僕の樹には誰もいない/松村雄策 | アナログオーディオと音楽★NetThePopブログ

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ヤフブロ移民組

もう何度もあちこちで書いてきたことかも知れないが、1960年生まれの私にとっては、ビートルズはリアルタイムではない。彼らの最盛期は、私の幼少期であるからして。それでも10代になってラジオで洋楽を聞くようになった頃は、まだビートルズの残り香があった時代だった。そして、私は知らず知らずのうちに彼らにのめり込み、様々な流行りの洋楽にのめり込んで行って今日に至る。

「ロッキング・オン」という雑誌に出会った時に、それまでに読んでいた「ミュージック・ライフ」とは全く別次元のロックの聞き方を知った。今、思い返すと、創刊当時のロッキング・オンは良い意味で形にとらわれないハチャメチャさが満載だった。体裁も素人全としていて、時には印刷した字が判読不可のページがあったりした。編集のプロではない連中が寄り集まって作られた雑誌で、当時は同人誌かミニコミ誌のように扱われていたが、そこに何かしら熱いものが溢れていた。

その中で私が最も共感した執筆者は松村さんだった。リアルタイムでビートルズに夢中になった人が書く文章には嘘はなかった。私が物書きの真似事を始めた頃、彼の書き方に大いに影響を受けたりもした。

 

松村さんの新刊が発売された。

本を買って来て後書きから読むことはほとんどない。しかし、この本は後書きから読んでしまった。この本を企画・編集した米田郷之さんがそのプロセスと思いを綴っている。

先月のロッキング・オンのレビュー記事で、この本が発売されることを知った時、例えば、小説すばるに連載していた「ハウリングの声が聞こえる」などの未単行本化されていない文章がセレクトされるのかと勝手に思っていた。しかし、収録されているのは、ロッキング・オンに掲載されていた文章である。この本がロッキング・オン社からではなく河出書房新社から出た事が不思議なのだが、その辺の経緯は米田さんが、松村さんの生前に10冊目の単行本の企画を依頼され、その約束を果たす中で紆余曲折しながら編集した結果だということである。

 

これから本編を読もうと思う。文中に出て来る楽曲を聞きながら読むことになるので、読了するのに時間がかかると思われるが…。

 

僕の樹には誰もいない/松村雄策著

河出書房新社 税込み2,200円 2022年10月26日発売