朝日歌壇~朝日新聞(2017.10.30)

2017年10月30日(月)朝日新聞。
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選・佐佐木幸綱
読む耽けておれば小犬に嫉妬され今朝くちゃくちゃになる新聞紙」                  東京都 豊 万里
※ベッドで新聞を広げていると、「こたろう」が新聞の上に足を広げて「かきかき」を要求してくることがある。「小犬」ではないが・・。

前期末ムンクの叫び声あげる成績表に並ぶ数字に」 
                 横浜市 臼井 慶子
※「ムンクの叫び」をこういうふうに詠める感性がすごい!

選・高野公彦
原子の火讃へし県民の歌のあり手帳に載りて歌強ひられき」                     小美玉市 津嶋 修
※「アンダーコントロール」と言いのけた首相もいたが・・・。市歌、県歌、国歌・・・無批判、無条件に歌うことは疑問。内面を縛り、全体に従順な人間を生みはしないか。制定の背景や歴史も考えたい。「原子力の平和利用」は、「民生利用」と言うべき。「原子力規制委員会」は「原子力推進委員会」と言うべきではないか。
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選・永田和宏
「この選挙明らかになる憲法を守れる人とそうでない人」 
                       姫路市 綾部 佳子  
※はたして国民は、憲法改正に反対の票を入れたのだろうか。どこをどう変えるのか、各論の議論が必要では?私は「核廃絶」の観点から総選挙をみていた。残念ながら「核兵器禁止条約への批准」を訴えた政党は一つしかなかった。広島生まれでもない、広島育ちでもない元外相は、地元に入ることなく当選。だが禁止条約には反対の立場。

ICANは日本政府を非難せず『核廃絶のリーダーに』と乞う
近江八幡市 寺下 吉則  
※日本政府は、ノーベル平和賞を受賞したICANを評価しない。ICANの良さは「ゆるい結びつき」という。党派性が強くなり、政治的に過激なれば、人びとは疲れそっぽを向く。日本の原水爆禁止運動はICANに学ぶべきだ。『核廃絶のリーダー」どころか「核の傘」の下、せっせせっせと軍拡競争に走る。「買えよ」「はい、たくさん買います」そんなセールスをするビジネスマンに従っていいのだろうか。

あたらしいたわしはやはりなじまないひとみしりするたわしとわたし
新潟市 太田千鶴子
※ここまでくれば、言葉遊び。「あたらしい」=新しい。鹿児島弁で「あったらし(あたらし)」と言う言葉がある。「もったいない」と言う意味だ。古語辞典にも載っている。「あたら若い命を・・」という使い方もある。9人の若い命。自殺(自死)も「あたらし」。殺害はなおひどい。「ぐらし」は「可哀想」の意味。「ぐらしか・・・」家族や友人は涙が止まらないだろう。

あたらしや若き命を奪われし家族や友の無念いかにか
生きていれば、きっといいことがあるさ。

選・馬場あき子
三年ぶりの家は朽ちゆくと言うフクシマのかなしみ黙過する再稼働
帯広市 小矢みゆき
※家は人が住まなくなると、急速に朽ちていく。膨大な放射性廃棄物の処理方法を棚上げして再稼働する。どうも理解できない。

分断の元なる軍事境界線いつか無窮花咲ける野となれ
岡崎市 石川 休塵
※「無窮花」とは、ムクゲのことだろう。ムクゲは韓国の国花。軍事境界線は、朝鮮戦争後の休戦ライン北緯38度線のこと。「休戦中」で、再び戦争になれば、韓国軍は米軍(国連軍)の指揮下に入る。中国は北朝鮮との協定で、参戦することになる。戦争を防ぐことに力を注ぐべきだろう。「圧力」だけでなく「対話」の道を閉ざすべきではない。なぜ38度線か?実は日本の統治(植民地支配)と関係している。朝鮮半島の38度線から南は、大本営の管轄。指揮権は日本本土から。一方38度線以北は、関東軍の指揮下。関東軍は満州国を建国し、清国・最後の皇帝「溥儀」をトップに据えた。この行動は国際社会から非難を受け、満州事変は関東軍と陰謀と断定された。日本政府はこれに反発し、国際連盟を脱退。アジアの隣国、地政学的にも離脱はできない。無関心とはいかない。

銃さえも規制できずに苦しめる地上に唯一核使用国
水戸市 中原千絵子
※米国の銃社会は深刻だ。憲法に明記しているので銃規制はほぼ不可能。格差社会や貧困問題などもからみ、悲惨な事件が続く。背後に銃器製造企業の繁栄ぶり、ロビー活動などもある。「武器は、”生産”しない。命や資源を消費する」もの。武器産業、軍産体制の問題を問う必要があろう。