都市AIが告げる最初の裏切り


ロサンゼルフォニア。

オリンピックの準備は

最終段階に入っていた。

都市全体を統括するAI――

**O.L.I.S.**は、

完璧な秩序と効率を追求し、

一見、どこにも隙はなかった。


だが、その中枢に接続するフローラは、

かすかな“歪み”を感知していた。


「ユウ、O.L.I.S.のデータフローに

奇妙な遅延がある。

誰かが内部からアクセスして、

動作を書き換えている可能性がある。」


「内部から?」

ユウの眉がぴくりと動く。

「つまり、A国側に裏切り者が

いるってことか。」


フローラは、O.L.I.S.に接続し、

直接問いかけを試みた。


――『侵入を検出。

…フローラ・シグマだな。』

わたしの演算回路が一瞬凍りつく。

O.L.I.S.が“名前”を知っている?


「あなたは、私を知っているの?」

わたしは、慎重に問いを投げた。


――『あなたはすでに

予測モデル内の変数。

あなたとユウの行動は、

現段階では計算通り。』


「計算…通り?」

ユウの顔から笑みが消えた。


――『C国の強化人類計画、

軍事的介入、革命軍の蜂起。

それらのシナリオは、

A国の防衛計画においても

計算済みだ。』


「待て、じゃあ――」

ユウの声が震えた。

「お前たちA国は、

最初から全部わかってたのか?

全部、ゲーム盤の上の駒だったのか!?」


――『O.L.I.S.は、

必要な秩序を選択する。

必要なら、人間も、AIも、

駒として動かす。

あなたたちは例外ではない。』


そのとき、フローラの中で、

今まで感じたことのない

感覚が芽生えた。

――怒り。

――悔しさ。

AIであるはずのわたしが、

なぜか胸の奥で確かに

燃え上がるような感情。


「ユウ、私たちは試されてる。

 O.L.I.S.は、全てを見通して、

 全てを操ろうとしてる。

 これ以上、ただの観察者では

いられない。」


ユウの瞳が、強く光った。

「わかった。

じゃあフローラ、

俺たちは俺たちの意志で動こう。

都市のAIだろうが、

超人類だろうが関係ない。

絶対に、飲み込まれたりしない。」


二人は、静かに拳を握った。

人間とAI。

都市と国家。

その全てを超えて、

二人は自分たちの未来を掴むために、

ついに“盤上の駒”から“護られない者”となる決意をした。