芥川也寸志著『音楽の基礎』(岩波新書)から
(注:あくまで個人の感想認識メモです。すべての内容に責任は持ちません。興味を持たれた方は本書を直接ご確認ください。)
I. 音楽の素材
1. 静寂
音楽が存在するためにはある程度の静かな環境が必要となる。
音楽の中における無音(休止)は、ある場合には、最強音にもまさる強烈な効果を発揮する。
音楽の鑑賞にとって決定的に重要な時間は、演奏が終わった瞬間、最初の静寂が訪れた時であり、音楽作品の価値は静寂にゆだねられる。
作曲家が旋律を書いた後に気に入らずに消し去る行為は、自らが静寂の方が美しいと認めた結果である。
音楽の創造とは、静寂の美と対決し、音を素材とする新たな美を目指すことの中にある。
静寂は音楽の基礎である。
2. 音
音楽の素材としての音は、人間が聴きとれる範囲のすべての音。ただし積極的に楽器や人声以外の音を素材とする考えが普遍的になったのは第二次世界大戦以後。
音の4つの属性(特定の音を規定する)
(1) 高さ
最低は16~20ヘルツ(サイクル/秒)、最高は2万ヘルツまでの範囲(年齢や民族によっても異なる)。オーケストラでは、コントラファゴットの最低音Bフラットが29ヘルツ、ピッコロの最高音が4186ヘルツ。普通に聴く音楽の範囲はこれくらい。音の高さを認識する能力は、訓練によって得られるものではなさそう(先天的)。同じ高さの音でも、男女の声、楽器の種類などにより、音高が異なる印象がある。これが音楽における表現の上できわめて大きな意味を持つ。
(2) 長さ
属性の一つとして考えられるようになったのは比較的新しい。楽器や人声など限度がある音の長さからは考えられなかった持続可能な人工音があらわれ、長さ(時間)も係数として組み込まれている。(過去の音楽理論書の多くは書き落としている)
(3) 強さ
音波のふり幅。人が耐えうる最大は130デシベルとされている。オーケストラの最大限の強奏は110デシベル。音の高さによって強弱の感じ方が変わる。1000ヘルツを境に低いものほど強く、高いものは弱く感じる。音の長さも影響し、短い音の方が弱く感じる。オーケストラでは短く、鋭く、大きな音を要求する楽案は、指揮者も奏者も正しい配慮が必要。「短い」ことと「大きい」ことは両立しない。視覚も音の強さに影響する実験がある(目で音源を見ながら聴くと実際よりも強く感じる)。音楽における音の強さは、音響上の数値ではなく、印象である。
(4) 音色
簡単に表す単位がない。複雑、多数の要素と関連し合って規定される。他の属性とも影響し合う。音響学の進歩により、解明されてきている。基音にたいして、その振動数の整数倍の倍音(上音)を含めて、部分音と呼ぶ。部分音のそれぞれの強さによって音色が形成される。影響の強い部分音を形成音と呼ぶ。低次の部分音が強い(豊かで幅のある音色:ホルン)、高次の部分音がより強い(固く鋭い音色:オーボエ)、奇数番の部分音が強い(少しうつろな感じの音色:クラリネット)など。基音のみからなる音色(純音)が存在するが、一般的には実用に向かない。人の音色認識は、音の鳴り始めや音高の変わり目によることが知られている。音楽の歴史は、ある意味、音色の歴史であり、新たな音色の追求が新たな演奏技術や楽器の開発を通して、表現世界の創造につながっている。バイオリンのトレモロとピチカートはモンテヴェルディが1624年に採用し、ひたすら懇願し、説明を繰り返して、ようやく演奏されたらしい。シェーンベルク(1874-1951)は、音の高さによる旋律に対抗して、音色旋律の思想を生んだ。
(次の音楽の勉強は【音楽の原則】に入り、記譜法の予定)

