弁護士の中谷です。

今回は,事故を起こしてしまったときに負う可能性のある法的責任についての記事を書きます。

 

交通事故を起こしてしまった場合,法的には①刑事責任,②行政上の責任,③民事責任を負う可能性があります。

順に説明していきます。

 

まずは,①刑事責任です。

刑事責任は,国と人との関係です。

事故を起こしてしまった場合,警察官,あるいは検察官が捜査を行います。この捜査に基づいて,検察官が処分を決めることとなります。

検察官が起訴,すなわち事故を起こしてしまった方を裁判にかける,という処分を選択した場合,裁判所において,刑事責任を負うか,負うとしてどの程度の刑かが決められます。これが刑事責任です。

 

次に,②行政上の責任です。

行政上の責任も国(地方公共団体)と人との関係です。

運転免許証は各都道府県の公安委員会が発行しています。

運転免許は点数制度が採用されており,事故を起こすと(他の交通違反同様)点数に影響があります。

これは,行政(としての警察)が行うものであり,運転免許の効力等の問題とつながります。これが行政上の責任です。

細かい話になりますが,①刑事責任で出てくる警察の活動は「司法警察活動」と呼ばれる活動で,主としてすでに起こっている犯罪の捜査を念頭に置かれています。一方,②行政上の責任で出てくる警察の活動は「行政警察活動」と呼ばれる活動で,未だ発生していない犯罪の発生防止の観点から行われているものです。行為主体が「警察」で混乱しやすいところですが,「警察が出てくる=犯罪行為が行われた」という図式は誤りである,という典型例ですので,その意味ではあまり心配しすぎる必要はないと思います。

 

最後に,③民事責任です。

民事責任は,人と人との関係です。具体的には,事故を起こしてしまった相手から賠償を求められる,ということを内容とします。

この場合,ご自身が任意保険に加入されていれば,任意保険会社の担当者が対応をしてくれます。

そして,賠償金についても保険会社が払うのが通常です。

ただ,任意保険に加入していない場合,あるいは自転車事故などで自動車保険が使えない場合にはご自身で対応,賠償金支払いをしなければならなくなる恐れがあります。自転車事故であっても傷害(けが)の内容によっては莫大な損害額になることが考えられますので,保険には入っておきたいものです。

 

まとめると,事故を起こしてしまった場合,想定されるのは警察対応(①及び②)と保険会社対応(③)ということになります。そのために,保険加入と事故直後の対応はしっかりしておきたいところです。

 

今回は,事故を起こしてしまった方の視点からの記事でした。

次回は,これを事故を起こされてしまった方の視点から記事にしたいと思います。