精神科の外来では、発達障害が見逃されていたとか気づかれなかったという医師や心理士に騙された人達が次々にやってきます。普通に大きくなってから現れた精神症状の相談にやってきて、ある程度説明した後に、発達障害ではないですか?と家族や本人がきいてきます。別に小さい頃の問題を中心に話したわけでもないのに、多くの人がネットに流れるでたらめ情報にふりまわされています。
もちろん、この人達は認知機能や社会機能といった言葉も知りません。そんなでたらめ情報を流している人達は認知機能障害のことを発達障害と思い込んでいるような人達ですから、ただひたすらに自閉症が見逃されていた、ADHDが見逃されていた、発達障害のことをわかっていない精神科医が見逃しているなどと嘘を流すだけで、医学的な説明なんてできません。世間の人々も発達障害という言葉にだけに慣れてしまっていますが、精神科の治療や支援において最も重要な認知機能や社会機能などについては全く理解が広まっていません。
こういう人達は“見逃されていた”とか“気付かれなかった”とか“程度が軽くて目立たなかった”とか訳のわからない言い訳をすれば全て許されると思っています。目立たず親も先生も誰もが正常だと思っていた自閉症とはなんのことでしょう?誰もが多動不注意の障害と気づかないくらいに落ち着いていたADHDとはなんのことでしょう?
こういう人達は、自分は生まれつきの障害に気づいてあげた良い人という思い込みに陶酔しています。自分達は気づける人という根拠のない自信に満ち溢れていますが、具体的に矛盾を指摘されることを恐れていますから、徹底的に小さい頃の話を避けます。
小さい頃の話を具体的にするにもまともな根拠がありませんし、詳しく聞かれるとまともに答える自信もありませんから、誤魔化すしかないのです。診断基準は全くあてはまらないので、“気づかれなかった”ということにして堂々と診断基準を破るのです。
統合失調症、統合失調感情障害、双極性障害、うつ病、その他、精神疾患の診断基準にあてはまってしまうのもわかっているので、そういう診断にあれはまらないように診断基準にあてはまるような症状やエピソードは病歴から消してなかったことにしてしまいます。彼らは、自分達は”気付かれなかった”ものを気づいてあげて良いことをしているのだから許されると思っているのです。
友人が何人もいたことも、部活を続けていたことも、明るい性格だったことも、社交的であったことも、目立たないくらいにおとなしかったことも、クラス代表や委員長や部長をしていたことも、いつも友達と外で遊んでいたことも、ありとあらゆる矛盾をなかったことにして隠します。彼らはなんの罪悪感もなしに毎日そんなことを続けています。
精神医学で膨大な研究から積み上げてきた知見も、明らかに矛盾してしまうのでみなかったこと、知らなかったことにしてしまいます。医学の診断において、好発年齢は鑑別診断においてとても重要ですが、完全に無視します。ですから、中学や高校から症状が始まっていても、“気付かれなかった”ということにすれば自閉症やADHDに出来ると思っています。
つまり“気付かれなかった”とか“見逃されていた”とか“軽くて目立たなかった”と言えば、ありとあらゆること無視して診断がつけられると思っています。こういう姿勢で精神障害について深く学ぼうという気持ちもありませんから、どんどん精神障害の知識がなくなっていきます。精神障害について詳しく学べば、自分達が発達障害と思っていたことは精神障害の症状だったと気づくのが怖いのでしょう。私が今まで会ってきた人達はみんなそうでした。本当に勉強をしていない人達ばかりでした。
ちゃんと勉強していないから勘違いするのです。ちゃんと勉強していないから人の言うことややっていることが間違いだとわからずに間違ったことを真似してしまうのです。何より患者さんのことをちゃんと考えていないからこうなるのです。
患者さんを助けたい、患者さんの予後を少しでもよくしたいと思えば、もっと勉強して、診断についても学び、治療についても学ぶはずです。
しかし、こういう人達は、そういう努力をせずに、“気付かれなかった”とか“見逃されていた”とか“軽くて目立たなかった”という言い訳ばかりして、患者さんが正しい診断や治療を受けるチャンスを奪い、予後を悪くするようなことばかりしています。
家族が困っていて治してほしくて相談しているのに、生まれつきの特性だから治せないので受け入れるしかないとか言っています。叱るな、褒めろと幼い子に行う療育を指導してもなんの改善もありません。この言い訳をしていたら治療する努力すらしなくていいのです。治し方もわからないから、こういう言い訳をするしかありません。
あるいは、生まれつきの特性だと言いつつ、気分のむらがあるから双極性障害の薬、被害妄想があるから統合失調症の薬、こだわりが強いから抗うつ薬、不注意で落ち着きがなく忘れっぽくなったからADHDの薬、といった具合に対症療法のように薬をどんどん追加するという薬物療法のガイドラインや基本原則、薬理学を無視した行き当たりばったりの滅茶苦茶な薬の使いかたしかできません。
“気づかなかった”や“目立たなかった”はまるで魔法の言い訳です。そもそも医学知識のない心理士やカウンセラーの多くがこんな考え方になっています。自分達に医学知識がないことも、診断に必要な知識なんて全くないことも、そもそも診断のやり方やルールも知らない、医師でもないのに、“見逃されている障害に自分はきづける”といった根拠のない、妄想か宗教のような言い訳だけを頼りに、まるで自分達が医師より正確に診断ができるかのように嘘ばかり流しています。
やりかたを知らない、ルールを知らない、のでは決まりを守りようがありません。好き勝手なことが言えてしまいます。こんな人達に感化されてしまった法律家や先生、色々な業種の人達がみんな精神科医きどりで滅茶苦茶なことを言っています。
結局こういう人にできることは、知能検査をしてばらついていたら発達障害という、素人以下のとんでもないやり方だけです。こんな馬鹿な方法を医学知識や専門知識のない人達がやっていますが、こんなことをすれば精神障害の前駆期でも発症してからでも、統合失調症も双極性障害もうつ病でも全て発達障害にすることができます。ありとあらゆる精神疾患、あるいは脳外科や神経内科の病気であっても、てんかんや高次脳機能障害も、全て発達障害にすることができます。
だって彼らは脳の病気にみられる認知機能障害のことを発達障害が見逃されていたものと思い込んでいますから。
とにかく“自分達は見逃されていた生まれつきの障害に気付ける”という、根拠のない、矛盾した言い訳さえすれば、認知機能障害のことすら知らなくても、精神医学の知識が全くなくても、本当の自閉症やADHDの子供を見たことがなくても、全て許されると思っているのです。
ほんとうに今の精神科の世界では、交通ルールも知らない、免許も持たないような人達が、”自分達は人より運転が上手だ“と自信満々に、そこら中を暴走しているのと同じです。ルールを守っている人も歩行者もたくさんの人達が被害に遭って泣き寝入りしています。絶対に許せません。