小学校1年生のボクにとって、
あの日の出来事は忘れられない。
恐怖と罪悪感、
そして自分の弱さを痛感した日だった。
学校が終わり、
友達3人で下校しているときのことだった。
カトウくんが突然現れ、
「オレも一緒に帰るから、ついてこい!」
と言った。
その言葉に逆らうことはできなかった。
カトウくんは、
通学路とは違う道へボクたちを誘導した。
ルールを破ることが怖かったけれど、
それ以上にカトウくんのことが怖かった。
たどり着いたのは、大きなオモチャ屋さんだった。
「あそこからオモチャを取ってこい」
カトウくんの命令に、
ボクは泣きながら拒んだ。
オクムラくんとニシムラくんも嫌がっていたが、
最終的に命令に従い、
お店に向かった。
しばらくして戻ってきた二人は
手ぶらだった。
それを見たカトウくんは激怒し、
二人を連れて再びお店に入っていった。
そして、
慣れた様子で万引きしたオモチャを持って戻ってきた。
カトウくんは、
万引きしたオモチャをオクムラくんとニシムラくんに渡し、
「駐車場に捨ててこい」
と命令した。
二人は号泣しながら従った。
捨てるというより、駐車場の隅に放置する形だった。
二人が泣きじゃくる姿を見て、
ボクは涙が止まった。
その瞬間、
自分より辛い思いをしている友達の姿を見て
ボクは我に返ったのだ。
それでも、
心のどこかで
「やらされたのが自分じゃなくて良かった」
と思ってしまう自分がいた。
ボクも同罪なのに。
その感情に、
後悔と恥ずかしさが押し寄せた。
あのときのボクは、
自分のことしか考えられなかった。
友達を助ける勇気も、
大人に助けを求める知恵もなかった。
ただ、恐怖に支配されるばかりだった。
大人になった今、
あのときのカトウくんの行動の背景を考えることがある。
彼自身が
何かしらの不満や孤独を抱えていたのかもしれない。
そして、
そんな子どもたちを守るべき大人が
もっと近くにいてくれたら良かったのにと思う。
あなたにも、
逆らえない相手に
従わざるを得なかった経験はありませんか?
そのときの恐怖や無力感を、
どう乗り越えましたか?
ボクは今でもあのときの自分を思い出すとき、
友達への申し訳なさと、
自分の弱さに向き合わざるを得ない。
でも、
その経験があるからこそ、
今は勇気を持って行動することの大切さを
意識している。

