知能検査を受けろ、知能検査をしてもらえ、知能検査をしてください、知能検査を受けさせられた、知能検査を受けたら発達障害と言われた、毎日、毎日、知能検査の話です。

 

この異常さ、なんと表現したら良いのだろうと考えていましたが、ぴったりの言葉がありました。

 

ズバリ”都市伝説”ですね。

 

知能検査のWAISやWISCをすれば、生まれつきの特性がわかる、4つの数字が不揃いでデコボコしていれば、それは発達の偏りを示していて、発達障害である。

精神科医の多くは発達障害のことを理解していなくて専門知識がないから見逃しているので、知能検査を受けさせて発達障害を見つけてあげなければいけない。

 

心理士やカウンセラー達がこぞってこういうことを言い出した時のことを覚えています。

医学的根拠のない、まさに都市伝説です。

 

昔から精神科医は批判的、否定的に見られやすく、この都市伝説に飛びつく人がどんどん増えて、いつの間にか世間でも、精神科医=悪、心理士=善のような空気が醸成されていきました。

 

そして、統合失調症や双極性障害という診断をつける精神科医は悪、自閉症、ADHD、知的障害と診断してくれる精神科医は善、のような歪な状況が生まれ、この都市伝説は社会全体に広まっていきました。

 

都市伝説は矛盾を誤魔化すために医学を無視してどんどん膨張していきました。

 

自閉症のテストをすれば自閉症かどうかわかる、ADHDのテストをすればADHDかどうかわかる。

 

問題児、問題な社員、問題な家族、は発達障害かもしれないから知能検査と自閉症とADHDのテストを受けさせるべきである。

 

都市伝説はどんどん暴力的で過激になりました。

 

小さい時に正常で普通だったのは、自閉症やADHDが軽度であったから気付かなかった、見逃されていたからだ。

 

今ではこの都市伝説は日本社会の隅々まで広まり、行政や司法、教育、雇用、様々なシステムそのものを変化させてしまいました。

 

この都市伝説が日本社会全体を覆っていく様を見てきましたが、まさに集団ヒステリーです。

 

今の日本には、この都市伝説を否定するようなこと、つまり、医学的に正しいこと、エビデンスのあることを言う機会も場所もありません。

 

毎日のようにこの都市伝説に騙された人達がやってきます。

 

常識的に考えればおかしいことはわかるはずですが、この都市伝説に従わなければ、職場にいられなくなる、学校にいられなくなる、支援を受けられなくなる、おかしいと思うけど受けないと仕方がない、そんな人達が増え続けています。

 

たくさんの人が、この都市伝説を信じてしまった結果、大変なことになっています。

 

精神医学の世界での常識を説明しても、この都市伝説を信じている患者さんや家族にはなかなか通じません。

精神疾患の病態が悪化して本当に大変な目にあってやっと聞いてもらえます。

 

障害者を支援する人達にもこの都市伝説が広く浸透していますので、非常に苦労させられます。

せっかく正しい診断や治療をしていても、この都市伝説を信じている人達に邪魔されます。

障害者を助ける立場の人が間違った選択をさせるんです。

 

患者さんは数年おきにこの知能検査を受けさせられます。

そして、10とか20とか、受ける度に数値が低下していきます。

4つの数字も変化して低下していきます。

これはつまり、病気のせいで脳の機能が低下していってるんです。

 

この都市伝説を信じている人は、何も思わないんでしょうか?

知能検査は生まれつきの特性だったはずなのに、発達の偏りだったはずなのに、なんで毎回数値が下がっていってるの?とは思わないんでしょうか?

 

患者さんが、ある時は90が生まれつきの知能で、数年後に70が生まれつきの知能で、さらに数年後が56で生まれつきの知能で、あれ、生まれつきの知能はいくつ?と疑問が湧かないのでしょうか?

 

普通高校や大学を卒業したり、一般の仕事についていた人が、精神症状が出現してからやった知能検査が68とかになるんです。そうすると、生まれつきの知能が68の人でも高校や大学を卒業したり、一般の就職できるのか、って思うんですよ、この都市伝説を信じている人達は。

 

そして、この精神遅滞というレッテルを貼って本人に受け入れさせようとするんです。

 

信じられますか。

 

しかもそれが医師だったり色々な専門職をしている人達なんです。どうしようもないですね。

 

都市伝説は本当に怖いです。