再現答案
第1.設問1
1.本件条項を含む開発協定は,法や条例に根拠を有する者ではなく,また,法33条1項及び条例の定める基準には,本件条例に関係するものは存在しない。よって,A市がBと本件協定を締結した行為は,行政行為ではなく,契約であると解すべきである。
本件協定が契約であれば,私的自治の原則が妥当し,いかなる内容の契約であろうと原則として有効である。よって,本件条項も有効であるとも思える。
2.もっとも,私的自治の原則が妥当する契約であろうとも,その内容が当事者の衡平を著しく害するものであれば,民法90条の公序良俗に反して無効となると解する。
法29条1項によると,都市契約区域内での開発行為をしようとする者はA市長の許可を得なければならない,許可制を採用している。そして,法33条1項は,同条に定める基準に適合しており,申請の手続が法に違反しているものでなければ,許可をしなければならないと定めている。これに対し,本件条項は,Bが行う廃棄物処理事業に係る開発事業については,今回の開発区域内の土地及び規模に限るものとし,今後は一切認めないと定めている。よって,本件条項は,法33条1項の要件を満たすかどうかにかかわらず,許可をしない旨を定めたものであるといえ,法33条1項の趣旨に反するものである。
また,Bが開発事業を行うことは,憲法22条1項で保障される職業の自由に含まれ,本件条項は,Bの職業の自由を制限するものでもある。
以上より,本件条項は,その内容が当時者の衡平を著しく害するものであり,民法90条の公序良俗に反するものとして,無効である。
3.以上より,本件条項は無効である以上,本件条項に法的拘束力は認められない。
第2.設問2
1.本件通知に「処分」(行訴法3条2項)性が認められるか。
「処分」とは,公権力の主体たる国または公共団体が行う行為の内(公権力性),その行為が直接国民の権利義務を形成し,またはその範囲を確定することが法律上認められているもの(法効果性)をいう。この判断には,実効的権利救済の観点も考慮する。
2.本件通知は,A市長が優越的地位に基づいて一方的にBに対して行うものであるから,公権力性は認められる。
3.A市としては,以下のように反論することが考えられる。
本件通知は,A市長がBと条例4条の協議を行わないことを通知するものであり,この通知により,Bに何らの法的効果も発生しないため,本件通知は,事実上の通知であり,法効果性は認められない。
4.これに対し,Bとしては,以下のように再反論すべきである。
本件通知により,BはA市長と条例4条の協議が行えなくなる。条例10条1号によると,A市長は,条例4条の協議をしない者に対して,必要な措置を講じるよう指導・勧告をすることができる。そして,条例11条により,上記勧告を受けた者が正当な理由なくこれに従わないときは,開発事業に係る工事の中止を命じ,又は相当な期間を定めて違反を是正するために必要な措置を講じることを命じることができる。
そして,A市長は,Bの事前協議の申出を断っており,それ以前には,Bとの間で,開発協定を締結しており,その内容は本件条項を含むものであった。本件条項は,今後のBの新たな開発事業を一切認めないというに内容であった。これらの事情から,A市長は,Bが第2処分場の開発事業より新しい第3処分場を含む開発事業を行うことを明確に拒絶する意思を有していたといえる。
そうだとすれば,仮に,Bが協議を行わず,新たな開発事業を始めると,A市長は,条例10条1号に基づき勧告をし,条例11条に基づく中止命令等を発出することがほぼ確実であるといえる。条例11条の中止命令等が発出されると,Bに対して法効果性を有することが明らかである。
よって,Bは,本件通知により,ほぼ確実に条例11条の中止命令等を受ける地位に立たされたといえ,本件通知は法効果性を有するというべきである。
また,実効的権利救済の観点からも,条例11条の中止命令等が発出されてから,当該処分を争うのでは,Bはそれまでに無用の準備支出をしなければならず,不合理である。そこで,本件通知の段階で争うことを認めるべきである。
5.以上より,本件通知は,取消訴訟の対象となる処分にあたる。
以上
雑感
再現答案は試験翌日に作成しました。再現度は高めです(SNS等は見ないようにしていたので脚色はないはずです)。
自己評価としては,B答案だと思います。