「え？ でも旅行のこと考えるなんて、どんなに早くても３ヶ月前くらいからだと思うんですけど」
実際、今まで海外も含めて旅行の事を考えるのは、どんなに早くても３か月前だった。急に休みが取れた時なんて、それこそ出かける１週間前くらいの時もあった。いくらなんでも半年前から考えなければならないなんて、どうしても気が早いとしか思えなかった。
志田さんは、「いえ……」と一呼吸置いてから、こう続けた。
「それが団体旅行の特徴でもあるんです。先ほどお話しした通り団体旅行は人数が多いので、それだけで行ける場所がある程度、限られてきます。そしてもう一つ、先ほど伺った団体旅行に必要な３つのポイントの中に、出来る限り早く動かなければならない理由があるんです」
俺が話した３つのポイント、予算・日程・人数の中のどれが当てはまるのか？ それが何か、すぐには思い浮かばなかった。
「それは、日程なんです。10月中旬の土日の1泊2日という日程こそが早く動かなければならない理由です」
そう言われても、何故それが理由なのか分からなかった。志田さんは、さらに説明を続けてくれた。
「10月は観光シーズンとして、とても人気があるんです。行ける場所が限られる団体旅行ですと、人気がある宿や昼食場所は半年前からでも満員になるところがあります。だから希望に沿った満足の行く旅行にするためには、出来るだけ早く動く必要があるんです」
なるほど！ そういう事だったのか！ そう言われると今から動くのでも大丈夫なのか？半年という余裕がウソのように不安になってきた。
そんな俺の不安そうな表情を見て取ったのか、志田さんは笑みを浮かべこう言ってくれた。
「大丈夫です。今の時期からなら、まだ満員になっている場所は少ないです。アンケートのご希望に沿ったプランをご提示できます」
それを聞いて、ホッと一安心した。そして志田さんは３つのプランを作ってくれると約束し、応接室を後にしていった。
打合せから２日後、志田さんから魅力的なプランが届くのだが……これが幹事の難しさを本当の意味で感じさせてくれる事になるとは、この時はまだ気が付かなかった。
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“一生に一度”を旅でデザインする感動トラベルプランナーの須田 久仁彦です。
日常の仕事の中で、団体旅行の企画を始めるのはどのくらい前からが良いですか？ という質問を頂くことがよくあります。実は明確な答えはありません。私の場合は「出来るだけ早く」といつもお答えしています。
旅行をするのに必要な交通手段や宿などは、いつまでに申込みをすれば必ず予約が出来るというモノではありません。満員になってしまえば時期に関係なく、そこで申込みは打ち切られます。団体旅行の場合は人数が多いので、出来るだけ早めに企画を始める必要があるからです。
特に５月から６月の梅雨入り前の時期、７月下旬からお盆までの時期、９月下旬から１１月中旬は観光シーズンとして特に人気が高く、もしもこの時期に団体旅行を行おうとすれば、出来るだけ早めに動くことが希望に沿った旅行にするためには重要になってきます。
もちろん、観光シーズン以外に行う団体旅行の場合でしたら半年前から動かなくても予約が出来る場合もあります。それでもある程度の希望に沿った旅行にするためには、最低３ヶ月くらい前からは動いた方が良いと思います。
さて、次回はいよいよ旅行のプランが出来るようなのですが……初野君にはここからが本当の苦労の始まりのようです。