Road to 10.2 episode 0 | 長嶋茂雄の現役時代を知らない君たちへ〜 500のメッセージ〜(俺も知らない)
2014.10.2
社会に出たばかりだった俺は、突然のオリックスの快進撃に、喜んだり、戸惑ったりしていた。9月に入りオリックスもソフトバンクも勝ちきれない状態が続き、優勝の行方は10.2直接対決にもつれ込んだ。
1対1の同点で迎えた10回裏、ワンナウト満塁のピンチで比嘉幹貴がマウンドに上がる。
この年の比嘉は神がかっていた。どんなピンチの場面でも比嘉が投げれば大丈夫、そのくらいピンチの場面に強かった。
しかし松田宣浩の打球は左中間を切り裂いた。
画面越しに崩れ落ちた俺。
なんでだ。
なんでオリックスは大事な試合で勝てないんだ。
その日は午前2時くらいまで酒飲みながら電話で嘆き続けた。

この試合の勝者と敗者の明暗はくっきりと別れた。
ソフトバンクはこの年そのまま日本一となり、翌年も日本一。16年は大谷率いる日ハムに阻まれたものの、その後17〜20年まで4年連続日本一という球史に残る黄金時代を築いた。
対照的にオリックスは翌年、前年の快進撃が幻だったかのようにシーズン序盤からつまずき、夏を迎える前に森脇監督が事実上の解任となりこの年5位。16年以降も優勝争い等夢のまた夢、毎年Bクラスとなり、19〜20年には2年連続の最下位に。

14年に優勝出来なかったという事実は確かに悔しかった。しかしまだあの頃は「来年やり返せばいい!」という希望もあった。
しかし、年が経てば経つほどに逃した魚の大きさが物凄いものだったことを思い知らされた。
あの時勝てていれば、あの時優勝を経験していれば、オリックスはもっと粘り強く骨のあるなチームになっていたんじゃないか...悔しさは雪だるま式に年々膨れ上がっていった。

西なんとか監督の時代、オリックス戦を観ている俺は感情を失いかけていた。

このチームは何のために戦っているのだろう?
毎度繰り広げられる惨劇。
山本由伸や山岡泰輔、吉田正尚のようなニュースターが出てきても、このオリックスという泥沼にいつか飲み込まれてしまうのではないか...と不安に打ちひしがれていたりもした。

俺自身が泥沼の中に吸収されかけていたそんな時だった、中嶋聡が監督に就任したのは。

2020年後半
中嶋聡は日本一賑やかなコーチ辻竜太郎らと共に、泥沼のヘドロを掻き出し始めた。
そして2021年
地ならしをした地面の上に、今まで積み上げようとしても絶対に積み上がらず崩れ落ちるだけだったオリックス選手の経験値という積み木を中嶋聡は奇跡のバランスで積み上げ始めた。
そして2021年秋
急成長を遂げたチームは最後の最後で頂点に辿り着いた。
1.2番コンビ福宗の結成、ラオウ杉本の大覚醒、T岡田のクラッチヒッター化、高卒2年目の攻撃的遊撃手紅林の躍動、同じく高卒2年目にして熟練の投球を魅せる宮城の衝撃、伏見の捕手定着、常識破りの3連投しない中継ぎ陣、アメリカから帰ってきてくれた平野の安定等等、
1年で多くの選手が覚醒し、その勢いで、ロッテ楽天との三つ巴を制した。
不安だったCSでもロッテをスイープし、日本一は逃したものの伝説の日本シリーズとなった。
2021年のオリックスを満喫した俺は、「来年以降も優勝して欲しい。だけれども今年以上のストーリーは無いよな。でもまあ、それはそういうものだ」と思っていた。


2022年
オリックスファンのトラウマ製造機である開幕戦を、大エース山本由伸の快投で勝利した。
これでもう弱かったこれまでのトラウマは全部払拭できた、そう思っていた。

10.2の悲しみは昨年の優勝で乗り越えた。
そう思っていた。

だけれども野球の神様は、
「いやいや、それとこれとは別だろ。10.2の悲しみは10.2でしか乗り越えられねえから。ほら、用意しといたぞ。本当に強くなったなら超えてみろ」って感じで我々にぶつけてきた。

2021年を超える衝撃のラストが待っていた。