![]()
ポチっとよろしくお願いします。
マリー・アントワネットから4年、ベネチア国際映画祭金獅子賞受賞作品「SOMEWHERE」を引っさげて、ソフィア・コッポラが戻ってきました。

ソフィア・コッポラ
アラフォー、アラフィフ世代の男性諸氏には痛いくらいに突き刺さる、秀作です。
幾ばくかの名声のおかげで、俳優としてセレブな生活を送れる主人公ジョニー・マルコ。
演じているのはスティーヴン・ドーフです。
いいです。
演技も、少し疲れた感じも哀愁があるし、結構いい男だし、何もかもがいいです。

(左)ジョニー・マルコ、(右)エル・ファニング
そして、ママと住んでいたけれど、ママがどこかへ行ってしまい、パパの元へやってくる娘役クレオをエル・ファニングが演じています。
こんな娘がいたら、いつまでも遊んでいたくなるくらいものすごくキュートです。
ジョニーはフェラリーに乗り、ハリウッドの伝説のホテル“シャトー・マーモント”に住み、昼間はポールダンスのセクシーなダンサーをデリバリーし、夜も自分の部屋で乱痴気騒ぎをして、お目当ての娘を寝室にお持ち込みする体たらくな生活を満喫しています。
ある意味、お金に不自由することなく、女性にもモテて、いい車にも乗れて…
男の憧れのような生活を送っているわけですが、前妻がどこかへ行ってしまったために娘との生活がはじまります。
それは限られた時間なのか、永遠なのか、それすらもわからないあやふやな時間。
家族と過ごす時間なんて、普通に考えたら当たり前のことです。
でも、それを忘れていた男にとって、それはあまりに甘美で切ない時間です。
そして、11歳の娘にとって、楽しくやさしくもはかなく、かけがえのない時間です。
わずかな時間かもしれないけれど、クレオとテレビゲームをしたり、

ロビーでカードゲームを楽しんだり(実は、この間に、クレオにばれないように部屋に勝手に入っていた裸の女友達を帰らせていたり…)

プールで潜ったり、日光浴をしたり、

幸せな時間をすごします。

そして、主演映画の表彰式にイタリアへクレオを同伴していきます。
用意されていた高級ホテルのスイートルームには部屋の中にプールまであります。
そのプールでクレオと遊んだり、夜更かししながらも、クレオが寝付けば、女友達を連れ込む有様(ありさま)です。
クレオが学校のサマーキャンプに参加するタイミングで、いったんクレオとの生活が終わりを告げます。
そのときクレオが口にした台詞…
「ママはいつ戻るんだろう? パパは忙しいし…」
泣きじゃくるクレオを抱き寄せるジョニー。
そして、別れ際にやっと口にしたのが、「そばにいなくてごめん」という言葉。

日常に慣れていない男が娘とすごした時間によって、自分が抱えた孤独と虚無感の大きさを突きつけられたのでしょう。
ホテルに1人戻ったジョニーは、前妻に電話しますが、冷たくシャットアウトされてしまいます。
孤独と虚無感のピークに達したとき、ジョニーは住み慣れたホテルをチェックアウトして、ファラリーで行く当てもなく走り出します。
新しい幸せを見つけるために、新しい何かを築くことができるであろう場所を求めて、今とは違うどこか、それが「SOMEWHERE」ということなのです。
その何かは、自分自身かもしれません。
家庭なのかもしれません。
ジョニーが自分の居場所があるところを求めて、スタート地点に立つところで映画は終わります。
ソフィア・コッポラ監督は、エンディングについて次のように語っています。
「私は最後に希望を見せて終わる映画が好き。彼はきっと、新しい家庭を築くことができる」
普通に考えるなら、40をすぎると、子どもも妻もみんなひとりで生きていくことができるようになっていて、夫は自分の居場所が家の中にないことを知り、そして、存在の耐えられない軽さに居ても立っても居られなくなるものです。
そこから、夫は心の旅に出るのです。
ふと、自分のこれからの老後と家族の在り方何ぞを考えたとき、骨の髄から震えるほどの虚無感と、絶望にも似たある種のいらだちを味わうのです。
ときすでに遅し、タイミングのずれた歯車はもとに戻るわけもなく、歯がゆく、いらだち、悲しみ、後悔を上乗せしながら、自らを襲ってくるものです。
この想い、実にうまく描いていると思います。
一つひとつのコマ割りが長く、その分、苦しいほどに画面が切り替わりません。
いつ胸がきしみはじめてもおかしくないくらい、画面のなかに幸せと表裏一体で焦燥感が存在しています。
ここまでの作品を描けたのには、この映画がコッポラーファミリーでつくられていることにあります。
製作総指揮に父フランシス・フォード・コッポラ、製作に兄ローマン・コッポラ、音楽をフランスのバンドフェニックスが担当しています。
ちなみに、フェニックスのボーカルのトーマス・マーズはプライベートのパートナーです。
さらに、舞台となっているホテル、シャトー・マーモントはソフィア・コッポラが父とすごしたホテルでもあり、作品中に出てくるイタリアの授賞式には父と参加して、部屋に専用のプールがあるあの部屋に父と泊まったことがあるということです。
こういった家族の絆を至る所に散りばめていることで、穏やかな時間が作品中に流れたのかもしれません。
ガーリー・ファッションへ多大な影響力を持つソフィア・コッポラが、今回の作品のファッションスタイルで目指したものが、写真家ブルース・ウェバーの写真やガズ・ヴァン・サンド監督の「マイ・プライベート・アイダホ」でした。
まーなんとセンスのいいこと。
ジョニー・マルコとクレオの父娘関係が映画の中で、本当の親子のように演じられています。
これにも秘密があって、ソフィア・コッポラが、スティーヴン・ドーフとエル・ファニングを撮影開始前にプライベートでたくさん一緒にすごす時間を提案したそうです。
お見事です。
もうひとつ、ホテル、シャトー・マーモント、実はこれほど長時間スクリーンに登場するのははじめてだそうです。
それも、ソフィア・コッポラがオーナーに直接交渉して、3週間5階のフロアを借り切ることができたからだそうです。
そして、ホテル、シャトー・マーモントといえば、2004年に駐車場で激突死した、写真界の巨星、ヘルムート・ニュートンを思い出します。
この映画の中でも、いたるところに尖った美人モデルが脇を通りすぎていきます。
このあたり、ニュートンがこよなく愛したモデルたちに似ているかもしれません。
ソフィア・コッポラのニュートンへのちょっとした気遣いかも知れません。
「SOMEWHERE」、父と娘の時間をテーマにここまで描いた秀作、素敵です。
父と娘を映画いた秀作といえば、知的障害の父が娘を取り返す切ない物語「I am Sam 」です。
サム役のショーン・ペン、そして娘のルーシー役のダコタ・ファニング、ともに泣けました。
激しく揺さぶられた心が痛くて痛くて…でも心の底から流した涙が気持ちよかった記憶があります。
大好きな映画です。
実は、ルーシーの幼い頃をエル・ファニングが演じているのです。
エル・ファニングの実姉がダコタ・ファニングというわけです。
ファニング姉妹、父娘の関係を演じさせたら右に出るものはいないかもしれませんね。
I am Sam : アイ・アム・サム [DVD]
ジェシー・ネルソン
ロスト・イン・トランスレーション [DVD]
ソフィア・コッポラ
マリー・アントワネット (通常版) [DVD]
ソフィア・コッポラ
Gentle Giants: A Book of Newfoundlands
Bruce Weber
RIO DE JANEIRO: 221 PHO
Bruce Weber
マイ・プライベート・アイダホ [DVD]