https://rokushin.blog.ss-blog.jp/2024-05-08

(Nature Communications, 2024/3/27)

〈本文から引用〉

正常な老化は成長の過程を鏡に映したように進行する、という考え方があります。


子供は次第に成長して大人になりますが、

その成長過程を逆転させたようにして、徐々に脳の働きは低下し、老化は進行してゆくというのです。


つまり、正常な老化は子供に返ることだ、という理論です。


ここで思春期に見られる、正常な脳の成長の最後の部位が、老化に伴って、最も最初に変性し易いことが指摘されていて、


その部位に認められる異常が、

成長期においては統合失調症に、

老化に伴ってはアルツハイマー型認知症に、

関連が深いことが指摘されています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4267352/


この脳の特定部位の変性は、

遺伝的な影響を受けることが指摘されていますが、

その一方で基礎疾患や環境要因の関与も指摘されています。


今回の研究では、

イギリスの大規模な医療データである、UKバイオバンクの臨床データを活用して、

認知症の発症に影響する可能性のある、飲酒や高血圧など161の環境因子と、

認知症の発症に関連すると思われる、脳の脆弱な部位の変性との関連を比較検証しています。


その結果糖尿病と、

環境汚染の指標である住環境の二酸化窒素濃度、

飲酒頻度の3項目が、

脳の脆弱部位の変性と関連していることが認められました。


何故この3項目が認知症のリスクと関連しているのか、明確ではない面がありますが、

通常の認知症リスクとは別の形で、今回の検証が行われている点は非常に興味深く、

通常の解析と比較して別の結果が得られた理由を含めて、

今後のデータの蓄積に期待をしたいと思います。



石原Dr. は平日ほぼ毎日⬆のブログで医学論文を紹介して下さいます。