再現答案

第1.設問1

1.本件消費貸借契約(587条)を締結したのは,BとCである。CのAに対する本件消費貸借契約に基づく貸金返還請求が認められるには,本件消費貸借契約の効果がAに帰属している必要がある。

2.BはAから何の「代理」権も授与されていないから,有権代理(99条1項)は成立しない。よって,Bの契約締結行為は無権代理行為であり(113条1項),Aが追認をしない限り,Aに効果帰属することはない。そして,Aは追認をしていないため,原則として,Aに効果帰属しない。

3.もっとも,令和2年4月21日,Aは後見開始の審判を受け(7条),Bが後見人に選任されている(843条1項)。後見人は,859条1項により,被後見人の財産権に関する法律行為に行為について,包括代理権を有するから,無権代理行為の追認権(116条本文)についても,後見人が代理する。本件で,Bは,Aの資格に基づいて,上記無権代理行為を追認拒絶することはできないか。

 Bは,自ら無権代理行為を行ったものである。そして,Bは,Aの後見人に就任したことによって,自ら行った無権代理行為についてAを代理して追認拒絶することは矛盾挙動にあたる。よって,Bが追認拒絶することは,信義則(1条2項)に反し,許されないと解する。したがって,Bは追認強制されることとなり,上記無権代理行為は有効にAに帰属する。

4.以上より,CのAに対する本件消費貸借契約に基づく貸金返還請求は認められる。

第2.設問2

1.考えられる法律構成

 Dは,債権者代位権(423条1項本文)を行使し,AのEに対する詐欺取消権(96条1項)を代位行使し,無効な行為に基づく原状回復義務としての本件登記の抹消登記手続請求権を代位行使する。(①)

 Dは,詐害行為取消権(424条1項本文)として,本件売買契約を取り消し,Eに対して,財産の返還として,本件登記の抹消登記手続請求をする(424条の6第1項前段)。(②)

2.具体的検討(①)

⑴Dは「債権者」にあたるか。Dは令和4年5月1日Aに500万円を貸し付ける消費貸借契約を締結しており,Aに対する貸金返還請求権を有する。そして,契約時,弁済期を令和5年4月末日と定めており,現在は,令和5年7月10日であるため,弁済期が到来している。そのため,「期限が到来しない」とはいえない(423条2項本文)。

 また,本件貸金返還請求権は,金銭債権であるため,「強制執行により実現することのできないもの」とはいえない(423条3項)。

 よって,Dは「債権者」にあたる。

⑵Aが有する本件売買契約の詐欺取消権(「被代位権利」)は,「債務者の一身に専属する権利」でも「差押を禁じられた権利」でもない(423条1項但書)。よって,被代位権利たり得る。

⑶本件で「自己の債権を保全するため必要がある」といえるか。

 これは,債務者の責任財産が著しく害され,自己の債権を保全する必要が生じる場合に認められる。

 本件で,AE間の売買契約により,Aが有していた3000万円相当の価値を有する本件不動産が300万円の売買代金支払請求権になっている。そして,Aは,本件不動産以外にめぼしい財産がなく,甲の入居費用が払えない状態にあった。そうだとすれば,本件売買契約により,債務者であるAの責任財産が著しく害され,Dは貸金返還請求権を保全する必要が生じているといえる。

 よって,「自己の債権を保全する必要がある」といえる。

⑷以上より,Dは,債権者代位権を行使して,Aの取消権を代位行使することができる。

⑸そして,取消権を行使することで,本件売買契約は遡及に無効となる(121条)。その結果,AはEに対して,無効な行為に基づく原状回復義務としての本件登記の抹消登記手続請求をすることができる。

⑹そして,Dは上記と同様に,この請求権についても代位行使することができる。

⑺以上より,この請求は認められる。

3.具体的検討(②)

 詐害行為取消権を行使するには,「債務者が債権者を害することを知ってした行為」を対象とすることが必要となる(424条1項本文)。

 本件で,Aは,Eから騙されて本件売買契約を締結しており,その内心は,売買代金をDに対する貸金返還債務に充てようと考えていた。よって,害意が認められず,「債務者が債権者を害することを知ってした行為」とはいえない。

 以上より,この請求は認められない。

以上

雑感

 再現答案は試験翌日に作成しました。再現度は高めです(SNS等は見ないようにしていたので脚色はないはずです)。
 自己評価としては,D-E答案だと思います。