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読んでみたいと思っていた本の1つがこの作家、この作品です。
そうです。
池波正太郎の「鬼平犯科帳」。
機会があって、やっと読むことができました。
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今回読んだのは少し古いデザインの文春文庫のものでした。
「鬼平犯科帳」、短編集です。
江戸を中心にうごめく盗賊たちを懲(こ)らしめる捕物帳です。
捕物帳としてというよりも、鬼平(長谷川平蔵)の人としてのどしっとした存在感とぶれない考え方が、本当に安心してすがれる気にさせてくれる、人情ドラマです。
江戸の放火や窃盗団や賭博を取り締まる火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)の長である鬼平には妻もいます。
それでも、昔の色恋沙汰が出てきたりしますが、それでもどっしり構えています。
その愛人が、見かねる姿に変わり果てても、昔とは立場が違ったなりの対応をするわけですが、そんな折々に見せる、どこか哀愁漂う人間臭さが現実的で、これまたたまらなく引きつけられるわけです。
物語はどれをとっても悲哀に満ち、人として生きている以上何とも言えない哀愁と傷を背負っていくのだと、痛感せずにいられません。
なら、そんな傷すら背負わない恋を貫けばいいのではとも思うわけですが、そんな恋に出会える人がどれだけいるのかと思うと、また哀しくなるわけで、人生ってなんて儚い(はかない)のだろうと思わざるを得ないわけで、ここまで生きてきた以上、これからは胸を張って好きな人を守りながら、ぶれない人生を送れたらいいのかと言い聞かせてみたりしたくなるのが、「鬼平犯科帳」だったりします。
捕物帳にとどまらない、人間模様を教えてくれる人生指南書として、若いうちに読んでみてもいいかもしれません。
この良さがわかるのは、少し哀しみを背負ってからかもしれませんが、ぜひ、一度触れてみてください。
鬼平犯科帳〈1〉 (文春文庫)
池波 正太郎
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