。戦後処理で、領土問題が解決していないのは日ロ間だけ、という事態に至っています。
とくに、ソ連になる前のロシア帝国と大日本帝国とは、千島・樺太交換条約によって平和的に領土協定を結んでいて、千島列島は日本が戦争によって略奪したものではないことは明白なのですから、ポーランド以上に日本側に説得力があるはずです。
では、日本が破棄を申し立てることができずにいるサンフランシスコ体制とは何か。それこそ、日米安保条約がスタートした体制そのものです。アメリカに異議を唱えることなど、歴代日本政府には、とてもできることなどではなかったのでした。
ソ連=ロシアは、ヤルタ密約で「もらった」ものだと思いこみ、
アメリカ、イギリスは、その密約を黙ったまま「千島放棄」をサンフランシスコ条約に盛り込ませ、
日本はその条項が喉につかえたままでソ連=ロシアと交渉しようとしてきたために「千島以外の北方領土の返還を」などと日本国民自身を、ごまかしてきた。 そんな構図になるわけです。
歴代自民党政権や右翼の「返せ!北方領土」などという“愛国心”が、千島を放棄した自らの売国行為を隠して自国の国民をごまかすインチキな“愛国心”だからこそ、お笑い草だと思うわけです。
日本が「千島放棄条項は、平和的に確定されていた領土さえも放棄することであって、無効だ」「アメリカやイギリスがソ連=ロシアと結んだ密約はスジが通らない」と主張すれば、アメリカ、イギリスの立場がなくなります。ロシアから突っ込まれたら、アメリカもイギリスも「あの密約は不当なものでした」と言わざるを得ないのですから。(アメリカ、イギリスが過ちを認めてしまうと、ロシアは外交上の貸しを作ったことになり、他のどんな問題で「アメリカ、イギリスは約束を破る国」というカードを切られるか、戦々恐々とせざるを得ないことになります。)
日本はアメリカに対してものが言えない。それを見越しているからこそ、ロシアは、このまま100年間実効支配してしまえ、一世紀を越えれば自国の領土として確定できるのだから、と、踏ん張って居座っているわけです。あと35年、グズグズしておけば、ロシア領土として世界中から承認されるのだ、と。そして、アメリカも自分の落ち度を認めたくないから「できれば、このままうやむやに・・・」と、しらばっくれているわけです。
(イギリスが香港領有を99年間としたのは、領土侵略ではなく領土を「借りただけ」という見せかけによって、世界で最も紳士的な大英帝国は領土の略奪などという蛮行は働いていません、と、中国や他の帝国主義列強諸国をごまかすためでした。それは、19世紀の「国際法」以来、一世紀を超えて実効支配した土地は自国の領土として承認される、という慣行を、期限ギリギリまで最大限利用したえげつない手法でした。)
(戦後処理では、イギリスは、このヤルタ協定以外にも、ソ連やユダヤ人との間で、二枚舌とも三枚舌とも言われる密約を結び、それが、今のイスラエル問題につながっています。イギリスは、多くの人々がヨーロッパ各国から当時のソ連に逃れていたユダヤ人の解放の地として今のイスラエルを提供すると約束し、その一方で、パレスチナ人民には何の心配もないとウソをついていたのですから。あの映画『アラビアのロレンス』はその一端を物語るものでした。皮肉なことに、世界でも最も共産主義的な国家としてスタートしたイスラエルは最も反動的な米国右翼と親密になり、王様を掲げる保守的な人民だったはずのパレスチナ人は左翼的な運動の象徴の一つとなりました。社会主義のナセル大統領だったエジプトが極反動のアメリカの下僕としてのムバラク大統領のエジプトになってしまったように、中東はいくつもの寝返りにまみれています。)
(それにしても、アメリカにしてもイギリスにしても、世界に大きな影響力を持った国々のいい加減な約束のツケで、どれだけ多くの国々や人民が翻弄されてきたことか、「あいつら、許せねェ」という思いを新たにする次第です。)
さて、管直人がロシアに対して「許しがたい暴挙」と言っちゃったことが軽率だった理由、窺い知れるのではないでしょうか。ソ連=ロシアにしてみれば、「もらったものじゃん」と言いたいのですから。日本政府の怒りの矛先はまず、ふざけた約束をしたふざけた帝国主義のアメリカ、イギリスに向けられるべきだったわけです。
だから、ソ連時代はまだ、マシだったのかもしれません。お互いに平和条約の仲ではないのだと認め、領土問題が残っていると認めていたのですから。今のロシア政権は、そのややこしい二国関係をうやむやにして、「あと35年」にしがみつこうとしているように見えてなりません。
サンフランシスコ条約の「千島放棄条項」を破棄すること、すなわち、アメリカ、イギリスの過ちを認めさせること、
そのうえで、ロシアとは領土不拡大の原則に立ち戻り、千島・樺太交換条約に戻れと要求すること、
それによって日ロ間の平和条約を締結すること、 これが、日本の取るべき立場だと思っています。
「北方領土」などという言葉を無批判に使う人々は、この歴代自民党政権のごまかしに騙されているのではないでしょうか。サンフランシスコ条約を乗り越えて、「返せ!千島列島」と言うのがスジでしょう。
日ロ間の交渉では、「ポーランドとは(領土不拡大の原則に立って)いい仲になることができて、良かったですね。」くらいのジャブから始められるようにならないと、日本はコケにされ通すことになるでしょう。
案の定、外相の前原とロシア外相との会見は、一方的に言いたい放題に言われっぱなしで尻尾を巻いたような状態です。
あ、ところで、「他の国」が日本に対して何事かをしかけてくると思い込んでいる人々には、誰が、誰のために、何のために、どんな利害に基づいて、何をしかけてくるのか、聞いてみたいと思います。
例えば、戦後日本で「二・一ゼネスト(=ゼネラル・ストライキ)」の呼びかけなど民主運動が高揚した頃、三鷹事件、松川事件、下山(国鉄総裁)轢死事件という三大事件が、そうした民主勢力をひるませる狙いで「共産主義者のしわざ」と大々的に報じられたのち、裁判闘争を通じて、いずれもアメリカCIAの謀略だったことがバレたように、アメリカという国は、「何事か」をしかけることで有名です。
1970年代には、民主的な選挙で選ばれた社会主義政権を、軍のクーデターで転覆させ、その後、世界でも稀にみる強硬な弾圧政権を作ったチリで暗躍したのが米国CIAだったことも、有名です。
このアメリカ以上に謀略にまみれた「しわざ」を演じる国なんて、あるのでしょうか。