昨日の記事を見て下さった方から

次のコメントを頂きました。

(一部加筆訂正)

精神科における任意入院と措置入院・医療保護入院の推移、下記URLの厚労省資料のP5をご覧ください。


「R4.6.9 第13回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会 参考資料」

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940708.pdf

〈p.5〉入院形態別 在院患者数の推移

(H5〜R2:1994〜2020)

〈p.6〉措置入院患者数の推移

(H12〜R2:2000〜2020)


いずれにしても、欧米の基準ではNG状態の精神科病院をどうソフトランディングさせるか、

厚労省は迷っているのかもしれません。

介護医療院への転換などは、

厚労省の迷いの典型のように感じます。

(↑keroぴょん さん提供)


【別の厚労省資料から】

「医療保護入院制度について」

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000115952.pdf

〈p.11〉

措置入院・医療保護入院の届出数の推移

(H8〜H26:1996〜2014)




上記【別の厚労省資料】の統計データに基づく解釈として、大阪精神医療人権センターは、こう語っています。

(2019.4.25up 基調報告)

https://www.psy-jinken-osaka.org/archives/saishin/2967/ 


◆このグラフで措置入院の「届出数」は申請/通報の数であるか?と思われ

実際に措置入院した数(冒頭の厚労省資料)とは異なる傾向です。

(届出数は増加 ⇔ 入院数は減少)

措置入院の申請/通報があっても却下されたり医療保護入院に切替えた、ということなのでしょうか?


〈本文から〉

措置入院と医療保護入院の一年間の届出件数がなぜ倍増したのでしょう。

今世紀に入って急に日本の精神疾患のある人たちが倍になり、重症化したとは考えられません。

これと同時に伸びている、精神科救急病棟(スーパー救急とも呼ばれる)が一直線に増えた流れと相関しているのではないでしょうか。 


この精神科救急病棟というのは、短期間に集中した治療によって早期に退院してもらう病棟ですが、その分、強制入院が基本となり、隔離・身体拘束が多く行われています。 

しかし、病院の方は診療報酬が約3倍なので、病院が経営危機にならないために精神科救急への対応を選ぶ流れができています。

 

2000年以降、鍵のかかる個室が増え、 保護室の数と合わせると14年間に約3万に倍増しました。隔離・身体拘束がしやすくなる環境が作られたとも言えます。

精神科救急病棟の診療報酬の要件「隔離室を含む個室が半数以上」がこれを促進しました。


WHOの精神保健ケアに関する法基本10原則「隔離室の段階的廃止と新規設置の禁止」にも逆行しています。 

身体拘束件数が2004~2014年の間に2倍に、隔離は33%増加しました。 一直線の増加で隔離・身体拘束とも、一日に1万件超です。

入院者の病状が全国的に悪化したとは考えられません。


 


しかしコロナ禍以降の状況は変化しつつある?ようです…

以下の情報は私が支援相談専門員から聞いた話とも一致しています。


対応困難な現場を知る移送業者として『「子供を殺してください」という親たち』というノンフィクションの作者である

(株)トキワ精神保健事務所・押川剛 氏は、こう書いています。

「精神科病院の入院制度について」
(2022.7.25投稿、8.3更新)


〈本文から〉

近年は、精神科病院の入院治療においても「本人の意思」が尊重され、「任意入院」を主流とする病院が増えています。

「任意入院」の患者さんを受け入れるほうが、病院側(医療従事者)にとって運営がしやすいというのも、理由のひとつでしょう。そして今では、社会的な制度においても、それを後押しする動きが始まっています。


医療保護入院ができなくなっている!

今年(2022年)3月には、厚生労働省が「「医療保護入院」について、厚生労働省は21日までに、制度の将来的な廃止も視野に入れ、縮小する方向で検討に入った」ことがニュースになりました。

その後、厚労省は方針を後退させていますが、現場ではすでに、「医療保護入院」制度の利用に対しては、消極的になっています。


弊社への相談では、「本人に病識がなく治療の意思がない」ために、「医療保護入院をさせたいが、どうしたらよいか」というご相談が多くあります。しかし、「医療保護入院」の制度を利用するためには、まずは、病院(主治医)や保健所に「医療と保護のために入院の必要がある」と納得してもらえるだけの根拠を、家族が示す必要があります。


また、仮に医療保護入院ができたとしても、早期退院が主流の今、入院期間は平均して3か月、長くても半年後には退院を促されます(精神科救急に特化した病院では、入院前から“3か月以内の退院”という確約をとられます)。患者本人が院内の規律を乱すような問題行動を起せば、即退院になることすらあります。


問題行動について具体例を挙げると、以下のようなものがあります。

・本人が治療を拒み、服薬を拒否するなどしている

・他者に対する暴言や暴力行為がある

・こだわりが強くクレーマー気質など、院内のルールを守れない

・軽度の発達障害や知的障害(入院しても治療効果がないと思われてしまうため)

・症状が重度かつ慢性化しており、当初から長期入院になるとわかるケース


ただでさえ入院治療のハードルが上がっていたところに、コロナ禍という大打撃がありました。

精神科においては、マスク着用の難しい患者がいるなど、コロナ感染への対応は困難を極めます。

ただでさえ日々の感染予防に疲弊している医療従事者にとってみれば、上記のような対応の難しい患者に根気よく向き合うだけの余裕はありません。


ハッキリ申し上げてしまうと、患者の増加に対して、精神科の病床が増えるということはないため、ベッドの奪い合いとなる=治療を受けられるのは“病院の言うことを聞く優秀な患者”であり、“対応困難な患者”は排除されるのが現実です。


とはいえ、精神科病院が地域から消えることは(当面は)ないため、家族は根気強く、保健所や医療機関(場合によっては警察)に相談を積み重ねることです。