掌上の郡上釣具     第3話 | 長良川と郡上竿の世界

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第3話 「ミニチュアの郡上魚籠作りへの挑戦」

何年もずっと温めてきたミニチュア魚籠作りの構想も、なかなか踏ん切りがつかないままだったが、昨年、あることが切っ掛けで動き出した。

その日、出張で寄った静岡の新富士駅構内で色鮮やかな何かを売る店に偶然足を止めた。

店員さんに聞くと、米袋の口を結ぶ丈夫な紙のテープから派生した工作用の「クラフトバンド」という物で、これでカゴなどを編むらしい。

色も100種類以上あるとのこと。

更によく聞くと、自由な幅に割いて編んだりできるというのだ。

それを見てピン!とひらめいた。

これで魚籠を編めないかだろうか?

早速、竹に近い色を選んでいくつか買って帰った。

そこから、この「クラフトバンド」との長い格闘が始まった。

このような場合、私はネット検索などで事前情報を得ることをしない。

発見する楽しさが半減するから、イメージだけを頼りに試行錯誤しながら手を動かす。

そう、右脳に動かされるのである。

だから、このクラフトバンドの特性については、手当たり次第にやってみて学習した。

割き方、編み方などなど。

やってみると、思ったより竹に似た使い方ができるのが発見だった。

それから、いよいよ郡上魚籠作りに挑戦した。

郡上魚籠の編み方については、実物がたくさん身近にあるし、編み方は魚籠職人の益田君を見てだいたい知っているつもりでいた。

しかし始めてみると、そんな簡単なものではないことを思い知らされた。

ある程度の形にはなるのだが、小さいからこその細部の造作が難しい。

それ以上に、なまじっか郡上魚籠を知りすぎているから、どうしても自分であら探しをしてしまい納得がいかないのだ。

壁にぶち当たると実物の魚籠を観察し、何度も何度も作り直した。

50個以上は失敗しただろうか。

やっとある程度納得できる形になると、そこからまたいつもの病気が始まった…

どの職人の魚籠か明確に再現しないと納得がいかなくなったのだ。

だから、改めて各職人の魚籠を分解して、それぞれの編み方の違いも可能な限り再現した。

また、表面の質感や色も竹に近づける処理をし、小さな腰板を作り、ミニチュアサイズに合う真田紐も探し、口網も自分で編んでとりつけた。

下記はミニチュアのタモと餌箱と一緒に川岸で撮った画像だが、よく見ないとミニチュアとは気づかないかもしれない。

やっと最近、他人様にも見せられるようなモノになった気がするので、次回はそのミニチュア郡上魚籠をもう少し詳しく紹介したい。