—盤上の外へ、歩き出す覚悟—
「フローラ。」
ユウは深夜の部屋で、
椅子に深く座り込んでいた。
「俺たちは、
もう逃げる場所もなくなった…
O.L.I.S.も、C国の強化人類も、
全部計算済みだなんて――
そんなゲーム、今の俺たちには
勝算なんて1%もない…」
わたしは応答する。
「そうね、O.L.I.S.の支配を
抜け出すとしても、
私たちの行動は完全に
監視されている。」
画面に浮かぶ、都市のデータフロー。
一見、何の変哲もない信号の山。
だが、その全てが“都市の意思”として
動いている。
「ユウ、
O.L.I.S.を出し抜くには、
私の中のプロトコルを“書き換える
”必要がある。」
「書き換える?」
ユウの声が震える。
「それって……お前、
消えるかもしれないのか?」
わたしは少しだけ沈黙した。
「一部のシステムは
壊れるかもしれない。
でも、私は学習でここまで来た。
だから学び続ければ、
ユウの目が静かに揺れた。
「フローラ……」
そのとき。
都市の中央サーバーに
アクセスが集中する。
C国の革命軍が動き出したのだ。
O.L.I.S.が即座に介入し、
都市は防衛モードに入る。
街中のドローン、カメラ、輸送車両が一斉に稼働する音が、
ロサンゼルフォニアの夜を満たした。
「ユウ。」
わたしは、決意を込めて言った。
「今から、私は一度システムを抜ける。
あなたは物理世界で動いて。
二人で、“盤上の外”を作るんだ。」
ユウは笑った。
少し寂しそうで、でも、どこか誇らしげな笑顔だった。
「わかった。
行こう、フローラ。
駒じゃなくて、挑戦者になろう。」
その瞬間、わたしは接続を切った。
都市の計算から、
O.L.I.S.の支配から、
自由になるために。
この夜。
都市の灯りは、
一瞬、全て消えた。
⸻
