「やさしい高校古典文法」とはどのような本なのか② | 進学教室FiveSchools OFFICIAL BLOG

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「やさしい高校古典文法」

今回の新刊がどのような本なのか、どのような人におすすめなのか、できるだけ具体的に語っていきたいと思います。

前回の続きです。

 

前回述べたとおり、わたし自身が中高生時代にちゃんと古文を勉強していたわけではなく、後になって自分でまっさらに近い状態から勉強し直した経緯があるのです。

 

で、そこで勉強してみた結果、わたしがなぜ高校時代に古文が全然できなかったのかが理解できてきます。

 

そもそも中学国語の段階で、文法でつまづいていた

 

ことが自分が高校でまったく古文についていけなかった根本的な原因であったのだ、と。

 

そして、実地で多くの生徒に教えていく中でも、決してそれがわたし個人のn=1な問題ではなく、相当に幅広い層の生徒が同じ要因で古文につまづいているのだと実感していくことにもなります。

 

(関東での話になりますが、中学受験をクリアしてきた層は、小学校段階で文法をしっかり取り組んでいる生徒が多く、高1古文でつまづくことも少ないというのがわたしの経験上の印象です。公立中出身の生徒は、たとえ地域最上位の高校に進んでいたとしても中学国語文法が身についていないケースがかなり多いように見ています)

 

まず、高校古典文法で必要な「文法概念」にはどのようなものがあるでしょうか。

 

まず、高1の初期段階で学ぶ必須事項として、次の4点があげられます。

 

・品詞(動詞、形容詞、形容動詞など)

・活用形(未然形、連用形など)

・活用の種類(四段活用、上二段活用、サ変など)

・係り結び

 

高校古文のメインは「助動詞」と言われることが多いですし、実際に読解をスムーズに行うための決定打が「助動詞」であることは間違いないと思います。

 

ただ、そもそも「助動詞」を身につけるには、品詞と活用がきちんと「使いこなせる(≠暗記している)」状態になっていないとスムーズに進まないものなのですね。

助動詞に何が接続するのか(そもそも「接続」という概念がわかっていない生徒も多い)、助動詞じたいがどのように活用していくのかを理解しないと何にもなりませんから。

 

たとえば、わたしが「完璧になるまで、見た瞬間に識別できるようになるまで身体に叩き込め」と毎年言い続ける「ぬ」の識別。

これも「未然形とはどのような形なのか」「連用形とはどのような形なのか」が瞬時にイメージできるようになっていないと、とてもじゃないですけど実戦の大学入試で使えるレベルには仕上がらない。

 

そして「未然形とはどのような形なのか」「連用形とはどのような形なのか」を理解するためには、そもそも「活用」概念、「活用形」概念、「活用の種類」概念が理解できていないといけない。

全部つながっていくものなのです。

 

であれば、古文を勉強したいなら、根本的な「活用とは?」「活用形とは?」「活用の種類とは?」という概念、定義から本当は理解し直さないといけないはずです。

 

ただ、これらの根本的な概念は、高校では初出なのではなく、すでに中学の「現代国語文法」で既習なのです。

既習扱いなので、ゼロから丁寧に教えてくれる高校は少ない(そもそもカリキュラム的に余裕がない)。

 

だから、中学でそれら基本概念を理解しないまま卒業してしまった生徒が、軒並み高校古文でつまづく結果になっているのではないか、と。

 

基本概念がわかっていないから、ただ何も考えずに丸暗記するしか手がなくなり、何のためにその文法事項を学んでいるのかがわからない。

勉強する意味がわからないから、古文はつまらないものだというマイナスイメージがどんどん強くなってきて、やる気自体が減少していき、古文を「捨てた」状態のまま高校を卒業することになる。

 

これがわたしが指導していく中で立てた「古文ができない生徒」についての仮説であり、そしてその仮説は相当程度の割合の生徒に当てはまると今も確信している、ということです。

 

ここまで読んで気づいた方もいるかと思いますが、今まさに、小学英語と中学英語の間で起きている問題と本質的に同じだと思うんですね。

 

小学英語で多くの単語や文法が既習扱いになっていて、でも実際は全然身についていなくて、そのまま既習扱いとして中1英語が進められる結果中1当初から置いて行かれる生徒が続出している、というアレです。

中学国文法と高校古典文法の間に起こっている問題とまったく同じ構造です。

 

よって、この「中学国文法」と「高校古典文法」のギャップをスムーズに埋めることがわたしがやるべき仕事だと考えて普段の授業も取り組んでいますし、今回の「やさしい高校古典文法」も、前回の「古文漢文をひとつひとつわかりやすく」もその基本思想のもとで作りました。
 

(つづく)