正常な老化は成長の過程を鏡に映したように進行する、という考え方があります。
子供は次第に成長して大人になりますが、
その成長過程を逆転させたようにして、徐々に脳の働きは低下し、老化は進行してゆくというのです。
つまり、正常な老化は子供に返ることだ、という理論です。
ここで思春期に見られる、正常な脳の成長の最後の部位が、老化に伴って、最も最初に変性し易いことが指摘されていて、
その部位に認められる異常が、
成長期においては統合失調症に、
老化に伴ってはアルツハイマー型認知症に、
関連が深いことが指摘されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4267352/
この脳の特定部位の変性は、
遺伝的な影響を受けることが指摘されていますが、
その一方で基礎疾患や環境要因の関与も指摘されています。
今回の研究では、
イギリスの大規模な医療データである、UKバイオバンクの臨床データを活用して、
認知症の発症に影響する可能性のある、飲酒や高血圧など161の環境因子と、
認知症の発症に関連すると思われる、脳の脆弱な部位の変性との関連を比較検証しています。
その結果糖尿病と、
環境汚染の指標である住環境の二酸化窒素濃度、
飲酒頻度の3項目が、
脳の脆弱部位の変性と関連していることが認められました。
何故この3項目が認知症のリスクと関連しているのか、明確ではない面がありますが、
通常の認知症リスクとは別の形で、今回の検証が行われている点は非常に興味深く、
通常の解析と比較して別の結果が得られた理由を含めて、
今後のデータの蓄積に期待をしたいと思います。