※CPは難波のさや姉×秋葉のあんにん
(特別リクエスト!)

※でもなぜかゆいはん視点…笑



「絶対そうやんなぁ。」

「やんなぁ。」


「絶対怪しいよなぁ。」

「やんなぁ。」


私の後に続いて、エセ関西弁で相槌を打つのは相方の川栄李奈。

そんでもって、私は横山由依。


休み時間。

私たちは今現在、教卓を二人で陣取り、遠くに離れた席で座る彩ちゃんを凝視している。


「ほら、またにやけた。」

「あ、見て見て横さん、そのあとまたチラ見してる。」

「ほんまや、やっぱり…できる。」

「やんなぁ。」


「ゆいはんりっちゃんおはよーーう!!」


「わっ!みるきー!」

「ちょ、みるきーしーっ!」


「2人ともなにしてるん?」


隣のクラスからのこのこ現れたみるきーは、私と川栄がスパイの如く監視をしている現場に何の遠慮もなく割り込んでくる。


「いま、彩ちゃん監視中やねん。」

「そーやそーや、監視中やねん。」

「川栄、エセ関西弁禁止。」

「なんでやねん。」

べチッ!

「いったぁ!」


川栄の頭に平手打ちを一発。


「なぁ、なんで監視してるん?彩ちゃんなんか悪いことでもしてんの?もしかして、ストーカー?私の?こわぁー!」

「みるきーちょっと黙っとって。」


私はみるきーの頭をグイと掴んで、教卓の下に追いやる。


「なぁなぁ、なんで彩ちゃんなんか監視してんの?彩ちゃんなんて休み時間中寝てるか携帯いじってるかやん。私の方が監視のしがいあるんちゃうん?」

「あほ、その携帯が大問題やねん。」

「どーゆーこと?」


いつの間にかみるきーも私らと同じ体勢になりながら、彩ちゃんを凝視していた。


「川栄、調査結果。」

「はっ!」

川栄は敬礼のポーズをした後、胸ポケットにしまう学生手帳を取り出した。

そして、ミミズの乗ったような字の走り書きを読み上げる。


「山本彩、18歳。3年B組の学級委員で、バスケ部部長。現在、山本彩はクラスのマドンナ入山杏奈と、あつ、い?あい?」

「熱愛中、な。」

「あ、そうそう。入山杏奈と熱愛中。」

「えぇ!?彩ちゃんとあんにんが?」

みるきーは目を丸くする。

「だってあんにんって、みるるんのこと好きちゃうの?」

「それはカモフラージュやったってわけですよ。」

「ほら横さん!またにやけてる!」


川栄が指差した先には、教室のいっちゃん後ろの窓側で携帯をいじりながら、もう片方の手でにやけた口角を必死に隠す彩ちゃん。

そんでもって、斜め前に座る美少女あんにんの背中に目配せなんかしちゃって。


「ゆ、ゆ、許せへんっ…!」


燃えたぎるような炎を背中にまといながら、幸せオーラ全開の彩ちゃんを睨みつける。


あんのナルシストが、1人だけ浮かれ気分になってるなんておもんないやん!

絶対、絶対、尻尾掴んでやんねん!!




放課後。

バスケ部の活動が終わって、更衣室での着替えを済ませる。


「ほら彩ちゃーん、行くでー!」

「あーごめんごめん、」


更衣室の前で川栄と一緒に彩ちゃんを待って、催促する。

手早に着替えを済ませた彩ちゃんは、ボサボサの髪を手ぐしで整えながら更衣室から出て来た。


「ほな、いこかー」

「せやせやーいくでー!」

私の後ろを子分のようについて来る川栄。


「あっ、ちょ、ごめんやけど…」


彩ちゃんは少し気まずそうな声でそう言い、私らを呼び止める。


私と川栄はその場で立ち止まり、振り返る。


「今日、ちょっと用事あってな、一緒に帰れへんねん。ごめんな。」


「…あ、そーなん?」

「そっかー、もしかしてこれ?」

川栄はニヤニヤしながら小指を立てる。


「…、あほ、そんなんちゃうわ。」


彩ちゃんは真っ赤に染めた顔をプイと逸らし、「んじゃまた明日な」って身を翻して行ってしまった。


そんな彩ちゃんの後ろ姿を眺めながら、川栄と顔を見合わせる。


「川栄、」

「横さん、」


「調査再開やな!」
「調査再開ですな!」


二ヤーッとして、こっそり彩ちゃんの後をついていく。


どうやら昇降口の前で待ち合わせらしい。

部活後ってこともあって煩わしかったのか、ネクタイを外して首元がやたらと爽やかな彩ちゃんは、腕時計を気にしている様子。


昇降口なんてバレバレやんとも思ったけど、この時間に下校する生徒なんてほとんどが部活帰りの生徒やし、部活帰りの生徒はほぼ皆部室棟の方から帰るから、案外ここは穴場ってわけやな。


しばらく川栄と物陰に隠れながら彩ちゃんを監視していると、ようやく待ち人は現れた。


「横さん横さん横さん!!本当にやってきましたよ!マドンナ!」

「えっ!どこやどこ!!」


クラスのマドンナことあんにんは、昇降口から出てきて、彩ちゃんの元に駆け寄る。

お上品に第一ボタンまでしっかりしめて、学校指定のリボン付けてんのなんてうちの学年でこの人ぐらい。

それでも真っ赤な何の可愛げもないリボンが似合ってしまうのは、美少女だけあるわぁ。


なんて心の中で納得していると、ムカつくほどにデレ顔全開の彩ちゃんが目に入る。


「あ、みて!」


ボサボサだった髪をマドンナの両手に掬われ、整えられてるし。

そんでもって頭をポンポンされて鼻の下異常に伸びてるし。


あかんあかんあかんっ!

最悪や、頭くる!


「あーれはムカつくわぁ…」


「「え?」」


川栄の頭の上に私の頭があって、そのまた上に誰かの頭が乗っかる。


誰かと思えばみるきー。


「あれ、みるきー?バレー部練習終わったん?」

「今さっき終わったとこー。二人が楽しそうな顔してどっか行くもんやからつけてみれば。」


みるきーのジトッとした白い目。


「おもんない、彩ちゃんて女見る目ないやんなぁ?」

「へ?みるきーそういう目線?」

「クラスのマドンナはあんにんかもしれへんけど、学校のマドンナはこのわたしやで?ほんまちっさな女やわー、彩ちゃん。ほんまムカつく~!!!」

「わっ!ちょ、暴れんとって!」

「ちょ、ばか!そんなに揺れると体勢がっ!」


わっ、わっ、わっ…!!


危ないと思った時にはもう遅くて。

体勢を立て直しきれずに、気づけば3人ごと地面にべっしゃーん。

派手に崩れ落ちただけあって、さすがの潜入捜査もここまでやった。


「…あんたら、なにしてんねん。」


それはそれは冷たーーい誰かさんの声が、頭上から降り注ぐ。


「あ、あは?彩ちゃん、こんにちはー。」

「ほんましょーもない遊びしよって。」


ジトーッとした目で私たち3人を睨んでくる彩ちゃん、と、その一歩後ろにあんにん。


「いやぁー、まーこれには深い訳があってですね?」

川栄が何か弁解しようとして口を開いたが、それを無視してみるきーが立ち上がった。


「なぁなぁ!2人ってできてんの!?あんにんはみるるんが好きちゃうかったん?そんでもって彩ちゃんはわたしのこと好きだったんちゃうん!?」


あーもうこの爆弾娘。

自分たちがコソコソと潜入捜査していたものを、結局全部本人に聞いてしまってるやん。


私が頭を抱えると、「あー、」と照れ臭そうな彩ちゃんの声。


「最近付き合うことになってん、悪いか?」


「「「え?」」」


アホ面3人衆が揃ってキョトンとするのを他所に、顔を真っ赤にさせた彩ちゃんが隣のあんにんの肩に腕を回した。


「なぁ?」

「うん、まぁ。」


とかなんとか、顔を見合わせてお互い確認しながらイチャついてくるとこがまた腹立つ。


「っちゅーわけやから、探偵ごっこもほどほどにせぇよ。行くでー、あんにん。」

「あー待って彩ちゃん!」


少し前を歩き出す彩ちゃんを追いかけて、腕を絡めるあんにん。

並んで歩く姿がまた腹立たしいほどに絵になって。


学級委員でバスケ部部長のイケメン君と、成績優秀クラスのマドンナやったらまぁ、そらぁ絵になるわなぁって、悔しくて悔しくてしゃーなかった。


せっかく弱み握ってやろー思ったのに、何故だかこちらが弱み握られたみたいになってもう。

なんで倍返しされなあかんねん。




「もー、ほんま散々やったわぁ。」


みるきーがプンスカしながらそこらへんに投げ出されたカバンを拾い上げる。


「こんな遊びも大概にして、早く2人も付き合っちゃえばいいのに。」


「「へ??」」


「あれ、ちゃうの?2人って両想いやんな?」


「いやいやいや!なんでこんなアホみたいに勉強できひん奴とくっつかなあかんねん!!」

「いーやー待ってー!それはこっちのセリフ!なんでこんなけたたましい笑い声の人と一緒にならなきゃいけないねん!!」

いや、やからエセ関西弁やめーや。


「えー?学校中の噂やで?横栄ができてる、って。」


いたずらっ子のような顔で笑うみるきー。


いやいやいやいやそんなん絶対、、

「「うそだろーが!!」」



そんな日常。



~おわり~




仲良くさせてもらってる大事な方からのリクエスト、さや姉×あんにんの学パロでした(^^)

何故だかゆいはん視点でしかもギャグっぽくなってしまあましたが…笑


さや姉が選抜で仲良くしてる、ゆいはん、りっちゃん、あんにんとの絡みは自分的にもほっこりするので好きです!!(^-^)


以上、うそだろーが劇場でしたー。笑
*茉夏卒業記念小説

*CPじゅりまな



引越し屋さんのダンボールが運ばれきって、一息つく日曜日の昼間。


新しいワンルームの部屋に胸を高鳴らせながら、窓を開けて外の空気を吸い込む。

南西を向くこの大きな窓がお気に入り。

あまり広い部屋なわけではないけど、風通しも日当たりもいい。



「茉夏らしいね。」


部屋を選んだ理由を知ったら、

そう言って、笑ってくれるかな。


「じゅっちゃん…」


ダンボールを開けて、一番最初に出てきたのは、写真立てで。

そこに写る私とじゅっちゃんは、制服に身を包み、桜並木の下で笑ってた。


この3月で高校を卒業して、私は東京の大学に通うために上京した。

付き合って2年のじゅっちゃんは、名古屋の大学に進学したから、いわゆる遠距離恋愛になって。


毎日電話しようねって言い合って、新幹線のホームでバイバイした。


昨日の夜まで東京のホテルでお母さんと泊まっていたけど、今日からはこの新居に1人暮らし。


新しい家具が並ぶ、特別な空間に自然と胸が弾む。


でも、その家具の中に、ダンボールから出した懐かしい小物の数々を並べている内に、だんだん寂しい気持ちになってきて。

たまらず私は、ベッドの脇に置いた携帯を手に取った。


着信履歴の一番上にある、『じゅっちゃん』の文字を、押そうか押すまいか悩みあぐねていた矢先に。

携帯の画面が着信画面に切り替わった。


「え、あ、え?」


鳴り出す個別設定の着信音と、ディスプレイの着信相手に『じゅっちゃん』の文字。


間違えてかけちゃったかなと思ったけど、違うよね?


私は慌てて着信をとった。


「も、もしもし?」

『あ、茉夏?』


機械越しからでも伝わる、じゅっちゃんからの愛のこもった声。

安心したのか、恋しくなったのか、瞼にじんわりと涙が溜まった。


「じゅっちゃん、どうしたの?」

『いやー、茉夏が新しい家慣れたのかなーって気になって』

「…っぐすん」

『茉夏?』


鼻を啜ると、その異変にすぐ気づいてくれるじゅっちゃんは、やっぱり優しい。


『もしかして、恋しくなっちゃった?』

「ぐすっ…そんなんじゃ、ないもん。」


バレバレの強がりをしてみれば、あははって笑うじゅっちゃん。


『じゃあ、会いに来る必要もなかったかな?』

「…え?」


私がキョトンとしていると、携帯を押し当てている方とは逆の耳から聞こえるノック音。


「まさか…」


私は携帯を耳に当てたまま、玄関に急いだ。


ドタバタとうるさい足音が、携帯越しにも聞こえてくる。


まさかまさか!


ガチャ、


玄関を開けると、

「じゅっちゃん!!」

にっこり笑顔のじゅっちゃんが立っていた。


「茉夏、久しぶり。」


「ど、どうしてここに?」

「茉夏に会いに来たんじゃーん?だめだったー?お邪魔しまーす!」

「え、あ、え?」


驚く私を他所に、ズカズカと玄関を上がるじゅっちゃん。


私は、まだ状況を把握しきれないまま、ドアを閉めてじゅっちゃんの後に続いた。


「わー、日当たりのいい部屋だねー!」


ワンルームのリビングに入るなり、じゅっちゃんは嬉しそうに声を上げて、さっきシーツを敷いたばかりのベッドにダイブした。


「あ、この写真飾ってるんだぁ」


ベッドの脇に飾った、先ほどの写真立てを手に取ってまじまじと見るじゅっちゃん。

「この写真あたしもお気に入り。ちゃんと部屋に飾ってあるよー?」


慈しむようにその写真を見るじゅっちゃんの綺麗な横顔に、胸が熱くなった。


「今はさ、こうやって茉夏の思い出の一番大事な人でいられるけどさ。」

じゅっちゃんが、その写真を見ながらゆっくり喋り出す。


「大学生としての生活を重ねるにつれて、茉夏にもたくさん大事なものができて、写真立てにたくさん写真を飾って。」

その中に写る二人の顔をそっと指でなぞっている。


「あたしが思い出の一番じゃなくて、思い出の中の一人になるのかぁーって思うと、ちょっと寂しいな。」

寂しげな顔をしながら、そっと写真立てを元の場所に戻した。


「離れて暮らすって、そういうことだよね。茉夏が東京に行っちゃってから、その重大さに気がついた。」


じゅっちゃんは寝そべっていた体勢を立て直して、ベッドに座り直した。


「茉夏、おいで」

「じゅっちゃん?」


私はゆっくり歩み寄り、じゅっちゃんの前で立ち止まった。

見下ろしたじゅっちゃんは、すごくすごく寂しそうな顔をしながら、それでも笑ってた。


「茉夏、寂しいよ…」


じゅっちゃんはそう言いながら、私の腰あたりに抱きついて、お腹に顔を埋めた。


じゅっちゃんの首辺りに腕を回し、そっと彼女の頭を撫でた。

すると、じゅっちゃんは更に強く抱きついてくるもんだから、私の胸もキュッてきつくなって。


「じゅっちゃん…」

私まですごくすごく寂しくなってきた。


「じゅっちゃん。私の中で、じゅっちゃんはいつも一番大事な人だよ?大学生になって、他にたくさん思い出ができても、それだけは変わらない。」

涙ながらにそう言えば、

「本当?」

って、まるで捨てられた子犬のような声を出してくる。


私はストンとじゅっちゃんの隣に座り、顔を覗いた。


「本当だよ。じゅっちゃんも、浮気したら許さないからね?」


あやすように頭をポンポン撫でてあげれば、

「茉夏大好きー!」

って思いっきり抱きついてきた。


「わっ!」


バランスを崩して、そのまま二人でベッドに倒れこむ。


「………。」

「………。」


新しく買った壁の時計がカチカチと鳴る。


私はじゅっちゃんに組み敷かれる体勢になっていた。


カーッと顔が熱くなるのを感じる。

よく見れば、じゅっちゃんの顔も真っ赤だった。


だけど、なぜかすごく真剣な目をしていて、その体勢から逃がしてくれない。


「茉夏。」

「…な、なに?」


じゅっちゃんからの刺すような視線に気づかない振りをしながら、目を泳がせる。


「もう、大学生になるから、さ。」

「……から?」

「…だめ、かな?」


付き合って2年の私たちが恋人らしいことをしたといえば、デートをして、手を繋いで、1年記念でやっとキスをしたことぐらい。


じゅっちゃんがそろそろ、という意味も、分からないほど子どもじゃない。

本当は、そうなるのが怖くて、今まで何度かそういう雰囲気になりそうだったのも必死で紛らわせてきたけど。


この状況はさすがに紛らわせないし、それに…。


これから離れて暮らすことに、多少なりとも不安があって。


「だめ、じゃ、ない…」

「…ほんと?」


あまりの恥ずかしさに、じゅっちゃんの首にしっかり抱きついた。


もしこうなれば、少しでもその不安が払拭されるんじゃないかって、そう思った。


「じゅっちゃんだから…大丈夫。」


「茉夏…、怖くなったら、言ってね。」


身体を引き離され、優しい瞳に見つめられる。

やっぱり、好きだなぁ。


東京に引っ越して、離れて暮らすことになっても絶対。

この気持ちだけは、じゅっちゃんから引越しできないなって。


久しぶりに触れた唇の熱い感覚にドキドキしながら、頭で思っていた。



いつまでも大好きだよ、じゅっちゃん!



~おわり~




茉夏卒業おめでとう!!
「彩ちゃん!つぎあれ!あれ乗ろ!!」

「ちょ、お前正気か?あんなん乗ったら心臓どっかいってまうで…?」

「ほらほら早くー!!」


みるきーに手を引かれ、向かった先はとんでもなく傾斜の鋭いジェットコースター。


絶叫系はそこまで苦手なわけちゃうけど、この遊園地一の怪物マシーンという謳い文句はあたしをビビらせるには充分で。

結局乗り終わったあと、髪をバサバサにしながらあたしは暫く放心状態やった。


「彩ちゃん、はいっ!」

「おー、ありがとう」


ベンチで休憩するあたしの元に、缶のジュースを二本持ったみるきー。

一つをあたしに渡したあと、隣に腰掛けた。


「楽しいなぁ、遊園地。」

ニコニコしながらジュースを飲むみるきー。

足なんかパタパタさせやがって。

こういう仕草を可愛いなぁって思ってきた男は何人いるんやろ。


受け取った缶ジュースのプルタブを引くと、プシュッという音が鳴る。

その缶ジュースに口をつけようとした時、フラッと視界に入った人影を見て、あたしは思わず目を瞬かせた。


「あれ?まーちゅん?」


名前を呼ばれたまーちゅんは、不思議そうにこちらを見た。


「え?彩?」

まーちゅんは目を丸くした。

隣にいるみるきーを目にして、その顔はみるみる内に二ヤーッと口角が上がって行く。


あー、こいつ絶対面倒くさいわ。

そう直感して、やっぱり声をかけなければ良かったと後悔。


「彩、この人だれー?」

「まーちゅんにはまえ話したやろ。」

「えー?なんのことー?知らんけどー」

ほらそうやってニヤニヤして。

ほんまやだ。


「彩ちゃんの彼女の渡辺美優紀です。まーちゅん知ってるよ!よく彩ちゃんが話してる人やろ?」


ニコニコしながら腕を絡めてくるみるきー。

あーもう、こういう時どーいう反応すればいいか分からへんから困んねん。


「なんや彩、わたしのこと気ぃあんの?噂とかせんといてくれるー?」

「あーもうまーちゅんうっさい。それよりなんであんたがこんな所いんねん!」

「あー、それはなー…、」


途端にばつが悪そうに目を泳がせ始めるまーちゅん。


なんやなんやと思っていると、後ろから誰かが駆け寄って来た。


「まーちゅんお待たせ!」

ハンカチをカバンにしまいながらまーちゅんのもとにやってきたのは…。

え?嘘やろ?


「山田さん?」

「えぇ!?彩ちゃん!?」


いつも大学で見るより少し化粧が大人っぽくて、それでも可愛らしさが残る山田さん。


「なんで?え?付き合ってんの?」

あたしが驚いた顔で二人を交互に見ると、まーちゅんが焦ったような顔で言う。


「ちゃうって!たまたまな?」

「まーちゅんが遊びに誘ってくれてん。誰かさんに失恋したって気ぃ遣ってくれてな?」


ギク…。


「あー!覚えてる!ファミレスでバイトしてた人やぁ!失恋しちゃったんですか?可愛いのにもったいないー!!」

みるきーは知ってか知らずか、立ち上がって山田さんを横からギュって抱き締める。


「わたしも山田先輩の傷癒してあげるわぁ、な?四人で遊ぼうや!」


おいおい嘘やろ!?


「お、ええなぁ!そうしようや!」


まーちゅんも乗り気やし!


そうして何故か、四人で遊園地を回ることになって。

せっかくの初デートやのにみるきーと二人きりになれへんのも不服やったし、

ちょいちょい目が合う山田さんとなにも話せない自分のヘタレ具合にげんなりやし、

山田さんとまーちゅんが仲良さげに話してるのもなんだか面白くなかったしで、もう散々やわ。



「彩ちゃーん!まーちゅーん!」


「おーほいほい!美優紀ちゃーん!菜々ちゃーん!」


メリーゴーランドにキャッキャ言いながら乗っているみるきーと山田さん。

あたしとまーちゅんが柵越しに見守って、あたしらの近くを通ってくるたんびに幸せそうに手を振る二人。


「おい、人の彼女のこと美優紀ちゃん呼びやめーや。」

「えーなんで?ええやん、美優紀ちゃん可愛いし。」

「意味わからんし。それに山田さん先輩やぞ。」

「あははー。彩なにムキになってんねん。可愛いなぁ。」

「なっ!頭なでなですんなや!」


まーちゅんの手を頭から振り払う。


「まぁ、山田先輩のことは茉由が幸せにするから安心してや。」

「…え?」


途端に真剣なトーンではなしだすまーちゅん。

「茉由な、好きやねん。先輩のこと。本気やからな?」

「あぁ、そっか。」


前を向きながら、尚も通り過ぎる二人にふざけた笑顔を向けるまーちゅん。

真剣な話してんのに、二人にはそういうとこ見せへんねやな。

そういうスマートなとこ、むっちゃ尊敬するわ。


「そっか、頑張ってな。」


きっと、まーちゅんなら幸せにできるよ。

安心やわ。


良かったな、山田さん。


次、回ってきたら、あたしも二人に手振り返してあげよ。

そう思って前を向き直したのに、二人がこっちに来る前に、メリーゴーランドは止まってしまって。


やっぱ自分ってむちゃくちゃかっこ悪いなって苦笑いしたあと、

「彩ちゃーーん!」


って、向こうからやって来る愛しい彼女に満面の笑みを向けた。


「こんの、色ボケ野郎が」


後ろから聞こえるまーちゅんの野次は、聞こえないふり。



「なぁ、彩ちゃん。」

「ん?」


最後くらいはって、二人ずつに分かれて乗り込んだ観覧車。


「わたしな、高校時代、彩ちゃんがわたしのこと好きだったの知ってるんやで?」

「は?」

対面に座るみるきーが、ニヤッとしながらそんなことを言うてくる。


「りかちゃんに聞いた。」

「あんの肩幅…」


次会ったらしばく。絶対しばいたる。

そう思って、みるきーにばれないように握りこぶしを作った。


「わたしもな、好きだったんやで?彩ちゃんのこと。」

「え?」

けど、そんなみるきーの言葉にパッと拳の力が抜ける。

「なに言うてんの?あんた彼氏作ってたやん。」

「言ったやろ?わたし、好きな人とダメになるのが怖かったって。わたし、怖かってん。彩ちゃんと付き合って、そのあとダメになるのが。」

顔を真っ赤に染めながら話すみるきーの顔を、ポカンとした顔で見ていた。

「彩ちゃん真面目やからさ、ダメになったらその後は友達としても会ってくれなそうやん?そうなるくらいやったら、このままの距離でいた方がええんちゃうかって、思ったん。」


「なぁ、聞いていい?みるきー過去に本気の恋したこと一回だけあるって…、」

「わかるやろ?」

みるきーは珍しく、ちょっといっぱいいっぱいな顔をしていた。

「彩ちゃんやで?」


まじか…。

今のあたし、多分むちゃくちゃアホな顔してると思う。

そんだけ、呆然としていた。


「けど、わたしが思ってる以上に彩ちゃんは真面目やったからびっくりした。」

「え?どーいうこと?」

「あの時からずっと、好きでいてくれたんやろ?」


あーあかん、その照れた顔、反則やって。

こっちまで照れてくるやろ。


「あほ、そうやわ。好きやわ。あたしどんだけ真面目やねん。」


自分のことしか考えてなくて、都合が良くて、全然真面目じゃないのかもしれない。

けど、みるきーを想う気持ちだけはいつだって真面目。

大真面目やわ。


「彩ちゃんは優等生やなぁ?」

「みるきーが好きそうなタイプちゃうよな?」

「ほんまに。わたし、軽い人がタイプやねん。」


そう言いながら、みるきーはあたしの膝に乗っかってくる。

「わっ!」


慌てて抱きとめると、そのまま首に腕を回してくる。


「けど、彩ちゃんへの気持ちは、大真面目やで?」


まてまて、なんやこのむっちゃエロい体勢は。

その誘ってる顔は。


「彩ちゃん、好き。」


斜め上からあたしを見下ろすみるきーに、ゴクリと喉を鳴らす。

あかんなぁ、むちゃくちゃ可愛いやんけ。


「ん、おんなじやで。」


すっと睫毛を伏せるみるきー。

そんな彼女のうなじに手をかけ、ぐいっと自分の方に引き寄せる。


「好きやで、美優紀。」


首を傾けながら、みるきーの唇に、自分の唇を重ねた。


観覧車が地上に降りるまであと数分。

ブレーキがきかなくならへん程度に、もうちょっとだけ愛し合おうか。



~おわり~
大急ぎでマンションに辿り着き、3階やからエレベーター呼ぶのも煩わしくて、階段をダッシュで駆け上がった。

ドアは鍵がかかっていなくて、どんだけ不用心やねんと思うより先に、体が中に向かって行った。


「はぁ、はぁ、みるきー!!」



「早く早く!」

「ちょ、そんな押したらあかんて!」

「早くせな来ちゃうからっ!」


「………。」


部屋に上がると、ドタドタと慌ただしいみるきー。

と、男。


男はズボンを不自然なまで引き上げ、大急ぎでベルトをしめている。

その後ろでみるきーは、バスタオルに身をくるみ、必死に男を急かしていた。


「誰が来ちゃうって…?」


あたしが低ーい声でそう聞くと、やっとこちらに気付いたお二人さんはギクリと動作を止めた。


「あ、さ、彩ちゃん?早かったなぁ。いらっしゃい。」

「お、おじゃましてまーす…、」


二人とも顔が全く笑ってへん。


「こ、この人な、大学の先輩で、」

「あ、そ、そうそう、ほな、お邪魔しましたー、」


すごすごとあたしの横をすり抜けて帰ろうとする男。

「ちょい待て」


「ひっ!」


あたしは逃げようとするその男の腕を引っ掴み、自分の前まで引きずり出す。

そして威勢良くそいつの胸ぐらを掴んだ。


「あんたなぁ、みるきーに何してくれてんねん!!お腹の赤ちゃんおろしたばっかの繊細な体やぞ!?」

「え、あ、赤ちゃん…!?」


男が驚いた顔でみるきーの顔を見る。

みるきーは気まずそうに目を逸らした。

やっぱり新しい男やんな。


「お前はなぁ、軽い気持ちで近づいたかもしれへんけどなぁ!もし事故でみるきーに赤ちゃんできたらどうすんねん!!なぁ!大学生なんやろ?学生の分際でその子の父親になれる覚悟あんのかっ!?」

「おま、なに、言ってん…」

「一生みるきーのこと守れる覚悟がないなら今すぐ出てけやこのヘタレ男がっ!!」

掴んだ胸ぐらをそのまま力いっぱい押してやった。


「ほ、ほんまなんなん!?」

男は押された反動でよろめき、そのままびっくりした顔で玄関から出て行ってしまった。


あたしが暫く玄関の方を見ながら立ち尽くしていると、横からギュッとみるきーが抱きついてきた。

「彩ちゃん…ありがとう」


あたしはそんなみるきーの身体を引き剥がして、頬に平手打ちをした。


パチンッ!と生々しい音が部屋に響く。


「った…」

ぶたれた反動でみるきーは一歩後退し、頬をさすりながらこちらを再び見てきた。


「あんたほんま何してんの?術後1週間も経ってへんねやろ?こんなことしていいと思ってんの?」

「……最後まで、してへんもん」

「は?」

「やから、まだ途中やったから大丈夫やもん」


そんなくだらない言い訳をするこいつにほとほと愛想が尽きそうや。


「まだっていったって、いずれそうなることぐらい自分で分かったやろ?今回は大丈夫やったかもしれへんけどなぁ、あんた自分の身体もっと大事にせなあかんやろ?」

「だって…言えへんやん。赤ちゃんおろしたばっかやからできひんなんて、そんなん言えへんやん」

「どあほ!ぼけ!脳なし!」

「の、脳はいくらなんでもあるわっ!」


いつまで経っても自分の非を認めようとしない、このアホでどうしようもない女を、居ても立ってもいられず、ギュウッと抱きしめた。


「お前はどんだけ懲りんのや。お願いやから、もっと自分の身体大事にしてくれや…」

「なんで…そんなに構うねん、わたしに。ほっといてく…」

「好きやねん。」

「…っ」

「あんたのことが好きやねん。ほっとけへんよ。」

「………」


バスタオルの上から、みるきーのお腹をそっとさする。


「あんたが、どんな思いで病院行って、どんな思いで手術して、どんな思いで帰ってきたか、想像するだけで苦しくなんねん。」

その時のことを思い出したのか、みるきーの身体が強張ったのを感じた。


「しんどかったんやろ?身も、心も、な?」

そっと問いかけると、コクンと頷くみるきー。

ぐすっと鼻をすする音が聞こえた。


「じゃあ、もうやめようや、こんなしょーもないことすんの。」

「……、」

「あたしが、幸せにしてやるから」

「……!」


みるきーは、弾かれたように顔を上げた。

その顔は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。

けれど、顔色は全然悪くなくて。

あたしと目を合わせるなり、ニコーッて、いつもの笑顔を見せてくれた。


「彩ちゃん、むっちゃかっこいいこと言ってんのに、顔真っ赤やで?」

「うっさいわ」

「えへへ、可愛い」


みるきーはあたしの胸にすっぽり収まり直し、先ほどまで折りたたんでいた腕を、あたしの背中に回した。


「じゃあ、幸せにしてもらう。」


そのくぐもった声にドキドキして、上気した顔が、さらに熱くなるのを感じた。



「なぁ、」

「ん?なにー?彩ちゃん」

「あのさ、一応あたしあんたのこと好きやん?」

「うん、せやなぁ。顔真っ赤やもんな。」

「好きな人にさ、そんな格好で抱きつかれてたら、どう思うと思う?」

「え?」


みるきーは自分の格好を改めて見て、ニヤァッと意地悪い顔に変化する。


「さすがにバスタオル1枚は幼気な彩ちゃんには早かった?」

「な、なんやねんそれ。」

「ええんやでー?むらむらしてもー?」


そう言って、わざと胸を押し当ててくるとこ、ほんま昔から変わらへんわるきーやわ。


「あほ、はよ服着てこい。」


あたしはみるきーのおでこを引っつかんで、自分から遠ざけた。


自分の身体大事にせいとか言っといて、あたしが犯すわけにはいかんやろ。

途中までなんて止められる自信ないしな。



「わかったー。着てくるから、彩ちゃん帰らんとってな?」


みるきーはパタパタとタンスの方に走っていった。

チラチラとこちらを振り返りながら、本当に帰ろうとしていないかチェックしているみるきーがなんとも言えず可愛くて、にやける顔を隠すのに必死やった。



~つづく~
テスト最終日。

残るラスト一個のテストが終わって、解放感にひたりながら教室を出た。

あぁ、これで長らくのテスト勉強ともおさらばや。


「さーやかちゃん」


名前を呼ばれて、振り返った。


「山田さん、」


そこには、笑顔の山田さんがおった。


あぁ、そうや。

このテスト、教職の授業で山田さんも取ってたんや。


駆け寄ってきて、あたしの隣を歩く。


「どーやった?テスト。」

「まぁまぁですかね。山田さんは?」

「私もぼちぼち。」

「単位取れなくて留年とかやめてくださいよ?」

「あー、またそうやって!最低限はできたわぁ!」


軽い力で肩を叩かれる。

ほんまに、この人とおると和むんよな。


「なぁ、山田さん。」

「んー?」

「このあと、デート行かへん?」

「……、」


急に黙り込む山田さん。

まぁ、無理もないよな。

一度デートすっぽかされた相手からの誘いやし。


「ええよ?その代わり、ちゃんと楽しませてな?」


けれど、案外すんなり了承されて、ホッとする。

「もちろん。んじゃ、行きましょか。」


二人で顔を見合わせて笑った。

こうやって、山田さんと笑い合うのは久々やった。


もう日が暮れてきたところだったから、遠い所に行くわけではなく。

落ち着いた雰囲気の定食屋で早めの夜ご飯を済ませたあと、あたしが知ってる限りで一番のお洒落なバーに山田さんを連れて来た。


「ここ、むっちゃお洒落やな。お酒も美味しいし。」

「そぉ?気に入ってくれたなら良かった。」


ピンク色の液体が入ったグラスを手に持つ山田さん。

普段アホっぽいこの先輩も、顔が綺麗やからか、こういう所にいるとそれはそれで絵になる。


こうやって、落ち着いたデートをして、楽しかったなぁって笑い合ってバイバイして、夜にちょっとだけ電話して。

また明日も、一緒に講義を受けて、昼ご飯とか食べて。

たまに教職の相談をし合ったり、一緒に勉強したり。

そういうのって、むっちゃ普通やけど、むっちゃ幸せやんなぁ。


山田さんとなら、ほんまに幸せになれるんやろうな。

どっかのしょーもない奴とは大違いや。


「今日はな、言いたいことがあってん。聞いてくれますか?」

「ん?なにぃ?」


少し飲み過ぎちゃうかな。

山田さんの頬は赤く染まり、目がトロンとしていた。


「あたしな、好きな人がおんねん。」


山田さんと付き合えたら、この先大変なことなんか絶対なくて。

もしあったとしても、山田さんと二人でなら、乗り越えられる気がする。


「その人な、ほんまにどうしようもない奴なんやけど、どうしようもなく好きで。」


でも、自分ほんまアホやから。

この心にだけは、どうしても嘘つけへんから。


「…だから?」


「だから、その、」


あたしが言いにくそうに口ごもっていると、山田さんはあははっと笑って、グラスをカウンターに置いた。


「アホ。付き合ってもないし告白もしてへんのに振ろうとしやんといてよ。」


顔を上げると、困ったように笑う山田さん。


「ごめん…。」


「けど、そういう真面目なとこ好きやで。」

「え?」

「今日誘ってくれたのって、ちゃんとけじめつけるためやろ?それにこうやって、約束の埋め合わせもしてくれたやん。」

「山田さん…」

「そういうとこは、彩ちゃんのええとこやと思うし。やから、変わらんといてな?」


あぁ、やっぱりいい女や。

その笑顔があまりにも美しくて、この人と一緒にいて初めてため息が漏れた。

逃がした魚は大きすぎるわ、ほんま。



山田さんと別れて、すぐに携帯を取り出す。

アドレス帳を思いっきり下にスクロールして、渡辺美優紀の文字をタップした。


着信を押して、そのまま携帯を耳に押し当てる。

しばらくコール音が鳴ったあと、無慈悲な『ただいま電話に出ることができません』の機械音。

それでもめげずに、みるきーに電話をかけ続けた。

4度留守電に繋がって、これで最後にしようとかけた5度目の着信。


4コール鳴って、やっぱりだめか、そう諦めかけた瞬間やった。


『…なに?』

「みるきー!?」


奇跡的にみるきーに電話が繋がった。


「なぁ、今どこにいる?今すぐ会いたいねんけど。」

『…は?無理や無理、そんないきなり言われても…。』

「家?家にいるねんな?今から行くから。」

『ちょ!無理やって、あかんて彩ちゃ…』


みるきーの焦る声に聞く耳を持たず、電話を切った。


みるきーがいま1人暮らしをしている家。

同窓会の日に、タクシーで行き先告げたから知ってんねん。


もう、言うなら今日しかないねん。

決めたんや、もう何があっても、自分に嘘つかへんって。


あたしは近くのタクシーを止めて、急いでそれに乗り込んだ。


待っててや、みるきー。

あんたを幸せにできるんは、あたしだけやから。


タクシーは静かに走り出した。


~つづく~

その日あたしは、みるきーを抱いた。

服を脱がせると嫌でも目に入るのは、至る所に散りばめられたキスマーク。

そんな愛の痕に見ないふりをして、夢中でみるきーを求めた。


「はぁ、はぁ…さや…かちゃん…」


相手が自分に想いが向いていないのに、こういうことするのは虚しいだけだと思っていた。

けど、いざこうなってみたら、そんなのも気にならないほどドキドキして、興奮して、満たされた。


「はぁ、…みるきー…」


みるきーの寂しさや辛さを埋めるため、それは外面だけの言い訳で、結局は自分がこうなりたかったんやと思う。

どんだけ自分勝手やねん。


行為が終わって、ベッドで寄り添い合う。

だらんと伸ばしたあたしの腕に頭を乗っけて、肩あたりまですり寄ってきたあと、そのままあたしに抱きついてくるみるきー。

手慣れた自然な動作に苦笑いを浮かべつつ、その頭を腕で包み込んでそっと撫でた。


「なぁ、子供、どうするん?」

天井をぼんやり見つめた。


「おろす、よ。」

みるきーの声に躊躇はなかった。


「それでええの?」

「一人で育てるの無理やし、大学生やもん。」

「それは、そうやな。」

あたしは表情を変えなかった。


「まぁ、今回の彼氏ももともと好きなわけやなかったし。」

吐き捨てるようにそう言うみるきーに顔を向けた。


「なぁ、なんで好きやない人とばっかり付き合うん?それで傷つくのはみるきーやろ?」

「本気で好きになったら、辛いやん。」

「え?」

意外な回答やった。


「好きな人と付き合って、その人に振られたりしたら、むっちゃ辛いやん。立ち直れへんもん。やったら、こういう恋愛の方が楽やん。」

「まるで、本気の恋したことあるみたいな口ぶりやな。」

「まぁ、一回だけ、な。」

「そっか。」


「なぁ、それより彩ちゃんはどうやったん?」

「は?」

「付き合ってもない人とこんなことするん、初めてやろ?なかなかスリリングだったんちゃうん?」

「あほか、」


あたしは腕からみるきーの頭を振り落とし、後頭部で腕を組んだ。


「付き合ってなくてもな、好きやない人とこういうことはせーへんわ。」

「…え?」

「おやすみ。」


あたしはみるきーに背を向けるようにうずくまって、瞼を閉じた。


みるきーへの想いは過去のものやって、ずっとずっと思い込んできて。

そうすることで自分を守ろうとしてきたけど。


抑えきれないこの衝動に名前をつけるとしたら…、

それはもう、好きって言葉しか思いつかへんかった。


あたしは、こいつのことが好きで、好きで、しゃーなくて。

こんなどうしようもなくて、尻軽で、挙げ句の果てに不注意で妊娠するようなアホな女やけど。

こんな不真面目な女を、もうずっと前から好きなあたしの方が、アホで、しゃーなくて、不真面目やって笑える。


山田さん、今頃ちゃんと帰ってるかな。

雨に濡れて風邪引いてたりせーへんかな。


ぼんやりとしてきた意識の中で、なけなしの良心が顔を覗かせていた。


そんなことがあった翌日、あたしは何事もなかったかのように大学に登校して、まーちゅんと一緒に講義を受けた。

もう来週からはテストも始まるから、うかうかもしてられへんねや、一応な。


「なー彩ー、このあとどっかで勉強して帰らへん?」

「おー、ええなぁ。」

「じゃあさ、あそこ行こうや!茉由ちょうどお腹も空いたし!」

「え"っ、」


大学の門を抜けて、暫くふらふら歩いていた。

まーちゅんが指差したのは、いつかみるきーと一緒に入って、たまたま山田さんがバイトしていたファミレス。


「あ、あー、違うとこにせーへん?あたし日本食食べたいし。」

「えー、日本食もあんで?ここ。」

「やー、ドリンクバーあるとこ嫌いやねん」

「いやいや言うてることむちゃくちゃやろ。さては…、」

「な、なに?」

「元カノかなんかでも働いてるんやろ?」

「はっ!ちゃうし!そんなんちゃうし!行くで?まーちゅん。」

「なにムキになってんのー。」


ま、まぁあれや。

もうすぐテストやし、山田さんもバイトなんてせずにどっかで勉強してるやろ。

な?な?


「いらっしゃいませー」


店内に入ってすぐ迎えてくれた店員さんは、山田さんやなかった。


ホッとしながら席に通され、とりあえずメニューを注文して、勉強道具をテーブルに広げる。


変な心配せんでも、山田さん真面目やし、そらそうやんな。

あたしが参考書を開くと、対面に座るまーちゅんがやたらテンション高く話しかけてくる。


「なぁなぁ、茉由、あの子むっちゃタイプやねんけど!」

「え?」

「ほら、いま料理持ってきてくれてる子。」


「お待たせいたしました。」


「!!」


たったいま胸をなでおろしたところやったから逆に、その反動は凄くて。

その声を聞いただけで、心臓が止まるかと思った。


「彩きたでー」


顔を伏せればなんとかやり切れるかと思ったのに、あろうことかまーちゅんは名指ししてくるし。

お願いだから黙って。


「あれ?彩ちゃん…?」


あーほらもう、最悪や。


「お、おー、山田さん。今日もバイトしてはったんですね。」

「え?彩知り合い?」


顔を上げて目を見合わす。


「なんや、元気そうで良かった。何かあったと思って心配したんやで?昨日。来れないなら言うてくれれば良かったのにぃ。」

「あ、あぁ、ごめんな。ちょっと急用が入ってん。」

「そっか、それならしゃーないな。」


山田さんはマスクで口元を隠していて、表情が読み取りづらかった。

ただ、心なしか鼻声になっていて、もしかしてやっぱりあの雨の中散々待たせて風邪を引かせてしまったのかと思うと、胸が痛んだ。


山田さんが料理を置いて厨房に戻って行くのを確認してから、まーちゅんが身を乗り出す。


「なぁ彩。どういうこと?」

「あ、あれや。たまたまナンパしたらな、引っかかってん。ほんまめんどくさいわー。あーいうタイプ苦手やねん。」

目が泳ぎまくって、まーちゅんの目なんか絶対見れへん。


「彩ってそんな軽い奴やったっけ?ちょっとがっかりやねんけど。」

まーちゅんの言葉が、グサっと胸に突き刺さる。


「あーいう子は遊んだらいっちゃんだめなタイプやで?」


そんなん…、分かってるわ。

あたしが一番、分かってるわ…。


俯いて、参考書に目を落とすけれど、内容は全く頭に入ってこーへんかった。



~つづく~
こんばんは!!

と、思っていたのに、気がつけばもうこんな時間!

おはようの時間になっていますね(;^_^A


気がつけば3月も下旬になってますねぇ、早いなぁ。しみじみ。


3月はバイトに明け暮れていたわけですが、そちらのバイトも契約満了につきひと段落。

あとは、残り少ない学生生活を思いっきり謳歌するだけとなりました。


4月からサイト運営を休止すると言ったものの、やっぱり寂しいなぁなんて思ったり思わなかったり。



とりあえず業務連絡!


フォレスト「休むことも、大切」がリニューアルオープンしました!

最近更新した作品たちもまとめてあるので、まとめ読みは是非フォレストで!

web拍手などもまってますね(^^)


当サイトからも、メッセージボードにリンク貼ったので、飛べるようになっております!




そして、ただいま連載中の「大真面目に好きやから」は、間もなくクライマックスに向かいます!

ありそうでなかった、さやみる中編。

最近はさやみるファンの方で読んでくれてる方も増えてきて、嬉しい限りです(^^)


個人的に難波にハマっているのでね。


難波つながりで言うのなら、昨日はYNNの生配信で、「沖縄からなんくるないさ~」(番組名危うい)がありました(^^)

さや姉と菜々ちゃんの相変わらずな雰囲気に癒されまくりのさきおかでした!

photo:01


photo:02




あと一週間で、さやみる中編完結させて、じゅりれなとさやななの中編も完結させて、逆転王子様も更新?

考えている君夏の番外編も更新?


むむむむ、無理だこりゃ!!Σ(゚Д゚ノ)ノ

完全にペース配分ミス(・_・;


どれも一応頭の中では構成できてるのにもどかしいなっ(*_*)


ということで、今日はこのへんで失礼します!

締め方雑とか言わない!

おやすみなさーい。


さきおかでした!
「うげー、すっごい雨…」


コンビニでのバイト終わり。

せっかくいつもより早めに上がれたというのに、外はあいにくの大雨で。

これまたあいにくあたしは傘を持っていなくて。


仕方ないからコンビニの入口から左の方へスライド移動して、お客さんには迷惑のかからない庇の所で、雨宿りをすることにした。


こんなことなら、なけなしの500円で漫画買うんじゃなくて、ビニール傘買って出てくれば良かった。


たったいま購入したばかりの、レジ袋に入る漫画を恨めしげに見つめた。


と、その時だった。


「あー、もう、最悪…っ」


あたしの隣に逃げ込んで来た女の人は、髪も服もびっしょびしょ。


突然降られた雨で、この人も傘持ってなかったんだろうな。

哀れみの目でその人を見ると、よく見たら見覚えのある容姿。


「あれ?玲奈先輩…?」

「え?あれ!?珠理奈!?」


いきなり声をかけられて、警戒心丸出しの玲奈先輩。

それでも、声をかけてきた主があたしだと分かると、目を瞬かせたあと、「びっくりしたぁ」って言って笑顔になった。


玲奈先輩は、ここのコンビニのバイトで知り合った、5つも上の先輩。

でも、バイトし出した時期は一緒だから、敬語こそ使うものの、接し方としては友だち感覚。


「珠理奈、バイトあがり?」

「そうなんですよ。出てきたら降っててー。」

「うわー、かわいそう。」

「玲奈先輩は?きょうバイトですか?」

「ううん、近く歩いてただけ。雨降って来ちゃって困ったよ」

「傘、買ってくればいいじゃないですか」

あたしは、コンビニの中を親指で指差す。


「あいにく今お財布すっからかんでさー。さっき漫画買っちゃったから。」


そう言って、近くの本屋の袋を掲げて見せてくれた。


「あ、もしかしてそれ、きょう新刊発売の?」

「そうそう」

「偶然。あたしも同んなじの買っちゃいました。」


あたしは、コンビニのレジ袋から透ける、その漫画の表紙を見せた。


「え!珠理奈も読むんだー、これ!」

「はい。気になりますよね、続き。」

「そうー!主人公助けに来たあの人!実は悪役だったんだもんね!そこで終わっちゃってさー!本当に作者の人恨んだよね、3ヶ月間そわそわしっぱなし!!」

「……あ、ああ、そうですよね。」


急に饒舌になる玲奈先輩に少し気後れすると、そんなあたしを見兼ねた玲奈先輩がハッとする。


「あ、ご、ごめん…、喋りすぎたよね。」


しゅんとする玲奈先輩が可愛い。

普段はどちらかというと大人しめの玲奈先輩は、興味のあることとなると途端に人が変わったように喋り出す。


自身はそんな自分が嫌みたいなんだけど。

あたしはそんな玲奈先輩が好きで。

というか、どんな玲奈先輩も好きで。


レジでお会計をミスってあたふたする先輩も、

それをサラッとフォローしたら、顔を赤らめながら「ありがとう、年上なのに頼りなくてごめんね」って謝ってくる先輩も、

「珠理奈は頼もしいよね、5個も年下なんて信じられない」って無邪気に笑う先輩も。


どんな先輩も大好きなんだ。

人として、というよりは、多分そうじゃなくて。


「ふぅ…服びしょびしょだ、早く着替えたい…」


服が肌に張り付いて、そこから透けて見える肌色に、無駄にドキドキする。


「雨、早くやめばいいですね。」

「でも、それもやだな。」

「え?」

「もう少し、このままでもいいかも。」


心臓は、破裂寸前。

あたしは玲奈先輩のことを、1人の女性として好きなんだ。


「漫画の続き気になるんじゃないんですか?」

「まぁー、そうだけどさ、」

「じゃあ、なんで?」


あたしの中の、少し意地悪な気持ちが顔を覗かせれば。


「もう少し、珠理奈と一緒にいたいから。」


純粋な笑顔でそう言うんだ。


雨よ、もう少しだけやまないで。

もう少しだけ、この心地よいドキドキを味わわせてください。



~おわり~




GReeeeNの「雪の音」の、「雪よやまないで」という歌詞がビビッときて、手早く書いたじゅりれな短編!
じゅりれな書いてませんでしたからね(;^_^A
この後の展開はご想像にお任せということで!(酷
スケジュール帳に、赤い丸を記した26日。

ついにこの日がやってきた。


せっかくのデートだというのに、朝から外は雨模様。

徐々に春の陽気が訪れ始めたのも台無しや。


昼過ぎ、山田さんからバイトが終わった連絡を受けてすぐに家を出た。


わ、結構降ってるやん。

予想以上に雨足が強くてげんなりしながら、傘を開いた。


ビチャビチャと水たまりをかき分けて歩く。


そんな通りすがりのバス停に。

傘もささずに、停留所のベンチで座る人がいた。


なにしてんねんこの人…。


ちょっと不気味に思いながら、チラリと横目に通り過ぎようとした…。

んやけど。


え、待って?


あたしはその怪しい人を二度見して、目を見開いた。



「みるきー?あんた、何してんねん!」

「…さ、やか…ちゃ…っ?」


だって、そこにいたんは、ずぶ濡れのみるきーやったから。

長い髪の毛がびっしょびしょになりながら、前に垂れ下がる。

小刻みに震え、その小さな身体を自身で抱きしめていた。


ひとまずみるきーを自分の傘の中に入れて、腕時計を確認する。

山田さんとの約束の時間までそんなに余裕がなかった。


「みるきー、とりあえず傘貸すから。これで家帰り?」

「…っ」

「ちょ、泣いてんの?」

「…ぐすん…っ」


あぁ、もう、あたしはどーすればいいんじゃ!


こんな所に、みるきーを一人置いて行くのは確かに気が引けるよ?

けど、約束があんねん。

告白するか否かがかかった、割と大事な約束があんねんっ!


「みるきー、うちからタオルと着替え持ってこようか?」

「……っ、いらん…」


消え入りそうな声で呟くみるきーは、弱々しくあたしの腕を掴んだ。


「…あかちゃん…できた…」

「………は?」


こいつの言葉はいつだって爆弾発言やけど。

いやいや、今の発言は爆弾どころやないで。

どこの核弾頭持ち込んで来てん。


「みるきー、いまなんて…?」

「お腹に…赤ちゃんできた…」


みるきーは俯いたまま、自分のお腹をさする。


おいおいおい、まじかよ。


頭から血の気が引いて行くのが分かった。


「父親は?誰なん?」

「…振られた。」

「は?」

「やから、その人に話したら、振られた。」

「………!」


驚きなのか、怒りなのか、呆れなのか。

色んな感情がぐちゃぐちゃに入り混じって、呼吸をするのもやっとの状況。


誰が悪いとか、誰のせいとか、そんな犯人探しも面倒くさくて。

だからと言って、完全に赤の他人なあたしがこの場で自分の感情をそのまま露わにするのも違う気がして。


「ちょっと来い」

「ど、どこ行くん…?」


もう何が何だかわからなかったから、とりあえずみるきーをウチに連れて帰ることにした。


マンションに辿り着き、エレベーターで上にあがる。

自室の鍵を開けて、中に入る。


それまでずっと、みるきーの腕を掴んでいた。

みるきーはおとなしくしていた。


そしてリビングに入った瞬間、あたしは電気をつけるより先に、みるきーをこの胸に抱き締めた。


「こっんのどあほ!!」


あたしの怒鳴り声は部屋中に響き渡り、そしてまたシンとした。


みるきーと密着する部分から、彼女の衣服の雨水が滲み渡ってきて、徐々に冷たくなる。

一瞬鳥肌が立ったけれど、みるきーはずっとこんな状態だったのかと思うと、胸が苦しかった。


「こんなちっさい身体で一人で抱え込んで、傷ついて、あほすぎるやろ。」

あたしは、抱き締めたみるきーの頭をそっと撫でた。

すると、腕の中で収まるみるきーが、少しあたしの胸に身体を預けてきたのが分かった。


「辛かったやんな。」


こんな自業自得女に優しくする必要なんかないのに。

義理立てしたっていいことなんかないのに。


絶望の淵にいるみるきーが放っておけなくて、その絶望から救ってあげたくて。


ズボンのポケットで震える携帯のバイブを頭の片隅で感じながら、あたしはさらに強くみるきーを抱き締めた。


例えば真面目の定義が、誠実であるとか、決まりを守るとか、そういうのであるなら。

あたしは全くちゃうくて。


結局は自分に都合のいいことしか考えてへん最悪な奴やで。


みるきーの顔を覗くと、涙でぐしゃぐしゃだった。

濡れた顔を手の平で乱暴に拭ってやると、

「もうちょっと優しくしてや」

って、みるきーの笑顔が見れた。

そんな些細なことだけで、ホッとして、満たされて、それでもまだ物足りなくて。


あたしは夢中で、みるきーの唇に自分の唇を押し当てた。


「…っ!」


みるきーが、一瞬驚いた顔をしたのを、薄目に見ていた。

いつもは振り回されてばかりのあたしが、今日ばかりはしてやったと優越感に浸る。

彼女の背中に回した腕を片方は腰辺りまで下ろし、もう片方はうなじ辺りまで摩り上げる。


顔の角度を変えながら尚も唇を求めれば、みるきーはあたしの首に腕を回して、すっかり女の顔になっていた。


あぁ、やばい。

ドキドキが止まらへん。

どんだけ色っぽい顔してんねんこいつ。


角度を変えるだけじゃ物足りなくて、啄ばむようなキスに変えれば、みるきーはニヤッとして、あたしの上唇をペロッと舐めてくる。

背筋になんともいえない感覚が走る。


気づけばみるきーは、デート用に着てきた、あたしの割と高めのシャツのボタンに手を掛けていて。

その慣れた手つきに見ないふりをして、あたしもみるきーの服の裾から中に手を忍び入れた。

キャミソールの上から脇腹を撫でると、ボタンを外す手のスピードが上がるみるきー。



あたしが真面目なのは外面だけで。


なんだかんだ、衝動に任されれば一線だって越えるし。

先の約束だって平気で破るし。


結局はいつも自分が中心。


真面目なんかじゃ、全くないんや。


尚も鳴り続けるバイブがうるさくて、携帯をそこらへんに投げ捨てて。

代わりにみるきーを、ベッドの上に押し倒した。



~つづく~
休日の昼下がり。

ファミレスのソファに座り、運ばれてきた水を一口飲む。

コトンとコップをテーブルに置いて、さっきからずーっとメニューと睨めっこしているみるきーの顔をチラリと見た。


「あんた、そんなにお腹空いてるん?」

「ちゃうねん。いかにカロリーが低くて美容に良くて健康的なサラダはどれか比較検討してんねん。」

「ははは…」


そんな眉間に皺寄せてんのがいっちゃん美容に良くないと思うけどな。

どんだけこいつは美に対して貪欲やねん。

そんなにモテたいか?

そんなにたくさんの男たぶらかしたいか?


ため息が出る。


「ほらー、もう押すでー?ぱっぱと決めー」

「ちょっと待って」

「もー押してしまったからなー」

「えー!彩ちゃんのあほ!まだ決まってへんし!」

「残された時間は店員さん来るまでの時間やでー」

「ていうかもう来ちゃったし」


「お待たせいたしました」


むくれ顔をするみるきー。

けど、あたしはそんなことより、びっくりしたことがあって。

その店員さんのやけに独特な声が聞こえた瞬間、まさかとは思ったけど。


顔を上げて、目を合わせて、やっぱりそうで、開いた口が塞がらない。


「うそ…やろ…」

「さやか…ちゃん?」


あたしとみるきーの目の前に立つウエイトレスは、どこからどう見ても山田さんだった。


山田さんの視線はあたしから、対角にいるみるきーの方へと、ゆっくりと移動して行った。


「なに?だれ?彩ちゃん知り合いなん?むっちゃ可愛いやん!」

「あぁ、えっと、大学の、先輩…?ですよ、ね?」

「あ、あぁ、うん、せやな。うん。山田菜々です。」

「私、みるきーって言います!彩ちゃんの彼女をやらせてもらっています!」

「あ、そーなん…?」

「どあほ!んなわけあるかい!あー、山田さんごめんな、こいつぶっ飛んでんねん。」

「あ、ちゃうん?」


混乱する山田さん。

あたしはみるきーの口を両手で抑えてなんとか黙らせた。


「ただの高校ん時の友達です。あ、オーダーいいですか?」

「あ、う、うん、せやな。オーダーとるわ。」


「アメリカンコーヒーひとつとー、このサラダで。」

「あ、待って!そのサラダやなくて、こっちのサラダで!」


適当にサラダを注文すると、横からみるきーが入ってきて、その隣のサラダを指差した。


「かしこまりました」


山田さんは騒がしいあたしらを見て微かに笑ったあと、回れ右して行ってしまった。



はぁ。

ほらまた、こいつといるとため息が絶えへん。


「彩ちゃん、あの先輩前にするとえらいいい子になるやん。」

「は?気のせいやろ。」

「もしかして彩ちゃん、あの人のこと好きなん?」

ニヤニヤ嬉しそうなみるきー。


「………」


あたしは口を結んだ。

そんな反応が意外だったのか、みるきーは珍しく、少しだけ焦った顔をした。

「あれ?図星?」

「んー、」


暫く考えあぐねたあと、口を開いた。


「好きに、なりそうな人。その言い方が一番相応しい気がする。」

「そっか。」


みるきーがどんな顔で、その言葉を言ったのか。

俯いていたあたしにはわからなかった。



ファミレスからの帰り道。


適度な距離を保ちつつ、フラフラと歩く。

というより、あたしが勝手に歩く自宅までの帰り道に、みるきーがなんとなくついて来ているという感じ。


「なぁ、彩ちゃん。」

突然声を発したかと思えば、

「これからラブホ行かへん?」

と言われる始末。


そういう爆弾発言しかせーへんこいつは、ほんま問題児やと思う。


「行くわけあるかい」

「本当に大真面目やなぁ彩ちゃんは。少しぐらい体許してくれてもええんちゃう?」

「そう言うあんたは、とんでもなく尻軽女やな。」


吐き捨てるようにそう言った。

もちろん、その後のみるきーの顔は見られへんかった。


休日が明けた月曜日。


山田さんと被っている講義で、あたしは周りを見渡しながらそわそわしていた。

山田さん、いつ来るかな。

来たらあたしの所来るかな。

来て欲しいような、来て欲しくないような。

でもやっぱり、昨日の今日やから来て欲しくなくて。

教室に入って来たら気配を消して、どうにかやり過ごそう。

よし、そうしよう。

そう思って息を大きく吸い込んだのに。


「彩ちゃんおはよぉー」

「ってえぇ!?」


いつの間にか山田さんは教室に入って来ていて、あたしの隣の席に座っていた。


「昨日一緒にいた子、可愛い子やなぁ。ほんまに彼女やないん?」


ほーらすぐそうやって。

だから来て欲しくなかったんやろな。


「ちゃいますってば。」

「えー?そーなん?彩ちゃん、むっちゃ嬉しそうな顔してたけど。」

「んなわけあるかい。あいつと一緒やと疲れんねん。」

「でも、好きなんやろ?」

「…はい?」


そんなことを平然と聞いてくる山田さんに、少し不服やった。


「……、」


でも、その質問に、NOと答えられへん自分がもっと不服やった。


あんな尻軽女、好きやないはずなのに。

あたしのいっちゃん苦手なタイプなはずやのに。


「楽しみやなぁー、26日。」

「え?」

「あれ?約束忘れてしまったん?」

「あぁ、いや、夕方やろ?覚えてますよもちろん。」



自分の心がどこにあるのか、すごく曖昧で、おぼろげで。


すぐ隣にいるこの人とやったら、絶対幸せになれる確証があるのに。

それでも思い浮かべてしまう、あのしょーもない女のことが、恨めしくて、嫌になって、ため息が漏れそうになる。


隣で笑う山田さんに合わせて、うまく笑えてたどうかも定かではなかった。



~つづく~