みなさまこんばんはキラキラ

 

メディアとかネット、あるいは論文などでも、自閉症が統合失調症と誤診されていた、という話をみかけることがあります。普通に考えて本当だろうか?って思いませんか。特に身近に自閉症の子供がいる人の場合、疑問ではありませんか?なぜ幼児期からの重い障害の子供が親も先生も習い事の先生や部活の先生も、全く誰も自閉症だと思わないままに、小学校も中学が普通学級で、あるいは高校や大学なんかも卒業までしてしまっているのか。しかも大きくなってから精神科に受診しなければいけなくなって、入院や薬物療法までされていたのに、なぜそれが実は自閉症だったということになるのか?精神科の知識がたいしてない人であっても疑問を持って当然だと思います。

 

このような診断に導いている精神科医や心理士は、専門知識のない精神科医が見逃しているなどと言っていますが、それは違います。上に書いたように、自閉症(自閉スペクトラム症)は3歳くらいまでの幼児の時期に生じる重い障害です。その時に障害がないのであれば基本的に自閉症ではありません。

 

そういう珍しい症例であったというのなら、医学的に証明しなければそんなことは言えません。本当は統合失調症でなかったというのならば、統合失調症と矛盾している点を事細かに指摘しなければそんなことは言えません。統合失調症にみられる症状を自閉症と診断してはいけません。これは精神医学では当たり前の基本的なルールです。しかし、私が今までみた、このような症例の記載について、統合失調症にみられる症状ではないということ、幼児期に明らかに自閉症であった(特に診断基準を満たしているか)という根拠を示した例をみた記憶がありません。いくら名の知れた先生や役職のある先生、専門家であっても、本当はそのような症例をみたことはないのではないかとも思っています。

 

本当にそのような症例があるのなら、誰からも矛盾点を指摘されないような症例を出してくれればよいのですが...。どれを見ても、本人は自閉症の症状を書いているつもりなのかもしれませんが、統合失調症の症状として既に知られていることばかり述べています。医学雑誌にのっている症例や医師向けの講演に出されている症例でもそうです。臨床でみかける紹介状にしても、長々と統合失調症に特徴的な経過や症状を書き並べた後に診断が自閉スペクトラム症となっているような理解しかねるものばかりしか目にしません。別に専門的なことがどうこういうレベルではありません。よく看護師に見せてどう思うか聞きますが、みんなおかしいと理解してくれます。研修中の医師に対しても反面教師と説明するしかありません。その親や家族、先生、上司などもおかしいと思っていたことがよくあります。ただ、精神科医にそのような指摘がなかなかできないのです。

 

こういう人達について、専門知識が豊富だな、と思うことはありませんし、自分が見逃してしまっていた症状を見つけ出すすごい臨床能力があるなぁなどと思うことは全くありません。ただただ、専門知識どころか基礎知識がないとしか思いません。

 

このような人達に共通して足りない基礎知識は以下のようなことです。

 

まず、統合失調症は現在、世界の研究者は、自閉スペクトラム症、注意欠陥多動症、知的能力障害などと同じく神経発達障害と考えられています。これは海外の論文にも繰り返し書かれていることです。脳神経系が発達する上で徐々に障害が発生してきます。だから、統合失調症は幼児期から発達の軽い遅れがみられることもしばしばあります。子供の頃から認知の障害や社会性の問題がみられたりします。そして、思春期以降に人格や行動などが変化したりしながら発症していきます。こういった統合失調症の長期的な経過を理解していれば、子供の頃に言葉が少し遅れていたからとか、問題行動を起こしていたことを後から知ったからとしても、統合失調症ではなくて自閉症だったなどという診断にはなりません。

 

そして、統合失調症の中核的な症状は認知機能障害と考えられていることです。幻覚や妄想がないから統合失調症は誤診だったなどという人がいますが、幻覚や妄想が診断に必須ではありません。統合失調症は非均質的な疾患です。誰もが同じ症状や経過を呈するわけではありません。このことも海外の論文では必ずと言っていいほど書かれているような基礎事項です。幻覚や妄想が明らかでないが、徐々に認知機能が低下し、陰性症状が進んでいくこともあります。幻覚や妄想について聞き取れないが、明らかに思考が異常で会話もまとまらない場合もあります。すでに抗精神病薬が投与されていて、幻覚や妄想がみられなくなっていることもよくあります。DSM-5の診断基準においても幻覚や妄想は必須になっていません。統合失調症では多くの人に認知機能に問題が生じます。集中力や注意力、作業能力は低下しますし、場面を読む、相手の仕草を読み取る、相手の気持ちを想像する、といった社会的な認知能力も低下します。統合失調症に心の理論の障害が生じることはDSM-5にも記載されている基本的なことです。ことわざや比喩など抽象的な思考も低下します。統合失調症によく使われるPANSSにはこういったことに関する質問も含まれています。

 

こういう人達は、統合失調症の基本症状が陽性症状と陰性症状と認知機能障害であることを理解していないようです。私が今までみてきた人は皆そうでした。もし、自閉スペクトラム症を統合失調症と誤診していた症例が存在して、陰性症状や認知機能障害を理解しているのならば、きちんと、これはこういう根拠で統合失調症の陰性症状でも認知機能障害でもないと述べなければいけません。しかし、先に述べたように、医学的にそのような理由をきちんと述べたものをみた記憶にありません。ただ、きちんと専門知識のある人からすれば、これは陰性症状や認知機能障害のことを自閉スペクトラム症と誤解しているだけだとしか思えないものばかりで

 

ましてやネットで見られるようなそういう症例の話は、そのような陰性症状や認知機能障害ではないという記載をみかけることはありません。こういう例を取り上げて多くの精神科医がいい加減であるかのような批判する人もいますが、その人も認知機能障害のことについて知っているでしょうか?その例が統合失調症の認知機能障害がどうかもわからずに批判しているのではないでしょうか。

 

結局、臨床でみかける、自閉スペクトラム症が統合失調症と誤診されていたという症例は、子供の頃に言葉が少し遅めだったとか、友達とよくもめていたとか、友達が少なかったとか、小さい時に癇癪をおこしていたことを大袈裟に自閉症のこだわりと考えた、とか、統合失調症であればなんら問題ないようなことをひろいあげているものばかりです。

 

統合失調症としての治療を受けて幻覚、妄想などの陽性症状が改善した後も、認知機能障害や陰性症状が続くことがよくあります。病気になる前より能力が低下して、同じように学業や仕事に取り組むことが出来なくなる人のほうが多いのです。だからデイケアや作業所に通うことになるのです。この状態をみた人が、陽性症状もないのに統合失調症と診断されているのはおかしい、みたいなことを言うのです。自閉スペクトラム症が見逃されていたのではないかなどと言うのです。せっかく治療がうまくいっている症例であるのに本当に危険です。こんなことを鵜呑みにして薬物療法を中断してはいけません。しばらくは症状が再燃しないかもしれません。しかし、統合失調症は薬をやめて何ヶ月とかたってくると再発するケースが多いことは精神科での常識です。このようなケースが非常に増えていて問題です。

 

こういった陰性症状や認知機能障害が統合失調症の明らかな発症の前から生じてくることや、治療をした後にも継続してみられることをよく知らない人が、自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害(アスペルガー症候群も広汎性発達障害もDSM-5では削除され、今は基本的に論文でも使われなくなってきている診断です)、発達障害のグレーゾーン、発達障害の傾向、発達障害の特性がある、大人の発達障害、自閉傾向などと適当なレッテル貼をしています。

 

こういう人達はスペクトラムのことを誤解しています。心の理論などの社会認知の問題やこだわりがあればスペクトラムに入れてもいいと思っているかのようです。心の理論の障害も強迫症状も統合失調症によくみられる症状ですし、こちらの説明がなかなか理解できなかったり、会話が続かなかったりすることもよくあることです。人を避けて一人の世界にこもってしまうのも典型的な症状です。こういった統合失調症の基本的な症状を自閉スペクトラム症のスペクトラム上にのせてしまったら、統合失調症の患者さんはみんな自閉スペクトラム症になってしまいます。

 

自閉症の子供は、あるいは大きくなった人であっても、とてもピュアです。確かに周りを困らせる行動もしますが、統合失調症とは全く違います。関わり方や対応の仕方も全く違ってきます。自閉症とは全く関係のない問題を全て自閉症の人に押し付けられると困ります。どんどん自閉症に対する誤解だけが広がっていて、本当に恐ろしくなります。

 

自閉症の人が統合失調症を発症する場合も確かにあるのですが、頻度が高いわけでもありませんし、DSM-5にもその診断を下す場合のことが記載されています。あくまで自閉症と子供の時から診断されていた人に統合失調症の基準を満たすような症状が続くようになった場合です。これも、自閉スペクトラム症と統合失調症を同時に診断をつけるような人もいますが、これは明らかにおかしいことです。

 

このような日本の精神科の現状をもっと多くの人が知るべきだと思いますお願い

精神科にかかっている人に安易に発達障害じゃないかなどと言って、不幸にさせているかもしれませんので気をつけてください。

 

 

※私はそのような診断をされた当事者である患者さんを批判しているわけではありません。あくまでそのような診断をしている精神科医を問題だと考えています。