大問1(漢字)
1「脊椎」は理科の範囲とカブるので、出題としてどうでしょうね。
わざわざ国語で読みを問う必要はないような気もします。
問題としては、全体的に平易なレベルだと思います。
大問2(資料・対話)
前提となる状況が、「1件のクレームをうのみにして、ろくに調査もせず唯々諾々と過剰対応する話」にしか見えないのですが……
クレーム対応に現実の学校現場が苦しんでいる状況で、現状を批判的視点なく追認するような内容は、あまり適切なものとは思えないです。
問3が、何を求められているのか戸惑った生徒多いと思います。
模範解答は「動詞だけで表現」という内容で、これに近い内容を書けるのは上位層に限られそうですが、採点基準上はかなり幅広く正解だと認められているので、とりあえず意味の通る何かを書いておけば、それなりの点数にはなったのではないでしょうか。
国語は「条件に当てはまっているもので、日本語として正しい」ものを書けば基本的にみんなマルになる教科ですので、答えにくい問題であっても白紙提出はせずに「条件に合うもの」を何か書くようにしましょう。
(条件に合わないものをいくら書いても意味はありません)
この問題、わたしはとても良いと思っています。
何が良いかというと、模範解答「動詞だけで表現」「印象に残りやすい」という文言じたいは本文に一切書かれていないところです。
とにかくレベルの低い高校入試は「本文ツギハギ」が模範解答であることがほとんどで、この「とにかく本文にあるもの」をツギハギすればOKという意識が中学生に植え付けられることが、高校以降の国語学習の大きな妨げになるからです。
今述べたように「条件に合うものを、正しくわかりやすい日本語」で書くことが大事なのであって、本来「本文にある言葉(※)をそのままツギハギする」教科ではありません。
たまたま「条件に合う正しくわかりやすい日本語」が本文内にあるときに、本文内の言葉を使って書けばよい、というだけのことです。
(※)指導者によって「傍線の近くにあるもの、文章の最後にあるもの」などのバリエーションがあります。
大問3(小説)
出典:森浩美「荷物の順番」
「がんばる少年少女がメンターとの出会いで挫折を乗り越え成長」というお決まりパターンではなく、「母の老人介護施設入居」という大人なテーマなのが良いですね。
文章は読みやすく心情もストレートに描かれているので、大学入試というよりはやはり高校入試向きの内容です。
内容がちょっと大人向けで、文章が素直で読みやすいという題材はなかなか高校入試向けの素材としては重宝するんですよ……。問題作成者の視点で言えば……。
ただ、心情がすべて本文にストレートに書かれていて、かつ問題にもヒネリがなく素直なため、試験の難易度としてはかなり易しいレベルだと思います。
今年度の道コン国語はずっと「あまりにも難易度が低すぎる」という点で批判的にコメントをしてきましたが、今回もその予感がしますね……。
大問4(評論)
出典:内山節「怯えの時代」
「連帯」をテーマに、「人間との連帯」「自然との連帯」を対比させる。
次に、「自然との連帯」を「3つの関係」に分けて、第1(共存)、第2(互恵)、第3(対立)と整理していく。
まさに教科書どおりと言うべき評論の典型的な構成で、特に前半はかなり読みやすいレベルの文章だと思います。
後半は「『禍』としての自然とも連帯しなければならない」という主張をフックにして、最初の「人間との連帯」へ話を戻していきます。そうすることで、「『対立する敵』との連帯も、間関係では必要」という趣旨へとつながっていくわけです。
このように、前半でいったん本題から外れたように見せておいて、後半の本題への布石としてつなげていくのも典型的な文章構成のひとつですね。
問2は、「人間との連帯」の現状の問題点は何か? という質問ですから、今述べたとおり「『対立する敵』との連帯ができていない」という内容が答えのポイントになるのは明らかです。
ただ、傍線部が冒頭部分で、解答の決定打は本文25行目以降なので、解答箇所としてはわりと傍線部から離れています。
その点で、内容ある程度理解できていない生徒には解けないので、難問とは言えなくとも適切な良問だとわたしは思います。
問3
図式で文章内容を整理するのは面白いアプローチですが、いかんせん①は「3字で書き抜き」という条件がわかりやすすぎて、単に「3字で空欄に当てはまりそうなもの」を探すだけの視力検査になってしまったように思います。もったいないですね。
②はその点書き抜きでないだけ頭を使いますが、なにせテーマが<対立>なので、本文読まなくても答えがほぼわかってしまうのが……。
・素材文そのものが簡単すぎる
・問題としてのアプローチは面白くても、余計なヒントを垂れ流し過ぎて答えがバレバレになっている。
今年の道コン、だいたいどっちか(あるいは両方)なんですよね。
問4
問題提起の疑問文が傍線部で、答えがその後ろの2段落、というこれまた非常にストレートな問題で、最後の記述にもかかわらずかなり易しめだと思います。
問2は良い問題だと思うんですけど、あとはどれも難易度的に低く、小説に続いて評論も……となると、仮に古文が難しかったとしても全体の難易度の低さをカバーはできないでしょう。
第6回も、また従来どおり相当平均点高くなりそうな気がしますね。
大問5(古文)
出典:「浮世の有様」
この出典は知らなかったのですが、検索してみると「江戸時代の、大坂に住む医師の手記」らしいですね。どこから見つけてくるのか……。
難易度的にもまぁまぁ、内容もなかなか面白く、いい出典ですね。
全文訳は解答解説に載っていますので、読解時のポイントになりそうな箇所を列挙します。
・1行目「抜け参りせん」、3行目「抜け出ん」……古文の「動詞+ん」の形は、否定ではない。「~しよう、するだろう」と“will”のように訳す。
・1行目「やうやう」……枕草子「やうやう白くなりゆく」のように「だんだん」という意味もあるが、「ようやっと」という意味もある。今回は「ようやっと」の方が合う。
・2行目「なしぬる」……「~なす」は漢字で書くと「~為す」。英語でいうmakeのような意味。
・2行目「~ぬる」「~ぬれ」……どちらも完了の意味をもつ「ぬ」が変化したもの。完了なので「~した」と訳せばOK。
・3行目「手に付かで」……「~で」は否定をあらわす助詞。「手に付かないで」「手に付かずに」
・5行目「丁稚のなりし」……「の」は「が」で訳す場合が多い。「~し」は過去。「丁稚がなった」
・5行目「いへるにぞ」……「いへる」のように「eの音+る」の形は「~した、している」と訳す。「ぞ・なむ・こそ」は係り結びを作る係助詞で、訳さなくてOK。
このぐらいの内容は、当塾では当然のものとして教えていますので、新学期国語を伸ばしたいかたはぜひご入会検討のほどを(宣伝)。
問題を解くのには支障ありませんが、傍線部2から後ろが中学生レベルの知識だと意味取りにくいと思います。
・7行目「一統に参らしめ」
……「~しめ」が使役と呼ばれる助動詞で「~させる」という意味。よって、「けちだった主人が、家族や奉公人に伊勢参りをさせた」という意味に。
よって、次の「自身」は「息子」ではなく「けちな主人」本人ということ。
ここを「息子」だと捉えてしまって意味がわからなくなってしまった人が多そう。
来週は、韓国留学が決まった長谷川先生による、休職前ラストブログとなります。
お楽しみにどうぞ。
(番外編)社会 大問2 問5(2)について
くわしくは鷹取先生のブログに記載されているので、何が問題となっているのかはそちらをお読みください。
わたしの見解は以下のとおりです。
・地租改正を行ったことによる影響として、グラフ1からグラフ2への変化を読み取る問題。
・グラフ1では「ききん」が発生した後、税収が落ちている。
・グラフ2では、税収が安定したことがわかる。
・この差異を生む原因は、「コメの収穫量」を税算出のベースにする江戸幕府と、「地価」をベースにする明治政府の差異による。
・つまり、答えのポイントはあくまでも「税金の算出方法」にあるのであって、「決済手段」にはない。
極端な話、現金で払おうが、電子マネーで払おうが、小切手で払おうが、ダイヤモンドで払おうが、税金の金額そのものは変わらない。
また、いくら現金で払っていたとしても、税金の計算方法が「コメの収穫量」基準のままであれば税収は飢饉の有無で乱高下する。
・よって、「地価を基準にして」納税させた、あるいは「コメの収穫高を基準にした」納税計算をやめたことがわかる解答であれば、「現金」という文言がなくてもOKにすべき。
こんなところです。
まぁ、「地価を基準にして」と書くほうがよほど難易度高いと思いますが……。