所は、翁が行方不明になった地区とは
まったく かけ離れた遠い地域。
午後、畑で農作業をしていた男性が
杖をついて歩いている老人を見かける。
この辺では見かけない顔。
気にはなったが、
散歩でもしているのかとやり過ごした。
夕方、暗くなってきたので
帰宅準備をしていたら、昼に見た老人が
まだ畑の周囲でウロウロしている。
おかしい・・・
おじいさん、
こんなところで何しているの?
声を掛けてみた。
「道に迷ってのぉ」
やっぱり!
その後、
この男性の機転で事態は急展開する。
翁は自宅の電話番号を男性に伝えるも
気が動転していて間違い、いっこうにつながらない。
名前だけはナンとか言えたので
男性が警察に伝える。
と、現在進行形で
捜索隊が動いていることを知る。
その日の捜索が終わろうとする
まさに直前、地域に轟く
「保護されました!」
の放送に、200人が沸きあがった。
こういった地方での
地域単位のお知らせは、野良仕事に出ている
住民にも届くよう 外に設置されている
スピーカーから大音量で流される。
因みに
「保護されました」⇒ 生きて見つかった
「発見されました」⇒ 遺体で見つかった
という意味。
一報を聞き及んだ親族。
翁の息子の嫁が号泣し、その場に崩れた。
この嫁は、20年前に妻を亡くした翁の世話を
ずっと看てきた、いわゆる「他人」である。
ときには煙たい存在として翁に
辛く当たることもあったであろうが
まさかこんなカタチで突然いなくなるなんて
思いもよらなかったことだろう。
「後悔先に立たず」とはよく言ったもの。
ヒトは、準備のないまま、
突然起こる出来事に直面すると、
思考が停止してしまう。
このお嫁さんもきっと
そんな状態だったろう。
張りつめていた糸が切れたかのように
人目を憚(はばか)らず、泣きに泣いた。
つづく・・・