小学校1年生の頃、
同じクラスにはカトウくんというヤンチャな男の子がいた。

いや、ヤンチャなんて生易しい言葉では足りない。

ボクにとって彼は「いじめっ子」そのものだった。



カトウくんは乱暴者で、
すぐに暴力を振るい、
他人の物を盗むことで有名だった。



ボクは彼の餌食になり、
よく殴られては泣いていた。







ある日、
学校で移動教室があった。



授業が終わって教室に戻ると、
ふと違和感を覚えた。



机の中を探ると、
大切なローラー消しゴムがない。







1980年代中盤、
ローラー消しゴムが大流行していた頃のことだ。



お小遣いを何とか貯めて買ったお気に入りの品だ。

その消しゴムには、
ボクの名前が刻まれている。



胸がぎゅっと縮こまるような悔しさが込み上げた。



そして、
犯人は一人しか思いつかなかった。



カトウくんだ。







次の日、
カトウくんが席を外している隙に

彼の机を覗いた。
 

 

 

そこには、
あの真っ黄色のローラー消しゴムが

無造作に転がっていた。



勇気を振り絞って手に取ると、
消しゴムには

確かにボクの名前が刻まれていた。



心臓がバクバク鳴る中、
それをそっと自分の机へと持ち帰った。







傷だらけで真っ黒になった消しゴムを見つめながら、
涙がこぼれた。



でも、
取り返した安堵感がボクの胸を温かくした。



その後、
何日かはドキドキしながら過ごしたけれど、
カトウくんは何も言ってこなかった。







あの日のことを思い出すたびに思う。

「弱虫だったボクでも、

大切なものを奪われたら、

思いもよらない行動を取るものなんだ。」



あの日、
大切な消しゴムと一緒に、
ボクはほんの少し勇気を

手に入れたのかもしれない。