タイ、ギリシャで起こっている事態が日本経済にとって少なからぬ影響がある、という話は、さておいて、
◆社民政党◆ ギリシャの財政危機を救済するためにEUが突き付けた条件を呑むかどうかで、パパンドレウ首相は土壇場になって「国民投票で・・・」と、頬かむりを決め込み、ヨーロッパ経済のみならず資本主義経済大国に激震が走っています。
このパパンドレウという人は、親子三代にわたる首相経験という家系で、本人もいくつもの大学を出た相当のインテリのようです。彼の政党は、日本の社民党と同じような社会民主主義政党で、社会主義インターナショナルの議長も務めているようです。
共産主義者と社会主義者または社会民主主義者との違いは、前者が政治革命をめざす立場なのに対して、社会なんとか勢力は革命には及び腰で体制内の「改良」「修正」によって、資本主義社会を維持しながら貧富の格差を埋めることができると考える立場です。つまり、保守勢力の良心とか善意にすがることで一般大衆への温情も獲得できると夢見る人々です。
日本では、民主党が保守から右派社民勢力までの野合集団となっていますが、この構成員の一部が仙谷由人などの旧社会党右派とか管直人などの社民連(社会市民連合)、あるいはもっと自民党寄りだった旧民社党(ゼンセン同盟=繊維関係の労使協調派など「連合」右派勢力)など、「社会なんとか」という具合に、労働者の味方のふりをした名前を持っていた諸君でした。(あのナチスも国家社会主義労働者統一党という労働者の味方のふりをした政党でした。)
最近の言葉でもっと簡単に言えば「中道左派」的な勢力です。
ただ、民主党全体としては、そうした勢力を抱え込みながらも全体としては「中道右派」と呼ぶべきで、「右派」的である分、保守政党のくくりに含めるべき政党です。
さて、パパンドレウの率いるギリシャの社会主義政党ですが、内実が日本の社民党や民主党の旧「社会」なんとかグループと大差がないと考えると、このギリシャの騒動は、対岸の火事ではなく、他山の石とすべき問題が浮上してきます。
◆共通する無責任政権◆ 話は変わりますが、タイの大洪水は、その終息・復興が何週間どころか何カ月かかるか分からない情勢となってきました。水門の開け閉めをめぐって、北部の住民と南部の住民の利害の対立も深まっています。特に、インラック首相の政権が有効な打開策を打ち出せずにいるばかりでなく、その言動が二転三転することで国民の不信感が高まっている、というのが最近のニュースの大きな特徴です。
ギリシャのパパンドレウ政権もまた、言うことが二転三転してフランスとドイツが「話が違うじゃないか」と、キレかかっています。パパンドレウにしてみれば、EUに突き付けられた責任の取り方が国内では政権崩壊につながりかねないという党利党略から、判断を国民に任せる、と、責任逃れに走る以外に自らの政治生命を保てないと考えたとしか言いようがないでしょう。
自らの政権延命が判断の基準になるから、こういう「くるくる変わる政権」になってしまうわけです。リスクを負わない、責任を回避する、このことが最優先の価値基準になるために、言うこと、やることが変わってしまうのです。
振り返ってみれば、ギリシャ国債の乱発そのものがアメリカの投資コンサルタントの口車に乗って為替相場の変動を頼りにした詐欺的な手法だったように、初めから、国内・国外全体を欺こうとしたものだったのですから、無責任ぶりの根は深いと思います。
さて、言うこととやることが違うとか、言うことがくるくる変わるとか、やっぱり、思い浮かぶのは、明白です。
◆「安全運転」なのか?◆ 今の総理大臣の野田は、記者会見に消極的であったり、「安全運転」とも言われるように、言質(げんち)を取られまいと、発言の機会と内容を慎重に選んでいるように言われています。
鳩山にしても管にしても、あるいはその他の民主党閣僚や党幹部には、失言・暴言が多すぎて、わずか2年余りのうちに辞職に追い込まれた人物があまりに多すぎたことが念頭にあるのかもしれません。
しかし、それは、それぞれの人物の資質であるよりは、民主党という政党の体質に依るものだと言えます。まともな党内論議を行なうこともなく、つまり、政党としての意思統一を図るシステムがないままに、内閣の幹部、政党の幹部それぞれに、個人的な発言や、それぞれの政治グループ内だけの合意だけで発言してしまうからです。
こういう組織なのですから、トップの野田にとっては、揚げ足を取られたり言質を取られることだけは、避けなければならないわけです。
しかし、だからこその問題が大きくなってきました。
野田は、内閣、党のそれぞれの幹部に発言させることで自らの狙い通りの代弁をさせ、自らは責任を免れよう、という手法なのですから。
特に、この点で露払い、あるいは、先鋒を務めているのが政調会長の前原です。TPPについて「途中下車もできる」かのような空論を飛ばして国民を欺こうとしたり、「武器輸出(禁止)三原則の見直し」、「PKO派遣での自衛隊の武器使用の基準緩和」など、自民党でさえ言えなかった平和国家の原則のタガをはずそうという言動に出ています。このほかにも、外相の玄葉には(普天間の移転に関する)鳩山発言は誤りだったと言わせるなど、同じ民主党の過去を塗りつぶしていく態度も積み重ねています。
つまり、「国民の生活が第一」を掲げて政権を取ったはずの民主党の今の野田執行部は、こうして、過去の民主党を変質させながら、名実ともに保守党であることを鮮明にしようとしているわけです。
なぜなら、保守政界にとっては日本の財界を守ることが使命なのですから。
それによって、どういう政策を実行に移すかといえば、大衆課税の強化、社会保障などの国民福祉の抑制によって、財界への資金供給、つまり、全法人企業のうちのわずか25%の黒字企業のための税の減免・優遇なのです。やろうとしていることは、いまのギリシャのようなものです。
◆むしろ「危険運転」◆ 政権基盤の弱い者が権力の座に就いた時に共通している特徴は、一方で耳触りのいい言動を振りまきながら、他方で強権的な体制作りに走ることです。
その最も典型的な例となったのがドイツのナチスであり、日本の軍国主義体制でした。
ナチスは、政権を取ってまず行なったのが国会放火事件でした。これを共産党の仕業だとして弾圧に乗り出し、国内の批判勢力の一掃に利用しました。その一方で国内のレジャーとスポーツ振興に力を入れ、娯楽事業を膨らませることで政治的無関心という空気を蔓延させようと努めたのでした。その間にヒットラー・ユーゲントという青年組織を拡大させ国家主義、ゲルマン至上主義の宣伝を徹底させたわけです。ポーランドへの侵略を皮切りに、ヨーロッパ全土を戦禍に巻き込む頃には熱狂的な独裁政党へと急成長していました。最早、その時点では、国内には批判勢力は壊滅状態となっていました。
日本の軍国主義もまた、治安維持法とその拡大解釈によって、最初は共産主義者、社会主義者などの取り締まりを口実とし、最後にはキリスト教徒も仏教徒も「天皇崇拝」でないからと、弾圧するに至りました。今の公明党の母体となっている創価学会も、日蓮系の仏教が国家宗教をめざす立場であったことから国家神道とは並び立たないものとして弾圧を受け、初代の牧口常三郎が獄死しています。
その間に、中国への侵略戦争を軍部の暴走だとして内閣は見て見ぬふり、軍部追認を積み重ね、次第に政権そのものを軍部に乗っ取られることとなりました。戦争を始めてしまってから、国内では「大東亜共栄圏」だの「五族協和」だの、あとから取ってつけたように戦争の理由を振りまいてナチス時代のドイツ同様の国内世論の熱狂状態を演出しました。
軍部の暴走は、何よりも「天皇陛下の軍隊」であったことが理由になっています。内閣にとっても国会にとっても、軍隊が口実とした「天皇陛下のご意思」には、逆らえなかったのですから。
こういう過去を振り返るにつけ、今の民主党が、ファシズムと意外に近い立場にいることに気付きます。
ファシストらに見られるように、基盤の弱い政権、つまり、次の選挙で勝てるかどうか自信がなければないほど、その政策は強硬さを増していきます。何としても今のうちに自らの政権にとって有利な立場を作り上げておきたいと、謀略の挙に出ることさえ、いとわないのです。
今、民主党が国民に提供できる「耳触りのいい話」は、何もありません。「マニュフェスト」で振りまいた幻想はボロボロとはげ落ちています。そんな中で、天災からの復興というのは、民主党政権にとっては消費税増税をはじめとした大衆課税強化の絶好の口実となりました。さまざまな国民負担を強めるのにも利用できる口実です。これを「やむをえない」と思わせる空気を広めるために最大限に利用しようとしているのが実態です。
その一方で、儲かる会社にもっと儲かってもらい(=黒字企業への優遇)、TPP、武器輸出などによって、日本の財界を潤わせることで、農業破壊などの多くの犠牲を巻き込んででも、経済が活性化できると思い込み、デフレからの脱却で生活も潤うはずだと思い込んでいます。好況が戻ってくれば、税金が増えても国民の不満は収まるはずであり、それまでの延命さえできれば、民主党政権は安定するはずだという青写真(未来予想図)なわけです。
そのうえで、政権の安泰のために、選挙制度改革の名のもとに小選挙区制度の比重の拡大を狙っていることが、実は大きな問題です。自民よりも強硬な路線を取ることで自民との相似性を強調し、自民との二人三脚による「二大政党制」を現出することを狙っているわけですから。これに対して自民が異論を唱えるわけもありません。両党にとっては、この選挙制度「改革」こそが何よりも利害が一致するホンネです。これこそが最大の謀略です。
初めて政権を握った民主党が、ダメもとで、次々と危険な方針に打って出ること、これがギリシャやタイの政権との類似性でもあります。対岸の火事と見るわけにはいかないだろうと思う所以です。
実際、国会では明言できなかった方針をG20では国際公約にしてしまう野田演説(=消費税率の段階的拡大)など、乱暴な手法に打って出ているのですから。国民にはゴマカシを財界と資本主義列国にはゴマスリを、それが今の内閣なのですから。
(そういえば、国連での鳩山の思いつき公約「CO2の20%削減」は、民主党のどこに残っているのでしょうか。これもまた、過去の民主党の「初期化」のもと、「Delete」されてしまったようです。)