中3 大問1(漢字)

特にコメントありませんが、「閑散」「拝借」あたりがやや難しめでしょうか。

 

中3 大問2(対話・資料)

今年の道コンは、明らかに大問2を意識的に簡単にしていることは間違いないと思います。

 

今回も非常に簡単で、この大問2にも間違えやすそうな要素がどこにも見当たらず、上位校受験者ではほとんどが満点か満点に近いレベルでクリアすることでしょう。

 

2020年度までは、かなり複雑な資料や問題条件を読み解かねばならないケースが多々あったのですが、まぁ明らかに2021年度の高校入試本番で、大問2がイージーだったからでしょう。

 

「入試後追い」なのは模試の性質上当たり前と言えば当たり前ではあるのですが、去年が簡単だったからと言って次の年が簡単だとは限らないというか、むしろ去年が簡単すぎたからこそ難易度が上げられてくる、とも考えられるわけで、毎回毎回の道コンをみんなこんなに簡単にしておいて、いざ本番になって難易度上がったら対応できるのか?? とわたしは不安に思ってしまうんですけどね……。

 

中3 大問3(小説)

出典:川端裕人「空よりも遠く、のびやかに」

 

読みとるべきポイント、心情の流れ

 

(リード文)

瞬……スピードクライミング

夏凪……先輩、クライミングのオリンピック代表レベル

剣持……クライミングのスーパースター、瞬と対戦

 

この時点で、高校入試に最もありがちな「試練」「人との出会い」「成長」という内容がメインだろうという感じがしますね。

まぁ、実際は「成長」というよりも「天才が天才ぶりを発揮する」のに近いストーリーでしたが。

 

(瞬と剣持の試合)

・最初は互角

・剣持のすごさの描写 →「巨大な波のよう」

・瞬と剣持の対比 →「おれは、風だ」

・瞬が力む → 精度が悪く、タイムロス

・一瞬、諦める気持ちになる

・気を取り直して、力をみなぎらせて加速する 

→「風じゃなくて、宇宙まで飛び出すロケットだ」

・負けたけれど、タイムは自己ベスト&競技レベル 

→ほっとする。ただし、剣持との差を痛感

 

風とかロケットの比喩がいまいち何が言いたいのかピンとこないのですが、これはわたしがクライミングをまったく知らないからでしょうね……。

 

ただ、これが問2の答えになるんですね。

「どのようにリカバリーしたのか」なので、

「自分のイメージを、風or対流の起爆から、宇宙へ飛び出すロケットへと変えた」

となります。

 

問1

「AにもかかわらずBを成し遂げた」という形なので、Bに瞬が達成したポジティブな内容が入ることは確定。

Aには、「Bの実現がふつうは難しいだろうネガティブな内容」が来るとわかります。

 

Aの模範解答は「四か月前からクライミングをはじめたばかり」ということでしょうが、「途中で足をぐらつかせてタイムロスした」という内容を入れた人も多いかもしれません。

ただ、「途中で足をぐらつかせてタイムロスした」という内容、傍線部1よりも後の部分、34行目のセリフで夏凪が改めてコメントしているんですよね。

 

となると、この傍線部1で書かれている内容とは異なると判断できますから、本来問1の解答に「途中で足をぐらつかせてタイムロスした」という内容を入れるのは適切でないと思います。

採点基準上は「別解」としてマルになっていますけど、本番だとどうかなぁ……

少なくとも満点はもらえないと思うのですが。

 

Bは「剣持といい勝負ができた」「競技レベルのタイムを出せた」「8秒台を出せた」という内容であればOK。

「自己ベスト更新」だと、おそらく点数もらえないが、減点されると思います。

たとえ20秒の選手が19.5秒のタイムを出しただけでも「自己ベスト」になってしまいますが、それは全然「誇っていいような素晴らしい内容」とは言えないですから。

あくまで「競技レベルのすごいタイムを出した」「トップ選手である剣持と互角に勝負できた」ことを書かなくてはならない。

 

(夏凪、周囲の選手の反応)

・周囲の選手が、敵対的な目つきに変わる

→「チートな選手」だと思われている

 

・夏凪は、瞬が全員の上に立つ才能があると思っている

・夏凪は、瞬を「守るべき相手」ではなく、「倒すべきライバル」として認めた

→問4の解答根拠

 

・瞬は、それを聞いて「熱い」気持ちになって身震いした

→問5の解答根拠

 

問4

ポイントは

 

A 「瞬のポテンシャル、才能のすごさを感じたこと」

B 「チームメイト(仲間)から、ライバルへと見方を変えた」

C 「本気になって瞬と勝負する」

 

という3点があれば満点になるはずです。

Aは、ただ「記録が早い」だけでは満点もらえないです。記録じたいはしょせん「競技レベル」でしかないので、現時点では夏凪の敵ではないからです。あくまで「今後伸びる可能性」に言及していないと◎とはいえない。

 

中3 大問4(評論)

出典:小林武彦「生物はなぜ死ぬのか」

 

文章は平易で、段落の冒頭に「このような」「次に」「加えて」「正直に言って」「補足」のような接続表現がだいたい置かれているので展開も読みやすく、理解しやすいレベルの文章だったように思います。

 

問1

正直、本文なんか一切読まなくても即答可能ですね……

 

問2

これも「17字」というジャストの字数設定があるため、内容理解が甘くても正解できてしまった生徒が多いでしょう。

 

問3

これは質問文をきちんと読んで、何を求められているのかをつかむのはそれなりに難しいと思うのですが……

惜しいのは「未来」という語を使え、という指示があるせいで、「7段落をコピペすればいいんだろ」、とあっさり生徒にバレてしまうことです。

 

本来であれば「子どもの個性の実現が、親にとって使命である理由」という設問条件から、「子どもの個性を実現することが、なぜ子供、あるいは社会にとって必要なのか?」という問いを導いて、そこから

 

「個性的なほうが、多様性が伸びる」

「多様性が伸びたほうが、生き残りやすい」

「多様性がないと生き残れないのは、未来がどんどん変化してしまうから」

 

という3点がポイントであると気づかせたい問題なんですよね。

 

ただ、「未来」という語句指定を入れてしまうことによって、上記のような思考をせずとも、「未来」という語句が書かれた7段落にすぐ目が行ってしまう。

となると、問2と同じく本文をあまり読めていない生徒でも正解を出せてしまう結果になるわけです。

 

もちろん、ヒントを出し、そのヒントを使うことで解けるようなレベルの問題もあっていいと思うんです。

ただ、これだけ全体的に平易な問題が多い中で、この問3ぐらいは難易度上げておいてもよかったんじゃないかなぁ……と。

良い問題だけに、この問題ぐらいは去年まででいう「裁量問題」的な扱いにしてもよかったようにわたしは感じます。

 

問5

採点基準「死を恐れる」はOKで、「死にたくないと思う」が✕という基準はどうかなぁ……。

いや、言いたいことはわからんでもないです。

「長生き願望」の理由を聞いているわけですから、「死にたくない」は「長生き」をただ言い換えただけで、理由説明になっていない、ということだと思います。

 

でも、「死にたくないと思う」は、通常の日本語解釈だと「死を恐れる」とほぼ同義だと思うんですよね。ちょっとこれで✕というのはやり過ぎではないか、と感じます。

「長生きしたいと思う」が✕なのはまぁ良いと思うのですが。

小説の問1で「途中で足をぐらつかせてタイムロスした」を◎にするぐらいなら、「死にたくないと思う」なんて完全に◎でしょう。

 

中3 大問5(古文)

大問2のイージーさもかなりですが、この古文もちょっと……。

前にもありましたが、「ほぼ注釈だらけ」の状態で、古文じたいほとんど読めない生徒でも注釈を読むだけでストーリーなんてほとんどわかってしまいます。

問4の「会話」を見ても、話の趣旨は丸わかりですからね。

 

これも、2021年の入試が古文かなり易化したから、それに引きずられているのだろうと思います。

2021年の過去問しかやっていない生徒は、絶対2020年の古文もやってみたほうがいいと思いますよ。

今年の道コンレベルで慣れ切って本当に養うべき実力を養成しきれなかった生徒は、まず間違いなく2020年の古文には太刀打ちできないと思いますので……。

 

全体を通して

2021年度の道コン国語、2020年度以前と比べて明らかに「変な採点基準」「変な模範解答」は減り、問題としてのクオリティは確実に上がっていると思うんです。そこは明確に評価すべき点だと思う。

 

ただ、反面あまりにも難易度設定がイージーに調整されすぎていて、この問題に取り組むことで、受験生の何の力が上がるのか? と思ってしまうようになりました。

 

鷹取先生もブログで言っていますが、国語の易化とは対照的に数学の難易度が不自然に上がり続け、結果として国語と数学(理科も含めていいかもしれません)の教科間バランスが「崩壊」と言っていいレベルで狂ってしまっているように感じます。

 

教科間バランスを適正なレベルに調整すること、そして「この試験を受けることで受験生の国語力を伸ばすんだ」という意志がこもった問題が出るような、そんな道コンになることをわたしとしては2022年度に期待したいな、と思っております。

 

受験生諸氏におかれましては何度も言うように

「この道コンレベルが入試本番に出るとは限らない」

「2021入試が易化している以上、2022入試で難化する可能性は高い」

と言うことを肝に銘じ、幅広い年度の過去問演習、あるいは私立過去問などにも取り組んで、より強固な国語力をつけるよう訓練を積むべきだと思います。