みなさまこんばんは。

 

 

医者という仕事は開業しない限りは、数年に1回くらい色々な理由で勤務先が変わることが多いです。

私もいくつかの勤務先で働いたことがあります。

そして色々な精神科医と一緒に仕事をしたことがあります。

大切なことを教えてくれたなぁという恩師の先生もいるし、不快な思いをさせられた先生もいます。

 

 

性格がとか、人間的にどうこういうのはどんな職種でもあることですが、

やはり医療ですので、目標は患者さんをよくすることですし、やることは医学的な根拠がないといけません。

その一番大切な部分に問題があると困ります。

 

 

精神科は特殊です。

一般診療科であれば、チーム医療で物事を進めないといけませんし、

この先生独自の理論ややり方でというのはなかなかなじみません。

侵襲的な手技や手術を行う科であればなおさら、世界一般で行われているやり方とか

日本全国で行われているやり方とかいわゆるコンセンサスの得られているやり方で行わないと

自分勝手な基準ややり方でやっていればうまくいかなかった時に責任取れません。

 

 

ところが精神科はほとんど主治医と患者さんの間の会話とかやりとりで多くのことが決まります。

もちろん看護師や心理士なども関わりますし、患者さんとのことで主治医と話し合ったりもします。

しかし、採血や画像検査のように具体的なデータで動いていくわけでもなく、主治医の主観的な判断で治療が進められやすいです。

外来なんて診察室での主治医と患者さんのやりとりだけで診断が決まったり処方が出されたりするわけです。

 

 

昔は精神科は客観性がなく、診断についても各国で独自の発展をしていたり、

その国の中でも流派があって考え方がかなり違っていました。

しかし、それでは研究するにも他の国の精神科医と基準があわず困ります。

そこでDSMやICDといった、国際的に基準となる診断基準が発展していったのです。

 

 

診断の基準があれば、治療の基準も必要になります。

精神科に限らず、治療のガイドラインというのが各国の色々な機関や学会から発表されています。

それぞれ少しづつ違いはあるのですが、大きな幹の部分は似たような流れになっています。

 

 

私はこういった診断基準やガイドラインというものは非常に大切だと思います。

ただでさえ主観的で曖昧になりやすい精神科の弱点を補ってくれると思います。

また、こういったものは多くの研究から得られたエビデンスをもとに作られていますので

これに従って治療を行えば、うまくいく確率が高いはずです。

 

 

私自身もこういった診断基準やガイドラインが身に付いていない時は

自分の力を過信していたなぁと反省することが多々あります。

まぁはっきり言って精神科医という仕事は自惚れやすいと思います。

謙虚になることはほんとうに大切だと思います。

私はきちんと診断基準やガイドラインを勉強して実践するようになってから安定した成果が得られるようになったと思います。

 

 

さて、この精神科医はまずいなと思うのは、もうほとんどが我流なんですね。

まず、診断の仕方が我流です。

その人独自の基準があるのです。

世界中の精神科医が言っていることと全然違うことを言います。

どこにそういう根拠があるの?と思うようなことを平気で言います。

 

 

例えば、この年齢で統合失調症はあり得ないとか、(統合失調症はどの年代にも起こりうるとされています)

気分の変動が早すぎるから躁鬱病でないとか、

色々なことを言います。

 

 

こういう精神科医はだいたい、こんな診断基準は表面的であっておかしいというようなことを言います。

確かに診断基準は完璧でありません。

特に精神科は疾患の概念が少しづつ変わっていくので、何年かたったらバージョンが変わったりします。

DSMも今は5です。

重箱の隅をつつけばこういう場合はどこにあてはまるんだ?みたいなのはあります。

 

 

しかし、みんなそんなことは承知の上で、共通認識を持って議論ができるように

そういう診断基準を作ってきたのです。

 

 

じゃあ、そうやって診断基準は無視して臨床をしている精神科医は診断が正確かというとそんなことはありません。

もう診断名からして我流であったり、聞いたこと内容な言葉であったり、

診断基準どころか、根本的なところで勘違いをしていたり、診断に必要な症状を見落としていたりします。

 

 

こういう精神科医はかなり直感的、感覚的に診断していたりします。

その時に受ける印象からひらめくんでしょうかね。

結構思い込みが強いと思います。

そしてこの人達の頭の中の基準と、

国際的に認められている診断基準があまりに違いがありすぎるので

診断基準に問題があるんだと言います。

 

 

しかし、冷静に謙虚に患者さんの立場にたって考えてみるとよいと思うのです。

自己流の診断に自信たっぷりの精神科医と

律儀に診断基準にそって診断している精神科医と

どちらに診てもらいたいですか?

 

 

治療方法も同じです。

うつ病の薬物療法

統合失調症の薬物療法

双極性障害の薬物療法

など、国毎に認可されている精神科の薬は少しづつ違いますが、

大まかには共通するので、各国のガイドラインも似たような感じになります。

 

 

うつ病の治療であれば、最初の薬を少量から始めて最大まで試す。

最大量で効果不十分であれば、別の薬に切り替える。

などの流れで治療するのが一般的です。

 

 

しかし、こういったことを無視している精神科医も多いのです。

薬物療法までも感覚的で自己流なのです。

抗うつ薬を少量で何種類も同時に処方するとか、

エビデンスのない処方の仕方をしたりします。

 

 

今は少なくなりましたが、昔は粉薬もよく使われていたので、

何種類も薬をちょっとづつ、名医の匙加減みたいな感じで出している精神科医もいました。

 

 

とにかくこういう我流のやり方でもうまくいく人もいるのかもしれませんが、

こういう我流のやり方でうまくいかなかった人を引き継いでみる精神科医は大変です。

何をやりたいのか解読できないのです。

なんでこの薬とこの薬が?

打ち消しあうのでは?

みたいなものばかりです。

種類を少なく整理しつつ、メインとなる薬を十分に増やして...

と長い期間が必要で本当に苦労します。

 

 

さて、自分が治療してもらうとしたらどちらを選ぶでしょう。

自己流の薬物療法に自信を持っている精神科医ですか?

色々なガイドラインを勉強して一番一般的な処方してくれる精神科医ですか?

 

 

我流の精神科医はあまり論文とか標準的なテキストとかもみてないですし、

世界の流れにアップデートもしてませんし、共通の言語で話せません。

気分をそこねないようにこちらは何も言わないでおくしかありません。

 

 

日本の精神科医療をみていると診断も治療もばらばらです。地域によってもまちまちです。

海外の精神科医の話など聞くともっと標準的な治療が行われているように見えるのですが...。

 

 

なんとかならないものでしょうか。