その日、
我が家に未来がやってきた。
真っ白なボディに、2つのコントローラー。
ファミリーコンピュータ。
ファミコンというやつだ。
まさか自分の家のテレビでゲームができる日が来るなんて、
夢の中でも想像したことがなかった。
その夢が現実になったのだ。
初めて買ったゲームは「スーパーマリオブラザーズ」。
ゲームセンターでしか触れたことのない画面が、
我が家の小さなテレビで映し出される。
その瞬間の衝撃を、
今でも鮮明に覚えている。
ボクは夢中になった。
だが、
ボクの家では、
ファミコンのプレイ時間は厳格に制限されていた。
一週間に一度、
たった30分だけ。
高橋名人の
「ゲームは一日一時間」
をさらに超える厳しさだった。
たった30分では
マリオの世界のすべてを知ることはできなかった。
それでも、
何度も同じステージを繰り返すたびに、
新しい発見があった。
隠されたブロック、
取り逃していたコイン、
敵を倒す新しい方法……。
たった30分が、
ボクの全世界を輝かせていた。
振り返ると、
ボクは子どもの頃、
いろいろなものに熱狂していた。
過去に書いたビックリマンチョコの話もそうだ。
シールを集めるためにワクワクし、
心を躍らせた。
ファミコンも同じだ。
でも、
大人になった今、
ボクはそうした「熱狂」を少し避けるようになった気がする。
熱狂が、
時に感情を暴走させ、
後悔を呼ぶ選択をしてしまうことを知っているからだ。
その一方で、
何かに熱中している人を見ると羨ましくなることがある。
彼らの生き生きとした表情を見ていると、
「自分にも、あんな風に夢中になれるものがあればもっと人生を楽しめるのかな」
と思う。
そして今回の振り返りで気づいた。
ボクの中にも、
熱狂の火種はまだ残っている。
それに気づけたのは、
少し嬉しかった。
みなさんの中にも、
きっとそんな熱狂の記憶があるのではないだろうか?

