とても思い出深い曲である。
大学在学の頃から、卒業してドイツに留学するまでの間の
数年間、K音楽大学の大大先輩である、N谷さんの関係で、
新宿コマ劇場でのミュージカルのエキストラにちょくちょく呼んでいただいていた。
(注:N谷さんは、スタジオプレーヤーとして一斉風靡した方。
中でもサザエさんのオープニングのフルートは、
国民誰もが知るN谷さんの音である。
喉頭ガンにより10年以上前に亡くなられた)
まだまだ駆け出しのペーペーだった私に、N谷さんは、
アンサンブルの仕方や、仕事場でのあり方、プレーヤーとして必要なこと、
ほんとに何から何まで、一つ一つ丁寧に、分かりやすく教えてくれた。
ある夜、本番の打ち上げのあとに、オーボエのMさんと、私とで
N谷さんのお宅にお邪魔し、夜明けまでいろんなCDを聞かせてもらった。
それまで、音楽を”競争の糧”にしか思ってなかった私は、
その夜、ドボルザークのチェロコンチェルトの中でのフルートのソロの部分を
いろんな人の演奏で比較しながら、”いい音楽、演奏とはどういうものなのか?”
”音楽の作り方”、”音楽の聴き方”など、3人で熱く語ったのだった。
あの夜は、私の中で、私の「音楽の人生のスタート地点」となった。
あの夜から、”もっともっといい音楽がしたい!”という欲求が生まれた。
今でも、この曲を聞くと、当時を思い出し、どうしても涙が止まらなくなる。
最後まで生きる喜びを語り、前を向いて、一生懸命、精一杯生きることの
素晴らしさを見せてくださったN谷さんの姿を、私は、ずっと一生忘れずに
生きてゆきたいと思う。
今でも私の中に、N谷さんは生きている。
