蝶がつがいで飛んでいた。二匹の動きがシンクロすることもあった。歩くのをやめてそれを見上げていた。蝶の上には空しかない。僕が初めて喋った言葉は「ちょうちょ」だったと、ブンレツさんに聞いたことがある。

ひょっとしたら僕は交尾の邪魔をしているのではないだろうか。カメラを向けようとした手を引っ込めた。まるで出歯亀だ。歩き始めたが約束の時間に間に合わなかった。
高円寺で飲む。狭い店なのでカウンターは仕方ないが、僕はそれが苦手。乱視がそれを嫌う。外では雷が鳴り、行き交う人たちの傘が見える。止んだ頃を見計らって清算した。結局、雨に祟られず済んだ。
携帯電話を受け取りつつ、その足で駒沢公園に向かった。4人でジャンベを叩く。程なくして警官が来て音を止められた。周囲に民家がないのに殺生だ。管楽器と打楽器のセッションをしているグループやダラブッカを数人で叩いているグループもいたが、とがめられたのは僕らだけのようで辛い。
阿佐ヶ谷のボゴランマーケットへ、ジャンベの教則DVDを買いに行く。訪れるたびに思うがここは駅から遠く、行きよりも帰りのほうが近い。往復で1回ずつ一服を挟む。夜は延々そのDVDを見ていた。
酒と肴を持って駒沢公園へ。久しぶりに晴れ間が見え、暖かい日で良かった。ダンス、スポーツ、楽器、花火、若者がいろいろ興じている。今、ここにいる人たちの中で僕が最も排他的かも知らん。
3拍子の裏のリズムが、遅いテンポであれば取られるようになってきた。常日頃、頭の中でリズムを流していた甲斐があった。ジャンベの教則DVDを見ると、アフリカンは事も無げにそれをやってのけている。その域に近づきたい。

ワークショップの帰りは大体、車で送ってもらっているのだが車内に携帯電話を忘れた。しばらくそれがない生活になる。
ウトウトとして今、置かれている状態が夢と現実の間にいることを自覚する。ぼやけながらも虚構の世界を作り上げている途中。まず視覚から夢に入る。聴覚が次で、声が聞こえる。世界がはっきりした頃、触覚も認識してこれが夢だという自覚が消えた。