- つばさものがたり (角川文庫)/角川書店(角川グループパブリッシング)
- ¥740
- Amazon.co.jp
ストレス解消法として「泣く」のが流行っているそうですね。
「今日は泣く!」と決めて号泣ものの映画を見たり、「泣ける話」の読み聞かせイベントもあるそうです。
雫井脩介さんの「つばさものがたり」も「感涙必至の家族小説!」という事ですので、そんな泣きたい人におすすめの1冊かもしれませんね。
君川小麦は亡き父の夢を継いで、故郷で母とケーキ屋を開くという目標に向かって日々修行に励んできました。
けれど26歳、夢半ばにして乳癌を発症。それも再発転移し先行きは明るいものではなくなりました。
残された時間の中で夢を実現し、母にケーキ屋を残すために小麦は病気の事を隠したまま、故郷北伊豆にケーキ屋をオープンさせます。
小麦には兄がいますが、兄代二郎と妻道恵の一人息子叶夢は少し変わった子どもでした。
友達が一人もいなくて、ひとりでぶつぶつ言いながら遊ぶような引っ込み思案の子どもで、時々どこで覚えたのかわからないような大人びた事を言います。
そんな息子に体育会系の代二郎は扱いにくさを感じ、親子関係もぎくしゃくしています。
そしていよいよオープンが決まったケーキ屋を見た叶夢は「ここは流行らないよ」と言うのでした。
案の定ケーキ屋は振るわず、行き詰ってしまいます。
さらに病気を隠したままの小麦と道恵の関係も亀裂が入り始めます。
そんな中で、天使が見えるという叶夢が友達の天使レイが受ける天使になるためのテストの応援をしたいと言い出します。
最初は信じなかった代二郎もそのトレーニングを引き受け、みんなでレイのエンジェルテストを応援していくうちに事態は少しずつ好転していきます。
小麦の病気は動かしようもない事でしたが、叶夢とレイの頑張りと成長が小麦に勇気と希望を与え、家族が一丸となってそれを支えていきます。
小麦が限られた時間の中で夢に向かってひたむきに行動していくのに触れて、周りの人たちも変化し、足並みをそろえて走り始めます。
小麦がいられたのは助走期間だったのかもしれないけれど、周りに残したものは大きかった事でしょう。
そして叶夢を通してしか存在がわからない天使のレイくんですが、彼にもどうしてもエンジェルテストに合格したい理由があったのだと思います。
おそらく、最後の時に小麦をちゃんとエスコートするために。
私事ですが、我が家にも先週天使が舞い降りました。
10年間可愛がってきたうさぎが天寿を全うし、虹の橋に旅立ってしまったのです。
ツンデレでおやつはおねだりするくせに抱っこはおろか触ることも許さん!と足踏みをして怒るような子でしたが、年をとって足腰が弱ってくると急に性格が穏やかになり、毎日陽だまりでのんびり寝ながらなでなでし放題。
同居の犬のケージに入り込んでお腹に潜り込んで眠ったり、野菜の奪い合いをしたり、可愛くてしょうがない毎日でした。
亡くなる前日もサークルから脱走して部屋中走り回ったりしていたのに、翌昼には召されてしまったのでした。
今まで動物はたくさん飼ってきましたが、最期に立ち会ったことはほとんどありませんでした。
今回は命がつぶらな瞳から消える瞬間までそばで看取ることができました。
ミントちゃん、最後に本当に仲良くしてくれてありがとう。
まだ寂しさが消えないけれど、きっとなかなか楽しかったんじゃないかな、と思っています。