ランドセルが崖から落ちていく瞬間、
シマダくんの泣き顔を見て、
ボクはただ立ち尽くしていた。
小学校1年生の頃、
親友のシマダくんと下校していると、
またあのカトウくんが現れた。
「オレもシマダの家行くわ!」
カトウくんは、
いつものように勝手に話に割り込んできて、
下校中の空気を一気に重たくした。
しかも、
刺激が足りなかったのか、
「カバン持ち」をしようと言い出した。
「じゃんけんで負けた人が全員のランドセルを持つ」
という理不尽なルール。
もちろん、
カトウくんは負けてもランドセルを持たない。
そして、
その日も暴走は止まらなかった。
じゃんけんで自分が負けたにもかかわらず、
カトウくんはシマダくんのランドセルを崖から落とし、
傷だらけにしてしまったのだ。
わざと崖下に放り投げたのだ。
シマダくんは泣いていた。
でも、
ボクは何もできなかった。
友達を守りたいのに、
勇気が出ない自分が情けなくてたまらなかった。
その後、
約束していたシマダくんの家に行くと、
玄関前でカトウくんがシマダくんのお母さんに叱られていた。
走って帰っていくカトウくんの背中を見ながら、
少し気が楽になった。
彼の暴走を止められる大人がいたことが、
どこか安心だった。
その後、
カトウくんは逃げるように引っ越していった。
ボクの小学校生活はようやく平和を取り戻した。
でも、
シマダくんのランドセルを守れなかった自分の無力感は、
今でも心に残っている。
あなたは、
大切な友達を守れなかったと思ったことがありますか?
そのとき、
どんな気持ちになりましたか?
カトウくんが去って平和が訪れたけれど、
彼との出来事は、
友達を守ることの大切さや、
自分の勇気について多くを教えてくれた。
今でも時々思う。
あの日、
もっと勇気を出していれば、
シマダくんを泣かせることはなかったかもしれない。
けれど、
その無力感を感じたからこそ、
これからは友達を守れる自分でいたいと思えるのだ。

