わたしは、東京で9年間過ごした。
とくに渋谷は、2つめの故郷ともいえるほど愛着のある街になった。
街の雑踏の中に身をおくだけで、なぜか気持ちが落ち着いた..
専門学校を卒業してすぐ、わたしは上京した。
この頃の夢は、レコーディング・エンジニアだった。
とにかく音楽関係のクリエイティブな仕事がしたかった。
学生時代は、大阪を中心に関西のライブハウスやコンサートホールなど、いたるところで音響やレコーディングのバイトをした。
関西の主な音響会社は、2年でほとんど回り尽くした。
そのうちの幾つかの会社からは、『うちで働かないか』とスカウトされたのを覚えている。
でも、私のやりたいポップスやロックの仕事は、関西にはほとんどなかったので、気持ちはすでに東京に飛んでいた。
ある日、学校の掲示板で東京のレコーディング会社の求人を見つけた。私はすぐさま応募し、冬休みを利用して、その会社でバイトをした。
その経験をたよりに、学校を卒業すると上京し、その会社に居座った。
『ウチに来い』とも何とも言われていなかったこの会社で、しぶとくバイトをさせてもらい、強引にみんなと仲良くなれた。
気がつくと正社員になっていた。
東京には、なんのコネも無かった私だったが、自慢の粘り強さで【夢の片道キップ】を手にいれた。
つづく...