素敵な本を見つけた:鬼平犯科帳/池波正太郎が奏でる人情の機微に触れるもろさとは | 編集者福田清峰の八ヶ岳南麓田舎暮らし 天使のように大胆に悪魔のように繊細に 八美里ファームと実践出版塾と

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八ヶ岳南麓で田舎暮らし。「森の中に暮らす生活」を楽しむ「八美里ファーム」におけるDIY、八ヶ岳周辺の大人の散歩道、主宰している八ヶ岳自然教室のことなどもを紹介。「5年愛される本づくり、そして10年愛される本づくりへ」をモットーに書籍を編んでいます。

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読んでみたいと思っていた本の1つがこの作家、この作品です。
そうです。
池波正太郎の「鬼平犯科帳」。
機会があって、やっと読むことができました。




今回読んだのは少し古いデザインの文春文庫のものでした。

鬼平犯科帳」、短編集です。
江戸を中心にうごめく盗賊たちを懲(こ)らしめる捕物帳です。

捕物帳としてというよりも、鬼平(長谷川平蔵)の人としてのどしっとした存在感とぶれない考え方が、本当に安心してすがれる気にさせてくれる、人情ドラマです。

江戸の放火や窃盗団や賭博を取り締まる火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)の長である鬼平には妻もいます。
それでも、昔の色恋沙汰が出てきたりしますが、それでもどっしり構えています。
その愛人が、見かねる姿に変わり果てても、昔とは立場が違ったなりの対応をするわけですが、そんな折々に見せる、どこか哀愁漂う人間臭さが現実的で、これまたたまらなく引きつけられるわけです。


物語はどれをとっても悲哀に満ち、人として生きている以上何とも言えない哀愁と傷を背負っていくのだと、痛感せずにいられません。

なら、そんな傷すら背負わない恋を貫けばいいのではとも思うわけですが、そんな恋に出会える人がどれだけいるのかと思うと、また哀しくなるわけで、人生ってなんて儚い(はかない)のだろうと思わざるを得ないわけで、ここまで生きてきた以上、これからは胸を張って好きな人を守りながら、ぶれない人生を送れたらいいのかと言い聞かせてみたりしたくなるのが、「鬼平犯科帳」だったりします。

捕物帳にとどまらない、人間模様を教えてくれる人生指南書として、若いうちに読んでみてもいいかもしれません。
この良さがわかるのは、少し哀しみを背負ってからかもしれませんが、ぜひ、一度触れてみてください。




鬼平犯科帳〈1〉 (文春文庫)
池波 正太郎
4167142538