再現答案
第1.設問1前段
1.本件本訴は,債務不存在確認の訴えであるが確認の利益は認められるか。これが認められない場合,訴訟要件を欠き不適法となり,却下判決が下されるため問題となる。
確認の利益は,当該訴訟において,確認判決をすることが紛争の抜本的解決に有効・必要である場合に認められる。その判断の際には,①確認対象の適切性,②方法選択の適切性,③即時確定の利益という観点を考慮すべきである。
⑴①確認対象の適切性は認められるか。
確認対象の適切性は,原則として,自己の現在の権利法律関係の積極的確認の場合に認められる。本件本訴は,債務の不存在を確認するものであるから,消極的確認であり,確認対象の適切性を欠くとも思える。
もっとも,債務不存在確認の訴えは,紛争の抜本的解決に有効であるから,確認対象の適切性は認められる。
⑵②方法選択の適切性は認められるか。
これは,他に適切な方法がない場合に認められる。本件本訴提起時において,本件本訴を提起するほかにXが採り得る適切な方法は他にない。よって方法選択の適切性は認められる。
⑶③即時確定の利益は認められるか。
これは,自己の権利・地位に危険・不安が生じている場合に認められる。本件で,人的損害の発生の有無について,XY間で争われており,それにも基づく損害賠償債務の有無が争われている。よって,Xは事故の地位に不安が生じているといえ,即時確定の利益は認められる。
⑷以上より,本件本訴は確認の利益が認められ,適法であるのが原則である。
2.もっとも,本件本訴提起後,Yによって本件事故による損害賠償請求として,500万円及び遅延損害金の支払を求める反訴(146条1項)が提起されている。これによって,本件本訴は方法選択の適切性を欠き,訴えの利益を欠くものとして,訴訟要件を欠き不適法となり,却下判決が下されないか。
本件本訴の訴訟物は,XがYに負う損害賠償債務それ自体である。これに対して,本件反訴の訴訟物は,YのXに対する損害賠償請求権である。よって,本件本訴の訴訟物と本件反訴の訴訟物は包摂関係にあるといえる。
そうだとすれば,本件反訴が提起された時点で,本件本訴は方法選択の適切性を欠くこととなり,訴えの利益を欠き,不適法となる。
3.以上より,受訴裁判所は,本訴について,訴え却下判決をするべきである。
第2.設問1後段
1.「既判力」(114条1項)とは,確定判決の判断内容に与えられる通用性ないし拘束力をいい,前訴基準時に確定した権利法律関係に関する判断と矛盾抵触する主張ないし判断を禁止する効力を有する。既判力は,「主文に包含するもの」に生じ,これは,訴訟物を意味する。また,基準時とは,事実審最終口頭弁論終結時を指す。当事者はこの時点まで,裁判資料を提出できるし,裁判所もこれを基礎に心証を形成するからである。
2.本件本訴についての判決は,訴訟要件を欠くことを理由に却下する訴訟判決である。訴訟判決の既判力は,基準時に当該訴訟要件を欠くことに既判力が生じる。よって,本件本訴についても,本件本訴事実審最終口頭弁論終結時に,訴えの利益を欠き,訴訟要件を欠くことに既判力が生じる。
第3.設問2
1.Yは,後訴で,本件事故による損害賠償請求の残部請求をしている。これは,前訴判決の既判力に反し,主張・判断が禁止される結果,棄却されるのではないか。
本件反訴で,YはXに対し,損害賠償請求権のうちの一部のみを請求することを明示して請求している。そうだとすれば,前訴判決の訴訟物は,YのXに対する損害賠償請求権のうちの500万円部分である。
これに対し,後訴の訴訟物は,YのXに対する損害賠償請求権の上記部分を除く部分である。そうだとすれば,前訴判決の既判力に矛盾抵触せず,棄却されることはない。
2.もっとも,前訴判決は,全部棄却判決である。一部請求が一部棄却若しくは全部棄却された場合,相手方は,残部については存在しないものと考えるのが通常である。なぜならば,一部請求でも債権全体について審理がなされているからである。そうだとすれば,一部請求が全部棄却された後に残部請求をすることは,特段の事情のない限り,実質的な紛争の蒸し返しとして信義則(2条)に反し却下されると解すべきである。
本件でも,前訴判決が全部棄却判決であるから,後訴は信義則に反し却下されるとも思える。
しかし,本件後訴は,前訴判決後に生じた各症状の治療費用,逸失利益等の財産的損害,精神的損害に基づく請求である。そうだとすれば,前訴判決基準時には,このような事情は存在しておらず,審理の対象とされていなかったといえる。よって,前訴で債権全体について審理されていたとはいえず,特段の事情が認められる。
よって,信義則に反し却下されることはない。
3.以上より,後訴におけるYの残部請求は,前訴判決の既判力に反し棄却されることもなく,信義則に反し却下されることもない。したがって,後訴におけるYの残部請求は認められる。
以上
雑感
再現答案は試験翌日に作成しました。再現度は高めです(SNS等は見ないようにしていたので脚色はないはずです)。
設問1の反訴が一部請求という特殊性には検討することができませんでした。また,判例に明示的に触れることもできていません。もっとも,多くの受験生も出来ていない気がするので,そこまで沈むことはないと思いたいです。
自己評価としては,C答案だと思います。