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現1万円札の肖像でお馴染み渋沢栄一の名著。古代中国の「論語」に学び、商売においての心構えとして道徳心を持つことを追求している。元侍ジャパン・日本ハム監督の栗山英樹氏の愛読書で、日本ハム時代は新入団選手にこの本を贈っていたそうだ。かの大谷翔平も新人選手に読むのを勧めたい書籍の1つに挙げている。
「論語」は己を律する教えであり、人はかくあれ、かくありたい、と消極的に人道を説くものである、と渋沢は説明している。己の力で鍛錬し、よき人格を育んでいくことが大切である。
ここからは印象的なフレーズをいくつか取り上げていきたい。
①無欲は怠慢の基である
夢を持つことが成長への原動力に繋がる。私事で恐縮だが「英語を使った仕事をして海外の方々とリンクしたい」という想いで豪州でワーホリをしている。苦労も絶えないが少しずつ使えるフレーズが増えてきた。このまま「かくありたい」という夢を持って成長を続けていきたい。また「口は禍福の門なり」 という言葉も登場する。災禍のみならず幸福ももたらすので、今後自信がある内容や目標は口に出していこうと思う。
②大立志と小立志
大きな目標の中に小さな目標を持ち、例えば大きな目標では「ビジネスで英語を使用する」小さな目標では「TOEIC800点越えを目指す」「IELTS7.0を目指す」など、同じ方向を向いた大小の目標が立てられるとよい。「事を急激に決せず、慎重の態度をもって、よく思い深く考えるならば、自ずから心眼の開くものもありて、遂に自己本心の住家に立ち帰ることができる。」自分の進むべき道を常に慎重に考え抜き、いつでも帰れる「大立志」を立てたい。
15にして学に志し(志学)
30にして立ち(立志)
40にして窓わず(不惑)
50にして天命を知る
渋沢翁は40年間実業界で身を立てると決心して40年間、意志がゆらぎかねない時もあったが踏みとどまってきた。自分の場合は豪州にあるいは英国等英語圏に2年は居たいと思っている。そこまでしないとビハインドは引っくり返せない。30までに己の突き進む道をクリアにしておきたい。
ただ、渋沢翁は同時に「欧米心酔の夢を見て自国軽蔑の不見識」はよろしくないと説いた。「これだから日本は」という痛い人間にはならない。豪州に住むことで日本の優れている点がはっきりと見えてきた。日本ならではの強みを理解し、海外の方々との話題や交渉に役立てていきたい。
③耳が痛い話
たとえ志がよくても所作が鈍ずれば誰も話を聞いてくれない。志がひん曲がっていても所作が美しければ人は言うことを聞いてしまう、という厳しいニュアンスの一節がある。
だが、話を聞いてくれない人間を避けるためのコツも、別の章で渋沢翁は言及している。「強固な意志」の上に「聡明なる智恵」を持ち、「情愛」によって調節する。つまり「立派な目標」とそれを達成するのに必要な「知識」、それをやり遂げるための「情熱」。これらをバランスよく発展させ人に頼られる人間になりたい。
「徳を修め、智を啓き、世に有益なる貢献を成し得るに至って、初めて真人と成り得る」のだ。
④情熱と「学」
「何事でも自己の掌る事に深い趣味を持って尽くしさえすれば、自分の思う通りに全てが行かぬまでも、心から生ずる理想、もしくは欲望のある一部に適合し得らるるものと思う。」自分の趣味くらいの情熱をもって物事を成せば、理想に近づける。
また、「日々に新しいことを知り、月々に復習を怠らないようにするのであれば、学を好むということが出来る」という一節もある。毎日刺激的な学びを重ね、それを忘れないように振り返る機会を設けるよう心掛けていきたい。
⑤最後に渋沢翁の一番の金言で締めくくる。
成功や失敗のごときは、
ただ丹精した人の身に残る
糟粕のようなものである。
「とにかく人は誠実に努力して自ら運命を開拓すればいい。もしそれで失敗したら自己の智力が及ばなかったと諦め(中略)、敗れても飽きるまで勉強すればいつかは再び好運に再会する時が来る。」
自分の最大限の準備をして臨み、結果から何を得て次に繋げるか。これを繰り返して今日も生きる。